バジリスクと遭遇したあとは
幸いなことに大きなアクシデントは
起きなかった。
クロードさんをはじめ、
毒に冒された人たちも順調に回復してきている。
まだ無理はできない状態だけど……。
――そしてさっき流れた船内放送によると、
あと数十分でこの船は
サンドパークへ到着するとのことだった。
だから僕たちは船室で
荷物をまとめる作業をしている。
バジリスクと遭遇したあとは
幸いなことに大きなアクシデントは
起きなかった。
クロードさんをはじめ、
毒に冒された人たちも順調に回復してきている。
まだ無理はできない状態だけど……。
――そしてさっき流れた船内放送によると、
あと数十分でこの船は
サンドパークへ到着するとのことだった。
だから僕たちは船室で
荷物をまとめる作業をしている。
もうすぐサンドパークね。
本当はのんびりとした
船旅になるはずだったのにね。
そうだね、色々あったね。
サンドパークに着いたら、
まずはシンディさんを探そう。
ラジーさんの
お師匠さんでしたよねぇ?
えぇ、そうです。
どんな人なんでしょうね。
きっとお医者さんですよぉ!
そ……それは
そうでしょうけど……。
分からないわよ?
意外に酒浸りになって
医師を廃業してるかも
しれないわよ?
もしそうだったら嫌だな……。
別にいいじゃないですかぁ。
それが本人の選んだ人生なら
とやかく言えませんよぉ。
そうですけど……。
私たちは食事と寝床と
情報さえ得られれば
ぶっちゃけ関係ないですしぃ。
セ、セーラさん……。
冗談ですよぉっ!
ホントかなぁ……。
それから数十分が経ち、
船はサンドパークの港へ到着した。
降り立ってみると、
この町はポートゲートの
数倍の規模があるようだった。
王都ほどじゃないけど、
それに近いくらいの広さと活気がある。
まさに大都会だ。
砂漠のど真ん中にある町と聞いていたから
もっと寂れているのかと思っていたのに……。
はわぁ……。
活気があって驚いたかい?
マイルさん!
いつの間にか僕たちの後ろには
マイルさんが立っていた。
驚く僕たちを見てニヤニヤと笑っている。
ここには規模の大きな
オアシスがある。
だから人口が多くても
対応できるのさ。
そしてこの町の近くでは
特別な資源が採取できてね。
その関連産業に従事する連中が
集まっているのさ。
資源……ですか?
その通り。
そしてその連中を相手にする
商人がさらに集まっている。
僕はその資源や
町の住民を相手に商売をするために
こことポートゲートを
しょっちゅう往復しているわけさ。
確かにマイルさんの会社は
旅客よりも荷物を運ぶのが主体の会社だ。
でもここでは何が採れるのだろう?
周りは砂漠だから、
採れるものといっても限られてくるよね……。
資源とは何なんですか?
鉱石とか宝石ですか?
ハズレだ。
ここで採取されているのは
魔力液と呼ばれるものだ。
魔力液?
その名の通り、
液体化した魔法力が
この付近で湧き出ているんだよ。
魔法力が液体になるなんて
あり得るんですかっ!?
通常ならあり得ない。
魔法力は世界に満ちているが、
目には見えないものだ。
でも魔法を使ったり
意識を集中させている時に淡い光が
見えることがありますよね?
あれは厳密には魔法力ではない。
術者の体と魔法力が反応して
発光しているというのが真実だ。
そうなんですかぁ。
僕は魔法が使えないから、
魔法に関することにはあまり詳しくない。
ピンと来ることもない。
カレンやセーラさんは知っていたのかな?
僕も魔法が使えれば
もう少し理解できるんだろうけど……。
それに純粋な魔法力は
術者の体内にしか
溜めることができない。
ただ、魔力液だけは例外なんだ。
魔力液は何らかの力によって
魔法力が液体化したもの。
だから見えるし、
溜めておくことができるのさ。
魔法力そのものということは、
魔法力の回復のほか
魔法道具の作成などの用途にも
使えるわけですねぇ?
その通りだ。
ただし、採取できる地域は
魔界の中でも
サンドパーク周辺のみなんだよ。
それで商人がこの町にたくさん
集まっているわけですかぁ!
納得ですぅ!
セーラさんは大きく頷いていた。
つまり魔力液は商売になる品物だって
商人なら誰でも思うものなんだろうなぁ。
もしかしたら魔力液って薬にも応用できるかも。
例えば、高等魔法治療薬の代替品とか
強化版とかが作れそうだもんね。
時間があったら試してみたいな……。
この町には食料や生活必需品を
運んで販売している。
一方、ここから魔力液を運び出して
ほかの町で売る。
船を1回往復させるだけで
2回分の商売ができるわけさ。
それなら確かに無駄がないですね。
おかげさまで僕の会社は
儲けさせてもらっている。
では、僕は仕事に戻るよ。
何か困ったことがあったら、
遠慮なく頼ってくれ。
ありがとうございますっ!
僕たちが頭を下げると、
マイルさんはにこやかに手を振って
その場から立ち去った。
――さて、僕たちはシンディさんを
探さないといけないわけだけど。
これからどうしようか?
そうねぇ……。
聞き込みをしてみましょ~!
お医者さんならそんなに数は
いないはずですからぁ、
すぐに見つかるはずですぅ!
そうですね。
あるいは施療院さえ見つかれば、
そのうち有力な情報に
辿り着けるでしょうし。
こうして僕たちはメインストリートを進み、
そこに面している商店を中心に
聞き込みをしていくことにしたのだった。
次回へ続く!
いつもご覧いただきありがとうございますっ! 50幕ということは、勇者様はレベル1の半分まできたということなんですねっ♪ 次は100幕を目指して書いていきまっす~っ!!