んん……
この匂いは……?
起きてすぐに気付いたのは、
慣れない匂い。
それと……
圭……?
ん、おはよう快
友達――日浦圭の後ろ姿だった。
台所で美味しそうな香りを立てている。
僕がよく使っているエプロンもつけているようだ。
ごめんね、台所借りてるよ
いや、それは良いんだが……なにしてるんだ?
昨日の仕返し
そう言って器用にフライパンを使う圭。
どうやら朝ご飯を作ってくれている様子。
……。
すぐに気付けよ僕。
まだ寝ぼけているみたいだ
ちょっと顔を洗ってくる
ヘンテコな寝癖もついてるから直してくるといいよ
わかった
ちょっと行ってくる
圭になら見られても構わないが、
学校に行く前にしっかりしないとな……
俺としてはそのままでもいいけどね
洗面台に行く途中、
小声が聞こえたような聞こえないような。
なにかいったか?
なんにも
はやく行ってきな
あ、ああ
……気のせい、か。
……昨日のこと、
あんまり意識しない方がいいのかな……
火照った顔に冷水を叩きつけ目を覚まさせる。
…………!!!!
徐々に思い起こされる、昨日。
こう一日経って冷静に考えると、
僕の人生の中でもかなり珍しい、
相当なビッグイベントだったんだな……。
小学生の頃からの友達に……
男子の方が好きだとは知っていたけど……
年齢=恋人いない歴の僕が……
告白された……
…………凄いことだな!? これ!!
凄いことだ……
快、出来たよ
あっああ、ありがとう!
しばらくぼーっとしてしまっていたらしい。
圭の声は、冷水よりも強く僕の意識を覚醒させた。
いただきますっ
どうぞ
夜、ご飯を炊いていなかったからだろうか。
食パンと、スクランブルエッグ、ウインナー。
シンプルながら味付けは最高だった。
火加減もばっちり。
天才は料理が出来ない。
なんていうことはなかったらしい。
今日は委員会決めか……
圭はなにか、やりたいものとかあるか?
目玉焼きを箸で割りながら、
何気なく聞いてみた。
本当に何気なく聞いただけだったが、
今年も、
快と同じになれればそれでいい
そ、そうか
そこはかとなく、妙な空気が流れた。
僕が勝手に感じているだけか……。
そういえば、圭とはクラスだけじゃなくて、
委員会とかもずっと一緒だったな。
あのときから圭は、……、
その、ずっと僕を意識してくれていたんだろうか……
次の台詞が中々出てこないまま、
お皿の上がどんどん綺麗になっていった。
あのさ、圭
僕、図書委員会に入ろうと思ってるんだけど。
なんて言おうとしたとき、
多分この家に引っ越してきて初めて、
この時間にチャイムがなった。
誰だろう、こんな時間に。
一人しかいない
……?
なにやら検討がついている様子の圭。
今行きまーす
郵便物かなんかだとたかをくくり、
軽い玄関を開けると。
あ、あの……
おはようございますっ
………………。
んんん?
お、おはよう
どうやらもう一杯、冷水か圭の言葉が必要そうだ。