……

………………Zzz……

快は、本気で馬鹿だと想う。

さっきまで二時間掛けてチェスをして、
負けた俺が言うのはどうもおかしいけど、
快は馬鹿だ。

時間を忘れてチェスに打ち込んだ結果、
かなり遅い時間になった。
家はそう遠くないけど、
「もう帰るのが面倒臭い」と伝えると、
「そうか、なら泊まるか?」なんて、
二言返事で。

快……

風呂には先に入らせてもらったからわかるけど、
鍵が壊れていた。
不用心過ぎる。

今日は何にもないから卵かけご飯だ

圭、醤油をとってくれ

にしても春野さんは……一体なんだったんだろうな

一つ一つ。
圭の表情なら全て思い出せる。
瞼を閉じる必要なんてない。

くーかー……

ふふっ

ああ、本当に馬鹿だ、快は。

どうして今日、
自分に告白をした男の前で、
こうもすやすやと眠れるのか。
俺にはわからない。

快、起きてる?

ん~……起きてる起きゅてゅる……

爆睡。
経験則から、眠った快はしばらく起きない。

俺は快のベッドで寝させてもらっていて、
快は客人用の布団で寝てくれている。

だから、寝顔がよく見える。

眼鏡をはずしたその顔が。

はぁ……

いろいろな感情が綯い交ぜになって、
結局は怒りに落ち着こうとする。

どうして、
どうして快は、

もっとしっかり俺を
突き放してくれないんだろう

俺は……俺は今、無防備な快に、
なんでもできる。

なんでもできてしまうんだ。

腕を縛って抵抗出来なくして。

スベテを奪って、脅して、逃げられなくして。

俺は、全部出来るんだ。

だけど……

んんむ………………

出来るわけが、ない。

俺がするべきことは、
俺がしたいことは、
快を幸せにすること。

ずっと一緒にいること。
離れないで、
一番仲のいい友達であり続けること。

たったそれだけ。

なのに、今日、気持ちを伝えてしまった。

こうなると……わかっていたに。

春野は、快に惚れている。
俺とは名前を間違えただけだ。

やっとそういう人が現れたんだ。
快の魅力が分かる女子が現れたんだ。
俺が妨害する権利なんてなかったのに。


必死になって邪魔して……馬鹿みたいだったな。

快……

その寝顔に誓うよ

本当に好きな人とは、
一生繋がっていたい。

一緒になって、
いつか、
離ればなれになるくらいなら。

たとえ一つにはなれなくても、

ずっと、このままで。

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