クロウ

そうみたいですね・・・

うん、これで全員のはずだ

リーダさんは地面にへたり込んでしまっている

どうやら相当緊張していたらしい

荒い息使いが僕にまで聞こえてくる

リーダ

ッ!
そうだ、ナイフ!

思い出したかのように勢いよく立ち上がった彼女は当初の目的であるナイフを探す

確か山賊B・・・魔法を撃ってきた方が持っていたはず

僕はさんぞくBの方へと歩き出す

リーダ

あった!
よかったぁ・・・

僕より先に探し始めていたリーダさんがナイフを先に見つけた

良かった・・・どうやらこれで彼女のお願いは聞くことが出来たようだ

改めてほっとため息をつく

クロウ

どうやらナイフも無事みたいですね・・・

リーダ

はい!
本当に良かったです!

ぱぁ!

まるで効果音がそこに響いたかのように彼女はその整った顔からきれいな笑顔を爆発させる

一瞬だけその花のような笑顔に見とれる

っと、いけないいけない

うん、よかった

困っている女の子を見て放っておいたなんてラックさんが知ったら起こられちゃうし、何より僕も許せない

リーダ

あ、すみません舞い上がっちゃって
嬉しくて思わず・・・

思いっきりの笑顔だった彼女の顔が今度は少し羞恥の混じった顔に変わる

見ていて表情がころころ変わるなぁ・・・

とりあえず目標は達成したのは良いとして

クロウ

いえ、お役に立てたようでよかったです
後は・・・この人たちどうしましょうか

そう、この山賊たちをどうするかなのだ

このまま放っておけばまた悪事を繰り返すだろう

それはあまりよろしくない

リーダ

そうですね・・・
普段なら馬車とかに閉じ込めて兵の詰所に連れて行くんですが
縄とか縛るものも無いですし・・・

僕らはこの山賊たちの処遇について考えていると

おーい!
無事か!

少し遠くから大声でこちらの無事を確認する声が聞こえる

こんなところにいったい誰が・・・

振り返ってみると宿でリーダさんに最初にこの件を頼まれていた男性のようだ

ハァ、ハァ、ハァ
嬢ちゃんがこっちにいったって聞いてな
俺らが断ったから1人で言ったのかと思って心配で探しに来たんだよ

リーダさんのほうを見るとどうやらまだ少し警戒している様子だ

先ほど断られたからだろう

男性の方を少し睨んでいる

そ、そんな顔をするなって
俺たち”冒険者”からすれば報酬も無いのに軽く命を掛けられないんだ

申し訳なさげにこっちの方を見てくる

この男性の言っていることも真実なんだろう

ああ、そうだ

冒険者というのはギルドに所属している人たちのことを言う
Sランク冒険者、Aランク冒険者等々・・・
実力によって彼らはランクわけをされている

話を戻そう、彼の言っていることも実際本当なのだ

だってそうだよね

お金は払えないけど危険なところに言ってきて!

・・・誰も行くわけがない

僕は行ってしまったんだけどね

まぁ女の子が泣いていてそれを放っておくなんて出来ないでしょう

それに無事だったんだ、今回は結果オーライだろう

でも、こうしてちょっと放っておけなくなってな
・・・どうやら助けは必要なかったようだが

そういって彼は周囲を見渡す

そこには倒れ付している山賊3人

僕の手には剣

坊主、お前さんギルドに所属しているのか?
こいつら3人をお前さん1人で?

少し信じられないといった表情でこちらを見てくる

まぁべつに隠すこともないから言うだけ言っておこう

クロウ

いえ、2人は自分がやりましたけどそこの大きい人はリーダさん・・・彼女が魔法で援護してくれました

リーダ

そ、そんな!
私は最後しかやっていませんよ!

いや、あれがなければ実際危なかっただろう

正直助けられた

アリスト

す、すごいな
3人を相手取って2人で、それも子供が勝つなんて・・・

クロウ

えと、それなんですけど・・・

僕は彼にこの人たちをどうすればいいのかを聞いた

アリスト

ああ、それならあそこの宿から縄をもらってこよう
しばらくは起きそうもないしな
あの街道は定期的に兵が見回りに来る
そのときにでも引き渡そう

とりあえず何とかなりそうだ

これでここらは少し平和になるといいけど・・・

アリスト

とりあえず宿に帰ろう
もう日も暮れる

僕らはそれを聞いて空を見上げる

今日はいろいろあって正直疲れた

頼まれごとやら山賊退治やら・・・

明日からまた王都イチリンへ歩き始めないとなぁ

少しだけ気が重くなる

リーダ

あの・・・

クロウ

ん?なんですか?

不意にリーダさんに話しかけられる

リーダ

その、クロウさんもヤマト学院へ行くんですよね
行き先は一緒ですしよければご一緒しませんか?

少し顔を赤くして聞いてくる

こちらとしても一緒に行く人が増えるのは大歓迎だ

クロウ

ええ、いいですよ!
一緒に行きましょうか!

了承の旨を伝えると彼女はまた笑顔を咲かせる

思わずまた見とれてしまいそうになる

アリスト

おーおーいいねぇ
若いって言うのは
うらやましいわ

彼女の顔を見てボーっとしていると後ろから声が掛かる

リーダ

な!ななな!
そんなんじゃないです!

必死に弁解しようとするが彼女は顔を赤くして反論するばかりでまるで弁解できていない

彼への態度も少し軟化されている

アリスト

へいへい
どうせお前らヤマト学院の入学生だろ?
兵が来るまではこいつらを俺らが見ておくからお前らは明日出発するといい
ああ、そうだ坊主

男は僕に視線を向ける

アリスト

お前、ヤマト学院が一段落したらギルドに登録しに来い
まぁ授業の一環でギルドにはくるんだろうが
お前なら絶対に上を目指せる

真剣な顔でギルドに入れといわれた

いや、まぁラックさんにも言われた通りに入る予定だけど・・・

クロウ

ええ、そのつもりです

僕の返事を聞いた男はそうか・・・といって嬉しそうな顔をする

アリスト

よし!じゃあもう宿へ帰ろう!
こいつらは後で俺らで縛って宿に連れて行くから安心しろ!

上機嫌な彼に僕はそういわれて隣で状況が良く分かっていないリーダさんの背中を軽くたたき前へと押し出す

さて、帰ろう

正直疲れたし今日はゆっくり休もう

僕はそう思いながら宿への道を歩いていった

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