カリタス

わざわざ付いて来てもらってすまない
ああ、そこに掛けてくれ

そういわれて僕はふかふかのソファに座る

ここがどこだって?

ここは校長室・・・

何でここにいるのか?

・・・僕が聞きたいよ・・・

クロウ

えと、あの、その・・・

僕は何を言っていいのかが分からずにどもってしまう

彼・・・カリタス・ルッツマンはラックさんの知人ということは聞いてくれた

そして僕の受験に一役買ってくれたということも知っている

でも・・・それが・・・

校長だっただなんて誰が想像できるだろうか

いや、僕がちゃんと調べなかったのにも問題はあるのだろう

だが流石に校長先生だなんて予想外だ

カリタス

さて・・・コーヒーでも飲むかい?

クロウ

あ、ありがとうございます!

言葉の最後が跳ね上がってしまう

恥ずかしい・・・

カリタス

そんなに緊張する必要はない
今は2人だけなんだ
それに

コトン・・・

僕の目の前にコーヒーが置かれる

入れたて独特の良い香りだ・・・

カリタス

彼・・・ラックさんのことも聞いておきたいしね

彼の口からラックさんの名前がでて僕は

クロウ

ラックさんと知り合いなのは聞いていたんですけど・・・
あなた方2人はどういった関係なのですか?

2人の関係が気になって質問をする

基本的に鳥人は人前に姿を現さない

人間であれば生きているうちにみれたらラッキーだろう

カリタス

ああ・・・なに、私が過去に彼に助けてもらった経験があるというだけだよ

そういってカリタスさんは僕に昔のことを語ってくれた

カリタス

昔・・・といっても10年近く前なんだがね
私はまだここの学生だった
当時校長は父がやっていてね
私は授業の一環としてギルドの依頼をこなしていたんだ
簡単な依頼のはずだった
薬草・・・キリア草の採取だったんだよ

キリア草とは僕とラックさんの家の住んでいた森のあちこちに生えている薬草だ

確か効果は回復のはず

カリタス

森の入り口にも生えているのは知っていた
だからすぐ終わるだろうと思っていたんだよ
でも、そうはいかなかった・・・
飛竜種・・・はぐれワイバーンが出たんだよ

飛竜種といわれ僕は驚く

なぜなら飛竜種はここからずっと北のほうに行った火山・・・ラヴァル大火山に生息しているはずだ

カリタス

飛竜種の低位とはいえワイバーンなんかに勝てるはずもなく僕はボコボコにやられたよ
一撃をまともにもらっていたら死んでいただろうね

そういってカリタスさんはハハと笑う

いや、笑い事じゃないと思うんですけど・・・

カリタス

そんなときだ
ちょうど近くを通りかかったラックさんが私を助けてくれたんだ
・・・すごかったよ彼は
圧倒的な風属性魔法でワイバーンを何もさせずに倒してしまったんだから
僕は助けてもらったお礼がしたくって何をすればいいと問いかけた
そうしたら彼はなんていったと思う?

クロウ

・・・?
普通に何かを要求したんじゃないんですか?

カリタス

それがびっくりなことに何もいらないといわれたよ
だがそれでは僕の気がすまなかった
何とかお礼をしようとしつこく問いかけたら
彼はね

ラック

そうですねぇ・・・
なら、いつか私が困ったときに助けてください
それでかまいません

カリタス

ていったんだよ
だから僕は彼に僕の連絡先を教えていつでも彼のお願いを聞けるようにしていたんだ
それで、やっと僕のことを頼ってくれたんだ
君のことを受験させてやってほしいと

・・・改めてラックさんはすごい

純粋にそう思った

ワイバーンを簡単に倒すなんて・・・

まだまだラックさんに追いつくのは先のようだ・・・

カリタス

もちろん僕は受け入れた、だがそこまでだ
後は君の実力だ
まぁ相手をしたところまったく問題ないようだがな ハハ

クロウ

ありがとうございます

カリタス

さてと

ここからが重要な話だ、とカリタスさんは咳払いをする

カリタス

君の境遇は失礼ながら一応聞いている
それで、この学校に通う勇気はあるかい?
ここは魔法を学ぶ学校だ
無論皆属性を持っている
その中で君は一人属性を持たない
奇異の目で見られるだろう
心無い子からのいじめの可能性だってある
それでも、どれでも君はここに通うかい?

ああ、そうだ

僕は皆にあるべきものがない

だからそれによって”良くないこと”が恐らく起こるだろう

そんな僕を心配してくれているのがカリタスさんの目から見て取れる

クロウ

大丈夫です
僕はラックさんにいろいろと教えてもらいました
確かに過去にも属性がないことによって酷い目にあいました
でも、だからでこそ僕は世界を作りたい
僕は友達を作りたい
そして、属性がなくても戦えることを皆に示したいんです

ぶちまけた・・・はずだ

思っていることを全部言った

カリタスさんはしばらく僕の目をじっと見てフッと笑う

カリタス

さすが、あの人が育てただけはあるな
しっかりとまっすぐ物事を見ている
いいだろう・・・
君のこの学院の入学を許可する!

クロウ

え・・・でも、結果は後日って・・・

カリタス

ああ、それなら問題ない
実技試験はもちろん満点
まぁしっかりとした魔法ではないが、私との戦闘で使ったのは身体強化だろう?
速度が上がったときには驚いたよ
私のことを倒したんだから満点以外にはない
筆記のほうも

コンコン

ドアをノックする音が聞こえた

失礼します校長先生
例のクロウ・バーロット君の試験の採点が終わりました

クロウ

え、僕の?

女性はこちらを見て微笑むとカリタス先生に封筒を渡す

それを見てカリタスさんは再び笑う

カリタス

この通り、君は学力についてもまったく問題ないようだ

僕にその封筒の中身を見せる

〇がいっぱいついている

というか×がない

カリタス

さて、ようこそクロウ君
ヤマト学院へ!

カリタスさんはこちらを見てそう確かに言った

カリタス

といっても入学式はまだ少し先だ
入学した後はここの寮を使いなさい
それまでは家で過ごすといい

クロウ

は、はい!
よろしくお願いします!

こうして僕・・・
クロウ・バーロットはヤマト学院への入学が決定した

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