外はもう随分寒くなった。温暖化の影響など微塵も感じさせぬ位にだ。

 現在は午前5時、季節は冬。

 俺の名前はクソハナ。近所の大学へ通う学生だ。決して下品な名前だと思わないでほしい、これでも必死にたくましく生きているつもりだ。

 こんなに早く起きたのも久しぶりだから、とりあえず布団から出て、キッチンへ向かう。

 冷蔵庫の中にはパックの牛乳が2つ、昨夜の晩ご飯の残りがラップにかかっておいてある。

他にも野菜やら、卵やらが大量にあるが、俺は料理ができないのでこういう食材とは無縁の関係なのだ。
 

 食事を済ませて学校に行く準備をしている中、机の隅から奇妙な紙を発見する。

 それは昨日、学校帰りに地元の最寄り駅で配っていたのを偶然貰ったもので、読むのも面倒だから、自分の部屋の机にそのまま放置させたのだった。

 そして、それを再び手に取り、俺は少し読んでみることにした。
 
その紙には……。

 




《あなたは信じますか? 地底に住む怪物の伝説を……。やつはもうすぐ復活を遂げます。市民一同、力を合わせて地底怪物を倒しましょう! 教団Nへの入団はこちらまで***ー****ー****》




 それは、怪しげな宗教の勧誘チラシに見えた。

クソハナ

地底怪獣ねぇ……

 と、深く考えていると、すでに時刻は午前7時をまわっている。

 慌てて俺は家を出て、自転車に乗り、地元の最寄り駅へ走った。自転車に乗っているとき、何か不気味な視線を感じたが、正直周りを見渡している余裕がない。

 しばらくして駅に着き、ホームへ走った。定期券を持っているのでいつも通り改札口の駅員にそれを見せる。

 だが、駅員の様子が、今日は妙に変だった。

駅員

君はクソハナ君だね?

クソハナ

え!? どうして名前を……?

駅員

残念ながら、君をここから通す訳にはいかないんだ

クソハナ

え!?

 駅員はそう言うと俺の腕をがっしり掴んだ。そして、それを合図にしたかのように、周りにいる市民が俺にゆっくりと近づいてくる。

 まるでそれは一人の人間を取り囲む、ゾンビの群れの様。

クソハナ

や、やめてくれ、離してくれよ! だ、誰か助けて!

駅員

ええい! うるさいよ、叫ぶな

クソハナ

何なんだよお前らっ! 誰に頼まれてこんな……

駅員

お前が知る意味はない。これから死ぬのだから……

 【死ぬ】という言葉に俺は驚いた。どうやらこいつらは俺を殺す気らしい。

 そして心の中で叫んだ、俺が一体何をしたっていうんだ。

 その時だった。

 黒俺より少し背の低い少年が、駅員に殴りかかったのだ。

こっちだ! 走れ!

 俺は少年に言われるがまま全速力で走った。

 何度か市民に襲われそうになったがその都度、少年が助けてくれた。

クソハナ

あ、あんたは?

ミズハナ

僕はミズハナ! ミズって呼んでくれよ

クソハナ

俺は……

ミズハナ

クソハナくんでしょ?知ってるよ

クソハナ

ミズさん、これはどういうことですか?

 それからミズは少し間を置いていった。

ミズハナ

地底怪物が復活してしまったのさ

クソハナ

地底怪物!?

ミズハナ

正式名は地底獣・石鹸(セッケン)

クソハナ

地底獣・石鹸……

ミズハナ

やつは人間を操る能力を持っていてな、さきほどの駅員と市民もその能力で人形化していたのさ

クソハナ

でもミズさん! なんで僕らは操られないのでしょうか?

ミズハナ

それはね……
























ミズハナ

僕たちは、ダーティソルジャーだからさ!

to be continued……





















細川 雄太

いやぁー! 面白かったね!

妖精・白沢

夜更かししてテレビアニメかよ、ほんとグータラしてんなお前……

細川 雄太

だって今日土曜日だし!

妖精・白沢

そんなことより、さっきの娘の言葉。少し気になるな

細川 雄太

あー百合乃ちゃんね

妖精・白沢

雄太が取り憑かれてる……?

細川 雄太

彼女もしかして、妖精が見えるのか?

妖精・白沢

いやそれはない。妖精はパートナーにしか見えないからな

細川 雄太

じゃあいったい……





そして、物語は少し前に遡ることになる。




第五話『ダーティソルジャー』 終

第五話 『ダーティソルジャー』

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