5歳児

ありがとうお兄さん!

細川 雄太

おう! 次は気をつけなよ!

5歳児

はい!

5歳児

それにしても、すごく高く跳べるんですね

細川 雄太

えっ……。ま、まあね!



スポーツ選手、と言っても無理があるくらいの跳躍力を、俺は公衆の面前で披露してしまった。

すると、やはり何かのパフォーマンスだと思ったのか、周りが少しずつ騒がしくなってきた。

俺達はその場から逃げるように立ち去った。






妖精・白沢

どうだ? 気持ちよかったろ!?

細川 雄太

あれはどういうことだよ


二人は小走りながら会話を始める。




妖精・白沢

あれが俺たち妖精の能力……、『解放』だよ

細川 雄太

か、かいほう?




解放とはその言葉通り、解き放つことだ。

自分は何かに縛られていたのか、と少し考えてしまった。




妖精・白沢

俺達妖精はな、パートナーに選んだ人間の『潜在能力』を引き出すことができるんだよ

細川 雄太

せんざいのうりょく……、秘められた力、みたいなものか!?

妖精・白沢

簡単に言うとそうだな、さっきのはお前の『跳躍力』の潜在能力を引き出した

細川 雄太

俺ってやろうと思えば、あれだけ跳べるのか!?

妖精・白沢

いや、人間という者はどれだけ才能があろうとも、無意識に制限《リミッター》をかけてしまうものだ。そして、それは絶対に限界まで引き出されることはない

妖精・白沢

例えばプロのボクサーの『パンチ力』だが、人間それぞれ限界は違うが、大体50パーセントくらいしか引き出せてねぇ

細川 雄太

プロで50パー!? あんなにすごいのに……

妖精・白沢

ま、だからこそ人間は日々努力し、必死に足掻いているんだけどな

妖精・白沢

それなのに平気で『無理』とか『不可能』とか言う人間が俺は大嫌いでね!

細川 雄太

う、さっきはごめん……

妖精・白沢

分かればいいってことよ。さて、帰ろうぜ、久しぶりに旨い飯でも食わせてくれよ

細川 雄太

ああ、母さんの飯は旨いぞ!

会話を終えると、自宅に向けてペースを速めた。

同時に俺は、明日から始まる妖精との新しい生活に期待し、胸躍らせていた。

自分には一体どんな力が秘められているのだろう。

先ほどの跳躍力を友人の前で披露したら、一体どんな反応を見せるのだろう。

そんな妄想が止まらない……俺。




あ、あの!

細川 雄太

え、あ、はい!

胸躍らせていたのだが、突然同年代くらいの少女に呼び止められた。

正直、目茶苦茶可愛い。

でも駄目だ!

俺には木葉が!!

でも可愛い。






正直、木葉と張るレベルだぞこの笑顔は……、







あああ、







ああああああ俺には木葉がぁ!






あの、聞こえてます?

細川 雄太

え!? うん聞こえてる! 聞こえてますとも!

あ、よかった!

細川 雄太

それで、えーと、僕に何の用かな?

妖精・白沢

この人「僕」とか言っちゃってるよ

さっきのジャンプ見てました!

細川 雄太

え、そうなのー? いやいや、まあ大した事じゃないよ、フフ

妖精・白沢

すぐ調子に乗るタイプだったかこいつは。しかも臆病だし。ほんと良いとこないな……

河合 百合乃

私、名前は河合百合乃(かわいゆりの)と言います!

細川 雄太

僕は細川雄太、通りすがりのジャンパーさ

妖精・白沢

ジャンパーって何だよ! 衣服? ブルゾンですか?

河合 百合乃

ジャンパー? 不思議なご職業ですね……

細川 雄太

それほどでもないさ!

妖精・白沢

もうあかんな、この人

河合 百合乃

実は雄太さんにお伝えしたい事がありませして!

細川 雄太

何だい? 何でも言ってよ!

百合乃は風船の現場を見ていたみたいだ。

最初は俺にサインでも求めているのかと思ったが、どうも違うらしい。

とりあえず彼女を今後どう落として……じゃない、

どう仲良くなろうかで頭がいっぱいだった。


河合 百合乃

雄太さん……

細川 雄太

ん!? はい!





















河合 百合乃

あなた、取り憑かれていますよ?





















え?











細川 雄太

は、い……?

妖精・白沢

この女、やばい臭いがするぜ!







第四話『人間』 終

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