僕はラックさんに世界を知りたいと言った

あの気持ちに嘘はない

むしろ本心の純度100パーセントだ

その結果としてラックさんに鍛えてもらうことになった

魔法が使えるようになったと言ってもあれは攻撃系の魔法ではない

少しでも脅威からの生存率を上げるために僕はラックさんと共に特訓をつけてもらうことになった

ラック

ではクロウ、この木剣を持ってください
私からは攻撃をしませんので
どんどん打ち込んできてください

今は魔法が使えるようになった日の次の日だ

僕は目の前で構えもせずにただ木剣を持ち立ち尽くすラックさんを見る

ラックさんはこちらに向かってくる様子はない

どうやら本当に打ち込まれるのを待っているようだ

僕は剣を習っていた経験を活かし・・・まぁ仮にも貴族の子だった時があるんだ

剣くらい少しは習っていたよ、牢屋に入れられる前まではね・・・11歳までか

そんなことを思い出しながら上段の構えを取る

目の前に剣を持ってきてもう準備は出来た

クロウ

では・・・行きます!

掛け声と共に僕は一気にラックさんに踏み込む

やることは簡単だ

上段から一気に剣を振り下ろす

細かい技量を求められる技なんかをするより唯々ひたすらに打ち込む

だがラックさんは僕のそんな剣を呼んでいたのか

ラック

ふむ・・・

ヒラリヒラリと僕の木刀をよける

何回よけられたか分からなくなってきたころに僕は何とか最後の力を振り絞ってラックさんに木剣を振る

そして木刀と木刀が当たる瞬間にラックさんは斜めに木剣を構えた

ガン!

音が響くが唯それだけ・・・僕の木剣は見事にラックさんに流されてしまった

僕はそのことに対応できずに

クロウ

うわ!

言葉と共に倒れこんでしまった

ラックさんは僕の方へ寄り何かを考えているようだった

そして僕に

ラック

クロウ、あなたには剣よりも別の武器の方があっているかもしれません
そうですねぇ・・・なんというか、剣に振り回されている感じがします
それとあなた、まぁ仕方がないんですが体力面ですね
あれしかやっていないのに息切れしていてはとてもじゃないですがこれからやっていけませんよ

体力面の話を聞いて僕は少し落ち込む

それはそうだ、だって必要以外に牢屋から出れない生活をしていては体力なんて付かない

むしろ衰える一方だ

そして新しい武器の話に僕はさらに注目する

クロウ

と言っても僕、幼いころに習っていたこれしか知らないんです
これ以外に僕が使える武器なんて・・・

剣はこの世界で最も多く使われている武器のひとつだ

切れて、受けれて、そして使いやすい

これ以外の武器なんて考えたことがなかった

ラック

そうですねぇ・・・剣もいいですが弓なんてどうですか
距離をとってある程度安全に戦えますし
剣にしても私が教えられますし
どうでしょう、この際剣と弓のどちらも練習してみては?
あ、体力トレーニングもですね

どうやら僕は今後かなり鍛えられるらしい

ラックさんの表情がとてもいい笑顔に変わっている

そして僕は弓の使い方も教わるらしい

ちょっと・・・いやかなり背筋が冷たくなるのを感じながら僕は笑顔を隠し切れていないラックさんをみて苦笑いするしかなかった

場面は変わって今はもう夜

あの後僕は体力面の強化として木刀の素振りを徹底的にやらされ続けた

訓練を始めたのが昼過ぎ、以降晩御飯までずっとやっていたことになる

もう腕は最早動かすのすら面倒に感じる

ご飯も本来なら食べたくはなかったが

ラック

しっかりと食べてください
そうしないと体力はなかなか付きませんから

と先手を打たれてしまいがんばって食べた

うん、正直吐きそう

僕は胃の中のものを何とか外へと放出しないようにベッドまで向かう

クロウ

うう・・・
これがこれから毎日・・・
気が重いなぁ

僕はベッドに座り込みヤアタの鳥かごへと手を伸ばす

例のごとくコネクト・マジックは常時発動している

あの後分かったがこれは完全に最早無意識レベルで発動できるものらしい、楽ではあるが切れたときに戸惑ってしまいそうだ

話を戻してヤアタの鳥かごを開けると黒い鳥・・・まぁまだ雛と大して変わらないのだが

だいぶ毛が黒くなってきたヤアタが僕の手に乗ってくる

チョコチョコチョコ・・・と僕の方まで伝ってくると

クロウ!クロウ!

僕の頭の中に声が響いてくる

ヤアタの声だ、まだ幼さが残っており分かりやすい

クロウ

あははっ
ヤアタ!くすぐったいよう!

僕の頬へと体をこすり合わせてくる

毛が少しちくちくしている

僕はしばらくヤアタとじゃれあった後に明日へと備えて眠った

クロウ

明日からはもっと厳しくなるんだろうな・・・

と不安を持ちながら・・・

次の日の朝食になるとラックさんは僕に昨日と同じメニューと走りこみをやるようにいってきた

これからしばらく体力が付くまではこれを繰り返すという

朝から気が滅入るが自分が言い出したことだ、仕方がないなんて思わず

むしろやらせてもらっているんだと思い朝食を食べる

ラック

そういえば昨日の武器の話なのですが
クロウには短弓を覚えてもらいます
ある程度の射程があり軽いし持ち運びやすいですしね

・・・ラックさん、かなりやる気である

ラックさんはニコニコしながら弓の話しをしてくる

どうやら短弓を習うことになるようだ

僕に武器の知識はないからこういうのは任せた方がいいなと僕は決めた

そんなに威力が出ないのでは?とも思ったがそんなことはないらしい

弱点であれば魔物を一撃でしとめられるし、軽いので次の装填から発射までがかなり早い

まぁ本人の技量しだいだが

ラック

どうやら剣の方も筋は悪くないのでこれからちゃんと鍛えればかなり強くなれますよ

クロウ

本当ですか!?

と、そんな言葉についつい釣られ

僕はいつも以上に素振りと走り込みを頑張り、昨日以上の筋肉痛に襲われることになるのだった

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