ラック

では、クロウ
あなたの作った詠唱と魔法名を使って魔法を発動させてください

今僕はラックさんと家の外にいる

魔法の発動の方法はなんとなく分かる

魔力をしっかりと込め、それを形にして発動する

これだけだがこれがなかなか難しい

だけど、これまでずっと僕は魔法が使えなかった

言いたくはないけど僕はほかの人よりも魔法への執着が強いんだろう

ほかの人よりも恐らく魔法へのイメージ力は強いはず・・・と思いたい

クロウ

はい、分かりました

言葉と共に僕はラックさんの目の前に立つ

ある程度距離をとって僕はしっかりと地に足をつけて詠唱を始める

なんでだろうな、さっきまであんなに考えていたはずの詠唱と魔法名

あのおとぎ話を読んだ後だとすらすらと頭に言葉が並ぶ

僕はそれに対して何でか安心感を持っていた

少し呼吸を整えて詠唱を始める

クロウ

我、魔との対話をせんとするもの
我、言葉でなく心で魔と繋がらんとするもの
無色の魔力を持ってこれをなす

頭の中に浮かぶ言葉を言葉にしていく

後から聞いた話ではあるのだが僕の周りには優秀な人が多かったらしい

本来ならばファイアアロー叱りヒール叱りと詠唱がもっと長く必要らしい

妹のエリアは焼きつくせの一言で発動させていたが本来ならもっと長い詠唱が必要だと知ったのはもう少し後の話だ

僕は無属性だが魔力はほかより多くある

落ちこぼれではあったとしても無能ではないはずだ

僕にだってきっと出来ることはあるはずだ

クロウ

(きっと・・・きっと・・・!)

願いを込めて僕は魔力を体中に流す

一度自分の魔力を感じてしまうと長年自分が使ってきたかのような錯覚を起こす

それもそうだろう、なんせ今までずっと僕の体に眠っていたのだから

詠唱は完成した後は魔法の名前を唱えるだけだ

クロウ

友の言葉を我に届けよ
コネクト・スピリッツ!

思い浮かべるのは深い深い、心同士のつながり

僕は唱え終わるのと同時に願う

どうか・・・どうか・・・

すると僕の体にまとわれた魔力が少しずつ発光していく

僕はこれを発動している、と即座に判断した

そしてこの魔力を体に定着させる

時間にすれば2分もたっていないだろう
しかし今の僕には一時間、いやもっと長く感じる

体中に起こる魔力による発行が少しずつ収まる

周りの景色がまたしっかりと見え出したころに僕に視線を感じた

ラックさんだ

ラック

・・・

とても気が気ではないといった表情だ

本人は気づいていないだろうがまるで子供の帰りを待つ母親のよう

僕と視線が重なると一瞬表情が明るくなり、また心配そうな顔になる

体の発光が完全に収まったと同時に僕はラックさんへ駆け出す

クロウ

ラックさん!
出来た!僕出来たよ!

ラック

落ち着いてください、クロウ
まずはヤアタと話をしてみてください

必死に冷静を保とうとしているがラックさんは大分うれしそうに見える

僕は言われたとおりに家へと駆け込む

クロウ

ヤアタ!

実際問題僕も冷静さを失っていたんだろう

僕はヤアタの元へと向かう

おとぎ話を読んでからヤアタは少し眠そうにしていたのでラックさんに用意してもらった鳥かごに寝かせてあげていた

僕は鳥かごに走りたいのを我慢して、でもできるだけ足早で向かう

鳥かごにいるヤアタはちょうど起きていた

僕はヤアタを手に乗せ話しかける

クロウ

ヤアタ、どう?
僕の声、聞こえる?

どうしたの?
聞こえるよ?

少し疑問系の声が頭に伝わってくる

まだ幼さの残る声、恐らくこれがヤアタの声だろう

僕の興奮はさらに増す

クロウ

うん・・・うん・・・!
僕も聞こえる!
魔法は成功したんだ!

ヤアタとの会話が成立して僕は魔法の成功を完全に確信する

やった、ついに僕はやったんだ

はじめは魔法陣による魔法の発動

そして次は・・・

クロウ

僕は、僕はとうとう・・・
自分の魔法を手に入れたんだ!

どうやら僕は無意識のうちに叫んでしまっていたらしい

パチパチ・・・

手をたたく音が聞こえる

振り返るとそこにはラックさんがいた

ラック

おめでとう、クロウ
良かったです・・・本当に
私の魔法の研究は成功し、あなたは魔法を手に入れた
どちらにとっても大成功です

クロウ

ラックさん・・・本当にありがとうございます!

全部ラックさんのおかげです!

うれしさのあまりにラックさんに抱きつく

ラックさんは僕の背中にしっかりと手を回し、僕を抱きしめてくれた

少しだけ毛がちくっとするが僕はラックさんが抱きしめ返してくれることにさらに喜んだ

クロウ

あの・・・あの魔法、コネクト・スピリッツって名づけましたけど大丈夫ですか?
僕、何かに名前をつけたことなんてなくて

しばらく抱き合った後に僕はラックさんに尋ねる

あくまでもこの魔法を作ったのはラックさんだ

この名前がいやだと言うならまた変えなければならない

ラック

大丈夫ですよ
コネクト・スピリッツ・・・魂からのつながりですか
フフッ・・・とてもいい名です

どうやらラックさんも気に入ってくれたようだ

僕はコネクト・スピリッツと言う魔法を手に入れた

この魔法は魔者などとの会話を可能とする魔法
一度発動してしまえばもう改めて発動する必要はない
・・・なぜかって?

それは僕の魔力量が多いからだ、この魔法は体に魔力をまとう形で発動する魔法だ
維持するのには魔力が必要だ、だが僕にはかなり魔力がある
これがこんなところで役に立つとは思わなかったが・・・
要するに、だ
僕は常時この魔法を発動していることになる、魔力切れの心配はない
この魔法による魔力消費を自然回復の速度が上回ったからだ
時間がたてば魔力は回復するが、魔法を使ってはじめて知ったが僕は魔力の自然回復も早いらしい

クロウ

はい!
改めてよろしくね!
ヤアタ!

僕は改めて相棒に声をかける

よろしくね!

僕にまた言葉が流れてくる

ヤアタの声だ

とうとう発動した僕の魔法

僕はもっといろんな魔物と話してみたいと思ってしまう

クロウ

ラックさん
僕もっといろんな魔物と話をしてみたいです
いろんな魔物と話して

僕は地下牢にいたころに胸に抱いた夢を思い出す

暗い中にいた僕が唯一抱いた夢

それは

クロウ

外を見たい!
世界中を見てみたいです!
ヤアタと一緒に!

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