「小さいおじさんの伝説」



インターネットの情報によれば、中年男性の小人(こびと)がいるというものであり、主に自宅や公園、道端で目撃するという。

身長は大体10センチ程度、出会った者に幸せを呼ぶと言われている。




細川 雄太

んー、妖精って何食べるんだ?

妖精・白沢

俺は何でも食うぞ。昨日はあんたの部屋のゴミ食べたし!

細川 雄太

うそだろ……

土曜日のスーパーには人で溢れている。

そんな中、誰もこのおっさんに目を向けないということは、本当に見えていないのだろう。

「人生に悲観した一部の者にしか見えない」、昨日おっさんが言ってた言葉だ。





俺はいつまで、このおっさんに付きまとわれるのだろうか・・・。




細川 雄太

とりあえずこれだけ買えばいいか

妖精・白沢

わーい! ヨーグルトだぁ☆

細川 雄太

へぇ-、好きなんだ?

妖精・白沢

いや、特に普通ですが

妖精・白沢

金藤ちゃんの好物だろ?

細川 雄太

こいつ……。てか今の木葉の真似か!?

妖精・白沢

ゆうたぁ♡

細川 雄太

ううぇえ



こうした他愛のない会話を繰り返しながら、俺たちはゆっくりスーパーを後にした。

帰りの途中で、うさぎの着ぐるみを纏ったアルバイターが子供に風船を配っている。

「俺もほしぃー」という声が聞こえた気がしたが、とりあえず無視している。




しばらく歩いていると、建物の看板に一つの風船が引っかかっていて、それを5歳くらいの子供が見上げている現場に遭遇した。

5歳児

……

細川 雄太

あちゃー、あれは無理そうだな

妖精・白沢

本当にそう思うか?

細川 雄太

どういう意味?

妖精・白沢

人間というものを何千年も見てきたがいつも思ってしまうよ、勿体ない生物だってな
すぐ自分の限界を判断しようとする

細川 雄太

いくら何でもあの高さは無理だろ

妖精・白沢

それが勿体ないって言ってんだ!

細川 雄太

え?

妖精・白沢

まあ見てな、「妖精の力」ってやつを見せてやるよ

細川 雄太

お、おう……


すると妖精(白沢)は俺の目の前で意味不明な呪文を唱え始めた。

途中途中に「枝豆」やら「トマトジュース」やら聞き覚えのある単語が出てきたが、深く考えないようにした。

てかお前羽あるから飛べるるんじゃ?

飛んで取ってやれよおっさん。



妖精・白沢

・@w、wx@]ピーマン」ck@c!!!!

細川 雄太

あのー、いつまで続くんすか?(今ピーマン入ったな)

妖精・白沢

ファイアー!!!!!!

細川 雄太

ファイアー言っちゃったよこのおっさん!

妖精・白沢

ふーー

細川 雄太

どう?

妖精・白沢

さあ、もうこれで大丈夫! 跳んでこい少年!

細川 雄太

あんた何言ってるんだ?

頭おかしいのではないだろうか?

このおっさんは俺に跳んで風船を取れと言っているのだ。

そして、先ほどまでのどうでもいい呪文のくだりはどうなったのだろうか。

俺にはこの生物の考えていることが理解できなかった。




妖精・白沢

大丈夫だ、お前に魔法の言葉をかけてやった。お前はきっと跳べるはずだ

細川 雄太

本当だろうな?

妖精・白沢

ああ、俺を信じろ

細川 雄太

信じたくないなぁ……

妖精・白沢

行け!

細川 雄太

ええい! どうにでもなれ!!





バッ!!







次の瞬間俺の目の前には、喫茶店の大きな看板があった。

横には風船が絡み、引っかかっている。

自分には理解しがたい光景だった。





俺……跳んでる!




いや、浮いてる!?



細川 雄太

えええええ!!!!!

5歳児

!?

妖精・白沢

それがお前の潜在能力……




「可能性だよ」




第三話『能力』 終

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