藤崎礼一郎の勤めるオフィスから、三駅ほどの大きな街。巨大な複合商業施設が乱立し、近くに安酒を提供する飲み屋や大学などもあるため、学生の姿が多い。
ゼミか、サークルの集団か。わいわい騒ぎながら飲み屋に消えていく大学生どもを横目で眺めつつ、人生楽しそうでいいなと指を咥えたくなる俺である。まあそんなことを言ったら、真面目に働いている社会人なぞに「お前なんて他人の不幸に寄生して生きてる小悪党だろ」と罵られてしまうに違いないが。
まさしく他人の不幸に寄生して生きている小悪党の俺は、待ち合わせのふりをして受け子の様子を窺っているのだった。信用できる同業者を仲介して雇った適当なちんぴらが、夕月さん指定の服装で石像の傍に突っ立っている――なんていったか、昔々たった十騎で敵の包囲を破って首級を挙げたとか、そんな感じの武将サマだ。全国的に有名な偉人というわけでもないのだが、なにしろ槍の先に(多分敵の首だろう)頭蓋骨突き刺したその姿はとにかく目立つので、待ち合わせスポットとしては愛されている――それから、五分。
駅前の時計が十九時半に差し掛かったとき、スーツ姿の男が受け子に声をかけた。