魔方陣から土煙が舞い上がる

何が何やらよくわからない

僕はラックさんに言われたとおりにやったはずだ

なのになぜ・・・僕が何かを失敗したのだろうか?

まずはラックさんを探さなくては

クロウ

ラ、ラックさん・・・
どこですかー?

声をあげてこちらの位置を伝えるとともにラックさんの位置を探る

目の前は激しい土煙によって何にも見えない

だが、そこまでラックさんは離れていなかったらしい

ラック

ク、クロウ!
無事でしたか・・・よかった
少しじっとしていてください
次第にこの煙は晴れるはずです

どうやらラックさんは無事なようだ

とりあえず言われたとおりにじっとしていよう

土煙が晴れるまでの間、ぼくは考えを巡らせる

何を失敗したのだろう?

確かに、ラックさんはわずかに魔力を流せといったはずだ

僕はそれに対して忠実に指示に従った

結果としてはどうだろうか?

このように現在に至る・・・というわけだ

うん、後でラックさんに聞いてみよう

次第に目の前の煙が薄くなり、ついには完全に消えた

ラック

大丈夫でしたか?
驚きましたよ、わずかな魔力だけで構わないといったはずなのにあんなに流すんですから
さすがに流しすぎですよ・・・
怪我がなくて本当に良かった、実験はまた別日にしましょう
魔方陣はいくらでもかけますから心配しないでください

そういってラックさんは僕の肩に手を置く

ラックさんはどうやら僕が無事なことに心から安心しているようだ

胸をなでおろしているラックさんに僕はうれしくなる

でも、魔力の込め過ぎはどういうことだろうか?

僕は少し、本当に少しだけだ

指先から少し滴る程度ぐらいの魔力しか流していないはず

クロウ

そんなに・・・魔力を込めていましたか?
僕、初めてでよくわからないんですけど
あの時は本当に指先から少しだけ魔力を落とすような感覚だったんです
そんなに大量に込めるようなことなんて・・・

それを聞いたラックさんはどうやら驚いているようだ

目を見開き、少し慌てているように見える

そして

ラック

す、少し待っていてください!

の言葉とともに一旦家に戻っていった

・・・何かおかしなことを言ったんだろうか?

しばらくするとラックさんは戻ってきた

何やら見慣れたものを一つ手に持っている

どうやら水晶のようだ

ラック

あなたにこれはあまりいい思い出はないでしょうが・・・
少しこれに手を当ててみてください!

クロウ

は、はい
わかりました

手を置き少し待つ

するといつもと同じように数字が浮かび上がる

どうやら結果が出たようだ
数値は300000

・・・あれ?増えている?

クロウ

あれ?
前は250000だったのに
なんでだろう?

その言葉にラックさんはさらに驚く

ラック

さ、300000ですか!?
あなた大人の、それも上位の魔法使い5人分は魔力がありますよ!
それだけあればこの結果も納得です
あなたにとってはわずかでも、ほかの人にとっては大体総量の半分近い量でしたからね

話を聞いている限り僕はどうやらすごいらしい

大人5人分、なるほど確かにそう考えるとわかりやすい

なんでだろう?

クロウ

な、なんででしょう?

ラック

それはまだわかりませんが・・・
今日はもう戻りましょう
ヤアタも家で待っているはずですよ
さ、帰りましょう

そういって家のほうへ向かうラックさんに僕はついていく

家の玄関を開けると

ピーーーーーー!!!

と僕に飛んでくる物体・・・ヤアタだ、どうやらきちんと留守番をできていたらしい

僕は小さいヤアタの体をなでる

まだきちんと黒い羽が生えておらず産毛が多い

まだどちらかっていうと灰色なヤアタを僕は手のひらにおいて

クロウ

ただいま!
ヤアタ!

おかえり!

え・・・?と声が聞こえた気がする

だれか僕以外に今しゃべっただろうか?

クロウ

いま、何か言いました?

ラック

いいえ、なにも

どうかしたんですか?

クロウ

なんか・・・声が聞こえた気がして

なんだろう・・・確かに今僕は誰かにおかえりと言われたはずだ

でも誰が言ったんだろう?

今ここにいるのは僕とラック先生・・・それにヤアタぐらいだ

てことは・・・

クロウ

ヤアタ・・・もしかして君かい?

ヤアタに問いかける

返事はない・・・返事はないのだがヤアタはこちらを向き

僕の頭へと乗り移った

ラック

・・・もしかして、魔法は成功していたのかもしれませんね

試しに、ヤアタに集中してみてください

さっきのこともあり疑うことなく僕はそれを実行する

すると、ヤアタはこっちのほうを見て

どうしたの・・・?

・・・!

いま、確かに聞こえた!

聞こえたっていうか感じた!

ヤアタがどう思っているのかがわかる!

クロウ

ラックさん!
わかります・・・僕・・・ヤアタの言葉がわかります!

ラック

どうやら実験は成功のようですね
本当に良かったです・・・
これで、あなたも魔法使いの仲間入りですね

ああ・・・

そういわれて僕は気づく

念願だった魔法、僕だけの魔法を手に入れた

落ちこぼれにはもう無理だと思っていた

僕はどんどん目から雫があふれてくるのを感じながら 

クロウ

よかった・・・
僕も・・・魔法を、つかえた!

気が付けば僕は泣きじゃくっていた

今まで僕は落ちこぼれとして育ってきた

魔法は使う側ではなくつかわれる側、ずっと使えればと思っていた

それが・・・それが・・・

ラック

・・・

ラックさんが僕を抱きしめてくれる

羽が少し顔にチクチクってなって痛い

でも、とってもあったかい

僕はそのままその日一日泣きじゃくり

気づいたら眠ってしまっていた

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