うぅ……なぜだか僕が緊張してきた……

入学式が始まったといっても、
僕ら入学生は特にすることはない。
なのに何故、
僕の心臓がこうも暴れ回っているかと言えば……

教員

入学生代表 日浦圭。
起立

ついにこの時が来たからだ。
式が始まる前に、先生と打ち合わせをしていた圭。
なんの問題もないとは思うけど……

……

隣に座っていた圭がすっと立ち上がった。
あれ、カンペみたいなものはないのか?
壇上でスピーチするわけでもないんだから読めばいいのに……!

暖かな、春の日差しの中、

…………
かたいけど……圭らしいか

なんていうのかな。
入学式での生徒代表挨拶って、
やたら力が入っているイメージがあったけど、
圭のスピーチは淡々としている。とっても。
これでいいのかな。

素敵なお声……

うん。ずっと聞いてたい……

たまらねぇぜ……!
ゾクゾクしやがる

……杞憂だったか

改めて圭のカリスマ性を思い知る。

そのまま特におかしなことも起きず、
スピーチそして入学式の幕が降りた。

時計を見ると10時半。予定通りだ。

快、何組?

体育館を出て教室に向かう途中、
圭に袖をクイと引っ張られ、聞かれた。

えーと……

式の終わりに配られたクラス分けの表を見ると、

僕は2組だよ、圭は?

2組だった

声音自体はさっきのスピーチと変わらない。
けど、
嬉しそうに笑顔を作った圭を見て、僕の頬も緩む。

よかったなっ
また同じクラスだ

うん。嬉しい

新しい環境で知り合いがいないのは、
圭も不安だったらしい。
僕も安心した。

教室は三階にあった。

日差しに満ちた教室はきらきら光っていて、
ただの部屋、とは言い切れない期待感が溢れる。

席は決まってるのかな

まだだと思う

なら空いてるところにでも座ろうか

うん

黒板を見てみても、
【入学生おめでとう!】
としか書いておらず、
座席表みたいなものは無かった。
教室内にはぱりっとした制服を身に纏った生徒が、
ちらほらと見える。
確か最初のホームルームは10時45分に始まるから、
あと5分くらいか。

快、早く隣に

今行く

いつの間にか、
一番後ろの窓際から一つ右の席に座っている圭。
僕もとりあえず圭の隣、窓際に座る。

スピーチ良かったよ、内容も話し方も

ありがとう。
快が褒めてくれると……

嬉しい

窓から校庭を見渡しながら話す。
部活どうする? とか、先生どんな人かな。
なんて会話をしていると、スライドドアが動いた。

教員

よーしみんな座れ-。
席についてだが今日は適当でいいぞー

スーツに身を包んだ教師らしき男は、
ニカリと笑って、全員が席につくのを待つ。
少しして落ち着いた教室へ、続けた。

教員

よし。では最初のHRを始めよう。
今日は簡単に自己紹介をしてもらう。
委員会決めとか面倒臭いのは明日からだ

自己紹介……!

今週中にはあると思っていたけど……今日か。
これで決まる。とは言わないまでも、大きく影響するだろう。

僕のこれからに……。

彼女が出来るかどうかに……!

……

心の中で小さくガッツポーズを作った僕を、
圭はジト目で見つめていた。

き、気にしない気にしない……!

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