誰かを好きになる。
それはとても素敵なことだと思うし、
他人にとやかく言われることじゃない。

僕、矢橋 快(やばし かい)の幼馴染みである 日浦 圭(ひうら けい)は同性愛者。

今年から晴れて高校生の仲間入りだ。
僕と彼の間には、きっと(たぶん)おそらく(僕の考えでは)恋愛感情は無くて、今まで通りの日々を送るはず。

今まで圭のお世話役に徹底した僕が昨日布団の中で生み出した野望……それは……!

今年こそ……彼女を……作るんだ……!

そう。
圭が女子から異常に(男子からもそこそこ)モテてしまうおかげで、常に近くにいる僕はまっっっったく彼女が出来ない。

だから決めたんだ……!
高校三年間で必ず彼女を作ると……!

眠い

夜遅くまでどんな彼女を作ろうか考えすぎた。
早く朝ご飯を作って学校に行かないと……。

まだ動きたくないと抵抗する身体に鞭を打ち、さっさと準備。

今日は入学式さえ終われば帰れるんだ。
頑張ろう。

行ってきます

誰もいない部屋に声を掛け、家を出る。
先週から始めた一人暮らしだけど、やっぱりまだ慣れない。
しばらくこうして声掛けちゃうんだろうなぁ。

おはよう

えっ、ああおはよう

部屋を出てすぐ。
ドアの近くに、圭は待っていた。
スマホも持たず、ずっとこちらを見ていたようだ。

いつから来てたんだ?

…………。

足音がまったく聞こえなかったんだけどな……

僕が今住んでいるアパートはそう新しくない。
家賃重視で決めたから当然と言えば当然だけど。
だから、二階にある僕の部屋に誰かが近づけば、
勝手に階段が警報代わりになってくれる。

それに気付かなかったということは、僕が起きる前にはもう……来ていた?

いや、圭を信じよう。
そうしよう。

制服、似合ってる

ん? ありがとう。圭も似合ってるよ。

……

……どうした?

そういうのは、困る

別に変な意味はないからな!
そのまま受け取れよっ!

心なしか嬉しそうに、
てくてくと歩き出した圭を追って、
僕も歩き始める。

僕の人生で初めて、高校への通学路を。

pagetop