クロウ

こっちです!

僕とラックさんは森の中を移動する

先ほどの鳥のところまで行くと

ラック

この鳥・・・ですか?

見つけた

さっきの鳥だ

真っ黒い羽にとても大きな体躯

まだ血の匂いがする

僕もこの鳥も襲われてからそこまで時間はたっていないのだろう

クロウ

はい・・・そうです
せめて埋めてあげたいんです

せめて・・・せめてこの子を地に返してあげないと

このまま野ざらしにしておかれてしまうなんてあんまりだ

僕にはこれぐらいしか出来ないけど、出来ることはしてあげたい

ラック

・・・

ラックさんはどうも何かを考えているようだ

どうかしたんだろうか

ラックさんに問いかける

クロウ

あの・・・どうかしたんですか?

考え込んでしまっていたのに気づかなかったのかラックさんはハッとしたように

ラック

ああ・・・いえ・・・何でもありません

ところでクロウ、あなたはこの鳥をご存知で?

この鳥の種類のことを聞いているんだろうか?

そういえば考えもしなかったな

でも僕にそんな知識はない

クロウ

いえ・・・わかんないです
でも、この鳥が空を羽ばたくのを見てみたかったですね
とてもかっこいいです

思ったことを伝えるしかない

それを聞いたラックさんはなぜかとても驚いた様子で

ラック

・・・!
そうですか・・・そうですね
うん、では子の子を埋めてあげましょう

とてもうれしそうだった

なぜだろう・・・?

きにはなるけど今はこの子を埋めてあげないと

僕はそこらの太い枝を使って地面に少し大きめの穴を掘り始める

これだけ大きな体なら少し大きく掘るらないとね

・・・そして・・・聞こえた

ピーーーーー!ピーーーーーー!

別のところから鳥の声が聞こえる

なんだろう?

気になってしまい僕は声のしたほう

木の上を見る

巣だ・・・巣がある
雛鳥の声だったのだろうか?

そんなことを考えてボーっと上を見ていると

パサ・・・パサ・・・

クロウ

え・・・わ!

飛んだ、雛鳥は巣から顔を出した瞬間に飛んだのだ

だが所詮は雛鳥

そんなに飛べるはずもなく、すぐに落ちてきた

とっさに僕は下にいたために受け止める形になってしまった

そして僕は気づく

クロウ

この子・・・この鳥の子供だ・・・!

雛鳥からはこの親鳥であろう鳥と同じようにうっすらとだが真っ黒な毛が生えていた

僕の手元に来ても雛鳥は声を止めることはない

親のほうをずっと見続けている

恐らくだがこの親鳥は巣を狙ってきていたウルフを庇うために戦い負けてしまったのだろう

これだけ大きければどうやって負けたのかと思うだろうが産後間もなく体力がなかったと考えてみれば納得はいく

ラック

この子を守るためにこの親鳥は戦ったのでしょうね・・・

ラックさんもどうやら近い考えのようだ

僕は雛鳥に声をかける

クロウ

君を・・・君を守るためにこの子は戦ったんだよ
立派なお母さんだね

お母さん・・・性別がどちらなのかは性格にはわからない

それを聞いた雛鳥は僕たちの声が通じたのだろうか

鳴かなくなって、いや・・・泣かなくなって

ラックさんが僕の肩をたたく

ラック

どうやら、課題は達成されたようです

見てください、この雛はあなたになついたのか安心していますよ

どうなんだろう・・・?

僕には鳥の表情なんてわからない
ラックさんにはわかるのだろうか

課題・・・それを言われて僕は思い出す

ラックさんには確か鳥を一匹捕まえて来いと言われていた

でも、こんな小さい
手のひらに収まってしまうような雛鳥でいいんだろうか?

クロウ

いいんですか?

ラック

もちろん、私はどんな鳥でもかまわないと言いましたし
第一それだけその子が安心しているのに引き剥がせませんよ
それに・・・

ラックさんは言葉を続ける

ラック

その子はもう、一人ぼっちなのですから

一人ぼっち・・・僕はそういわれて気づく

そうだ、この子はもう親がいない
と言うことはもうこの子は一人で生きていくか、死を待つしかないんだ

ある意味・・・僕とこの子は似ているのかもしれない

僕も家族がもういないようなものだ、ラックさんは別としても今日僕は家族に捨てられたんだ

僕はそこまで考えてから雛に問いかける

クロウ

僕と、一緒に来るかい?
僕の友達に、ならないかい?
一人は・・・さびしいよ

そんな風に言ううちに自分まで悲しくなってきてしまう

言葉が通じたのかはわからないでも、僕は通じたと思う
雛鳥は僕の方を見て

ピーーー!

と、元気よく鳴いてくれたのだから

ラック

ふむ、クロウ
そのこはこれからあなたと人生をともにするであろうパートナーです
名前をつけてあげてください
あなたの魔法にもかかわってきますしね

ラックさんは意味深なことを言いながら僕にこの子の名前をつけることを提案してくる

魔法にかかわると言うことは実験に関係してくるのだろうか

まさか、この子を実験に使って何かをするつもりじゃあ・・・

クロウ

あの、もしかしてこの子は実験で死んだりする・・・なんてことはないですよね?

ラック

先ほども申したとおりこの子はあなたの今後のパートナーです
実験に協力してもらうことにはなりますが
絶対にこの子は怪我をしないと誓えますよ

どうやら僕の杞憂だったらしい

ほっとして次の問題に向き合う

名前か・・・僕のネーミングセンスなんて信用していいんだろうか・・・

僕は・・・そうだ、ヤアタ・・・ヤアタなんてどうだろうか

ぱっと頭に思いついた名前だ・・・なぜこの名前が思いついたのかは正直わからない

でもこの子にはこの名前がいいなと思った
一度この名前が良いと考えてしまうとそれ以降に挙がってくる名前がどれもいまいちに感じてしまい

クロウ

ヤアタ・・・ヤアタなんてどうでしょう?

ラック

どうして、その名前に?

クロウ

わかりません・・・でもぱっと思い浮かんだんです

そしたら、これ以外の名前がどれもいまいちに感じてしまって

ラックさんはなるほど・・・とつぶやくと

ラック

クロウがそれでいいのでしたら私は反対しませんよ
これからその子と仲良くしてあげてくださいね
では、そろそろいい加減にこの子を埋めてあげましょう

クロウ

あ!待ってください

・・・ごめんね、えい!

僕は親鳥の体から二本ほどその真っ黒な羽を抜き取る

せめて、この子にこんな立派な親がいたという事実を形で残してあげないと
僕は羽を2二本、ポケットにそっとしまいこむ

クロウ

すみません、お待たせしました

ラック

大丈夫ですよ、この子の形見ですよね

大事にしてあげてください

クロウ

はい!

僕はこうして、生涯のパートナーヤアタと出会う

形見の羽はしっかり持った

見ていてねこの子のお母さん

僕はこの子を絶対に立派に育てる

だから、安心していてください

僕はこの子のお母さんを埋め終わるのと同時にそう決心を固めた

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