血の匂いのしたほうへ向けて歩いていて気づいたことがある

さっきまでなっていた動物たちの声が聞こえない
静か過ぎて風の音もちゃんと聞こえると言うのに

動物たちの声だけがが聞こえない

まるで違う森へ血迷いこんだかの様だ


僕はそんなことに多少の不信感を抱きつつも歩を進める

匂いのほうへ近づくにつれて段々僕の額と背中がしっとりとぬれていく

緊張しているのだろうか僕は?

ただ・・・なんとなく、なんとなくだけど行かないといけないような気がする

呼ばれているとかそんなものではないけど僕はそっちの方へ無性に行きたくなっていた

そして・・・・・見てしまった

鳥だ、鳥が地面に横たわっている

大きい、僕の身長ぐらいはあるだろうか?

どうやら匂いの元はこの鳥のようだ

真っ黒い羽を風が少し揺らしている

腹の辺りから血を流している辺り間違いないだろう

知識のない僕にはこの鳥の名前がわからない

助けられないだろうか?

そう考え僕は近づく

クロウ

だ、大丈夫?

言葉が通じないとわかっているのにもつい声をかけてしまう

とくに反応があるわけでもなく僕はさらに近づく

そして僕は後悔をしてしまった

ああ、だめだ  見てはいけなかった

・・・首がない

この鳥は首から上を何者かによって食いちぎられたのだろう

首のあったであろう位置からは腹部よりもさらにおびただしい量の血が流れている

僕は思わず後ずさってしまう

クロウ

う・・・ああ

見てしまった

音に寄せられたウルフがこちらの方へやってきていた

何で気づかれたのだろう?
いや、何でここに魔物がいるのだろう?

思考がちゃんと回らない

ともかく逃げなくては

幸いここからでもラックさんの家はわかる

僕は急いで駆け出す

ガーーー!!

走り出したと同時にウルフはこちらへ向けて走り出してきた

前のように弱っているわけでもないので動きがすばやい

僕はその声を聞いてさらに必死になって逃げる

野生と言うものはすごいものだ

僕のような人間が全力で走っても、こいつらには準備運動にもならないのだろう

当たり前のように追いつかれてしまう

もう少しで追いつかれるというところで僕は足を地面に生えていた木の根に引っ掛け転んでしまった

クロウ

痛たたた・・・
あ・・・ああ・・・

ここぞとばかりにウルフは詰め寄ってくる

やばい!

僕はどうにかできないかと思い辺りを探る

石だ、石があった

僕はそれをねっころがった体制で何とかウルフへと投げる

ギャン!

結果として石はウルフの鼻へと当たった

それはそうだろう、本当に目と鼻の先にいたのだから

狙いをつけずともあたると言うものだ

ウルフは一瞬飛びのいた

この間にまた何とかしなくては!

そう思った瞬間、ラックさんとの会話が思い出される

ラック

何かあったときにはそれを鳴らしてください

そうだ、鐘だ!

共鳴の鐘!

あった、もしかしたら何とかできるかもしれない

僕は懐にしまってある鐘を取り出す

クロウ

おねがい・・・!
助けて!

そういうとともに僕は鐘を鳴らした

チリンチリン・・・

確かに鐘はなった

だが、何かが起こるわけでもなく目の前には相変わらず豊かな自然とウルフが見える

何も変わらない

クロウ

え・・・え・・・?

僕はこのことに絶望をしてしまう

ラックさんは僕のことを助けてはくれないのだろうか

僕は先ほどまでのことを思い出す

初めて会う僕に対してとても優しくしてくれた

僕の話を何もいわずに聞いてくれた

僕とともに魔法の研究をしようといってくれた

初めて僕を必要としてくれた

・・・また裏切られたのだろうか

クロウ

ああ・・・やっぱり・・・

今回も僕は、本当は必要となんてされてなくて・・・

僕は今度こそ力が抜けてしまう

目の前に迫る死はもうそれこそ目前だ

対抗しなければと思っていても体が動かない

もういっそこのままウルフに食われてしまおうか

と、目の前のウルフを見る

ふとわかったことがある

どうやら先ほどの鳥はこのウルフにやられたのだろう

血が顔中にべっとりだ

さっきまで必死で逃げていたので気づかなかったらしい

まぁそんなことはどうでもいいのだが

とうとうウルフが僕の目の前

腕を伸ばせば届くんじゃないのかと言う距離までくる

ああ・・・僕はもうだめなようだ

せめて最後ぐらい人間らしく生きていきたかった

神様なんかはいないんだろうこの世界には
僕がすがれるものなんて何もなくて

ただただ非常な現実が待ち受けているだけらしい

ラック

吹き荒れろ!ウインドアロー!

声が聞こえてきた

目の前のウルフは突然の奇襲に対応なんて出来るわけもなく

ただ風の矢を受けて飛んでいく

ああ・・・僕は裏切られてなんかいなかったらしい

目の前には先ほどであってまだ間もない鳥人・・・ラックさんがいた

どうやら僕のことを助けに来てくれたらしい

僕はほっとする

ラック

大丈夫ですか!?
しっかりしてください!
申し訳ありません、私がこの辺りは大丈夫だろうと過信したばっかりに・・・!

必死にラックさんは謝りつつも僕のことを支えて立ち上がらせてくれようとする

謝ることはあっても謝られることは珍しいな・・・とつい僕は思ってしまった

クロウ

ラックさん・・ありがとうございました
僕、また見捨てられたんじゃないかと思って
それで・・・それで・・・

言葉をつむぐにつれてどんどん涙声になってしまう

最近の僕は泣いてばっかりだな、もっと強くならないと

ウルフはどうやら先ほどの奇襲で逃げたらしい

ラックさんは僕に対して

ラック

そんなことする訳ないじゃないですか
ただ・・・申し訳ありません
来るのが遅れてしまいました
この辺りで魔物が出る何て事はめったにないので油断してしまっていたようです
転移が使えればよかったのですが・・・私は風属性のため使えないのですよ
なので急いで駆けつけたしだいです

よくよく考えてみて納得できる点と納得できない点が出てきた

属性に関しては納得できる、光属性の転移はそもそもが高等な技術だしましてや属性が違うのに使えるわけがない

そして納得できない点、こんな森の中でこんなに早くここに駆けつけられると言うことはラックさんの足はどれだけ早いのだろうか?

疑問に思いついつい

クロウ

あの・・・こんなに早くどうやって駆けつけられたんですか?
ここはこんなに木が生えて視界が悪いのに

ラック

ああ、それは簡単ですよ
風属性なので空を飛ぶと言ったことが可能なのです

まぁ、普通には出来ませんが

・・・なるほど
風属性なのを活かしてここまで飛んできてくれたらしい

ここまでそんなに早く飛んでこれると言うことは相当な使い手なのだろう

ラック

さて、帰りましょうか
私たちの家に

クロウ

え・・・私たち?

思わず聞き返す

ラックさんの家に帰るのなら”私の家”でいいはずだ

ラック

何を言っているんですか
これからしばらくともに暮らすんですから私たちの家でしょう
もう私のことは家族と思っていいんですよ

うれしい・・・ただ単純にうれしい

僕はラックさんのことを家族と思っていいらしい

今日であったばかりの人間に対しここまでしてくれて
僕はどう返事すればいいのかわからなくなり

クロウ

あ・・・ありがとう・・・ございます

恥ずかしがりながらもこういった

ラック

でわ、帰りましょう

もう日も暮れてしまいますしね

そんなラックさんに僕は

クロウ

あ・・・待ってください

さっき、大きな鳥があのウルフに食べられちゃったらしくて

せめて埋めてあげたいんです
いいですか?

お願いをした

せめて埋めてあげるぐらいはしてあげたい

野ざらしになるのはとりもいやだろう

僕はそんな思いだった

ラック

ふむ・・・そうですね、確かにかわいそうです

案内してください、一緒に埋めてあげましょう

クロウ

あ・・・ありがとうございます!

こっちです!

僕はラックさんとともに鳥を埋めてあげるためにまた森の奥へと足を進めるのだった

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