マイルさんが副社長を務めている
サラサラ陸運の船に
乗せてもらえることになった。
目の前には契約書を落札したマイルさんと
秘書のクロードさんが
代金を持ってやってきている。
マイルさんが副社長を務めている
サラサラ陸運の船に
乗せてもらえることになった。
目の前には契約書を落札したマイルさんと
秘書のクロードさんが
代金を持ってやってきている。
では、マイルさん。
これが契約書ですぅ。
うむ、確かに受け取った。
それとこれは私からの
プレゼントですぅ。
セーラさんは腰に差していたナイフを
マイルさんに手渡した。
――あのナイフは何なんだろう?
最初、マイルさんも
訝しげな顔をしていたけど、
少し眺めたあとで感嘆の声を上げる。
これはいい品物だね。
セーラさんが作ったものかい?
『祓いのナイフ』といいますぅ。
解毒の魔法玉が付いているので、
サソリやヘビの毒に冒された時に
役に立つと思いますぅ。
ほぅ、それは助かる。
ありがたく受け取っておこう。
いえいえ、落札していただいた
御礼ですよぉ。
では代金を支払おう。
――クロード!
はい。
クロードさんはマイルさんの合図を受け、
手に持っていた鞄を開けて
中を僕たちの方に見せた。
そこには金貨がぎっしりと詰まっている。
ぼ、僕、こんな大金を見るの
初めてだよ……。
(ゴクリ)
トーヤくん、カレンちゃん。
相談があるんですけどぉ?
っ? 何ですか?
これだけの大金を持って
旅をするのは
大変だと思うのですぅ。
確かに重いですし、
強奪をしようとするやつに
襲われるかもしれないですしね。
宝石にでも交換しておきますか?
その方がいいなら、
同額分の宝石を用意するが?
あるいは換金証書を発行するかい?
それがあれば各ギルドで
現金に引き替えが出来る。
多少の手数料は取られるけどね。
いえ、そういうことでは
ないのですぅ。
とりあえず1万ルバーあれば
持ち金と合わせてしばらくは
旅が出来ると思うのですぅ。
そうですね。
だから残りの24万ルバーは
寄付をしたいと思うのですぅ。
寄付ですか?
プレプレ村の皆さんは
汚染された井戸水のせいで
大変な暮らしをしているのですぅ。
その人たちに寄付したいのですぅ。
あっ! なるほどっ!
もしかしてセーラさん、
最初からそのつもりで……。
まさかぁ。
今、思いついたんですよぉ。
セーラさんはニコニコと笑っていた。
――彼女はとぼけているけど、
きっと今の言葉は嘘だ。
プレプレ村の人たちに寄付をするために、
あんな法外な値を付けて
マイルさんと交渉したんだ。
そこまで考えていたなんて、すごいや……。
セーラさん、僕は大賛成ですっ!
私もっ!
ふふっ、2人ならそう言ってくれると
信じていましたぁ。
マイルさん、
今の話の通りなので、
24万ルバーはプレプレ村へ
寄付していただけますか?
ふむ、井戸水を飲んだ者が
謎の病にかかっているらしいな。
死者も出ているという……。
ご存じだったんですか?
商人だからね、
各地の色々な話が耳に入ってくる。
情報は商売における
重要な武器なのですぅ。
そうなんですかぁ。
分かった、
キミたちの希望通りにしよう。
クロード、頼んだぞ。
かしこまりました。
そのように手配をしておきます。
それにしても、僕はますます
セーラさんを気に入ったよ。
そして寄付の話に即座に同意した
トーヤくんとカレンさんもね。
そんな……。
なんか面と向かってそういうことを言われると、
すごく照れくさい。
でも悪い気はしないなっ♪
では、出航時間に船でまた会おう。
くれぐれも遅れないでくれよ?
マイルさんも
船にお乗りになるんですか?
もちろんさ。
サンドパークで大きな取引をする
予定があるからね。
マイルさんは僕たちに向かってウインクをすると、
クロードさんと一緒にギルドを出ていった。
――すごく気持ちのいい人だなぁ。
こんなことを言ったら失礼だけど、
商人さんってもっとケチでずる賢くて
おカネに汚いのかと思ってた。
さてさてぇ、
出航時間まで何をしましょうかぁ?
あと1時間くらいですね。
私っ、市場を見て回りたいです!
この町に来てから
ゆっくり見て回る余裕が
なかったですものねぇ。
うん、行こっか!
私はギルドでもう少し
商売をしたいですぅ。
市場には2人で行ってくださいぃ。
船で合流しましょ~♪
それでいいですよねっ、
カレンちゃん?
っ!?
問いかけられたカレンは、なぜか息を呑んだ。
そして頬を赤くしながら、
落ち着きなく視線を揺らしている。
……どうしたんだろう?
もしかしてトイレにでも行きたいのかな?
でもそんなことを聞いたら、
全力で平手打ちをされそうだ。
こういう時は黙っていてあげるのが
優しさだよね?
……はい、ありがとうございます。
セーラさん。
うふふふっ!
がんばってねぇ!
セーラさんはなぜかニヤニヤしながら
ギルドの奥へ歩いていった。
一方、カレンはますます頬が赤くなっている。
もしかして我慢の限界なのかな?
でもそれにしては、
嬉しそうにしている気もするんだよなぁ。
…………。
ん?
僕は誰かの視線を感じて辺りを見回した。
でもそれらしい気配はすでに消えている。
気のせい……だったのかな……?
どうしたの?
ううん、なんでもない。
じゃ、僕は上の酒場で待ってるね。
えっ? なんで?
だって……その……
用事があるんじゃない?
そんなのないわよっ!
さっさと市場へ行きましょっ♪
わっ!?
うふふっ!
カレンは僕の腕に抱きついて強引に引っ張った。
いつもより少しテンションが高めで、
すごくご機嫌な様子だ。
突然のことに僕は戸惑いつつも、
すぐに足を動かして
一緒に歩いていったのだった。
次回へ続く!
いつもご覧いただきありがとうございますっ! セーラさんは『師匠』と呼ばれたら、照れてしまうかもしれませんねっ♪ トーヤとカレンも彼女のことを頼りにしていると思いますっ!