クロウ

ラックさん

研究中の無属性の魔法っていったいどういったものなのですか?

聞いていなかった研究の内容

無属性の魔法なんて今まで聞いたことのなかった僕はラックさんに改めて問いかける

攻撃や回復系の魔法でないというのも気になる、防御系だろうか?

どんな魔法であっても僕はどうあっても覚えたい

ラック

そうですね、今すぐに教えてしまっても良いのですが・・・それでは少々面白みに欠けます

先に課題を出しましょうか

ラックさんはそう言ってウインクして笑う

鳥人のウインクというのもなかなか独特だ

そして課題とはいったい何なのだろうか?

さっそく何かをしろと言われるとはさすがに思わなかった僕は少し身構えて

クロウ

か・・・課題って?

ラック

いや、なに簡単なことですよ

一匹でいいから鳥を捕まえてきてください

どんな鳥でもいいですよ、小鳥、親鳥・・・本当に何でも構いません

クロウ

と・・・鳥ですか?

いやいやいや、鳥を捕まえてこいなんて突然言われても困る

僕は人間で、ラックさんは鳥人だ

身体能力も違うし向こうにはましてや魔法がある

それに加えてここは森の中だ

またあんな・・・あんなことになるかもしれないなんて

ラック

ああ、大丈夫ですよ

言い忘れていましたね、”この家の周囲で”鳥を一匹捕まえてきてください

大丈夫、安心してください
ここの家の周囲には魔物もあまり来ませんし、僕が木に付けてある鳥の巣箱もあります

おそらく大丈夫でしょう

何かあれば私が助けますし問題ありませんよ

その言葉に少し僕はほっとする

良かった、このあたりに魔物はいないらしい

それに巣箱もあるのなら大丈夫だろう

一つ一つ探せば問題ないはずだ

クロウ

そういうことでしたら・・・わかりました

一匹で構わないのですよね?
何とかして探してきます!

僕は行く決心を固めて家のドアを開けようとする

ラック

ああ、待ってください

これを先に渡しておきましょう

そういってラックさんはどこから取り出したのか一つのハンドベルを取り出す

一見何の変哲もないハンドベルに見えるがこれが一体何だというのだろうか?

ラック

それは”共鳴の鐘”それは二つで一つになっていましてね

あなたがそれを意図的にならせばこちらの鐘に音が届きそしてこちらの鐘が鳴る

簡単に言ってしまえば何か問題が起こった時にそれを鳴らしてくださいということです

ま、保険ですがね

そういって僕にもう一つの鐘を見せる

なるほど、これも僕の安全を確保してくれるためのものということか

僕はそれを礼を言って受け取る

さぁ今度こそ森へ

しっかりと今渡された鐘とナイフを持ち僕は外への扉を開く

ドアを開け放つとそこには、気を失う前に見た緑が生い茂る森が広がっていた

ここの家の周囲には魔物は来ることはないらしいがやはり少し怖い

僕は足が少し震えた

ラック

大丈夫ですよ、クロウ

森では確かに先ほどのような恐ろしいことも起こります

ですが、それとは逆に森だからでこそ味わえない素敵な出会いもあるのです

さぁ、まずは一歩目を踏み出してください

ポン・・・と肩に手を置かれる

あったかい、鳥人の手はその辺で飛んでいる鳥のようだと思っていたがそんなことはなく
人間の手に毛を大量に生やしたような感じだ

僕はその手に強い安心感を覚えた

そして

クロウ

はい!

行ってきます!

森へと歩き出すのだった

ラック

日が暮れるころには戻ってきてくださいねー

途中でも構いませんのでー!

晩御飯は一緒に食べましょー

そんなラックさんのセリフを後ろに受け、僕はフフッと笑いながら森の中へと入っていく

誰かが待っていてくれるというのはこんなにもうれしいものだったらしい

僕は顔が緩くなっているのを隠すことなく進んだ

森へ入ってから少しして僕はあたりを見渡した

一面緑・・・は言い過ぎかもしれないがそれに近い光景がずっと広がっている

耳をすませば風の音、空を飛ぶ鳥の声
ほかにもいろいろなものが聞こえてくる

迷わないのかって?大丈夫、家の方角はわかる
なぜならあの家の後ろにはとても大きな木が一本生えているからだ
ここからでもわかるくらいということは一体植えられてからどれほど立っているのだろうか?

どんな木かもわからないが僕は今はラックさんに言われた通り巣箱を探して歩いていく

しばらく歩いていくと一つの巣箱を見つけた

よし!あった!

僕はそっちのほうへ駆け出す

そして状況を理解して落胆する

・・・そうだ、僕は木登りをしたことがない

どうしようかと悩んでいるときに巣箱の中に一匹の鳥が入っていくのを見た
そしてすぐにたくさんの鳥の声がその中から聞こえた

どうやら巣箱の中には今入っていった鳥の子供たちがいるらしい

僕はとてもじゃないがこんな鳥たちから子供を引きはがすことは出来なかった

親に捨てられるというのとは違うがそれに近い絶望があるはずだ、親にも子供にも

僕は気が付けば足を別のほうへ向けとぼとぼと歩いて行っていた

改めて気づいたことがある

僕が今から行おうとしているのは中々ひどいことなのではないかと

一匹の鳥と分っていてもその鳥には家族がいる
親にしろ子供にしろだ

それを引きはがそうとしている僕は・・・と考えてしまうとどうしてもそこから先の森の探索ができなくなってしまっていた

これではラックさんの課題がクリアできない

頭では分かっていても実際動くかといわれると動かない

僕は仕方なく今日はあきらめようということにしてラックさんの家へと歩く方向を変えた

家への道の途中に僕は何か鉄臭い匂いを感じた

いや、これはおそらく血の匂いだろう
自分が何度か流したことがあるのでわかってしまう

何かあったのだろうか?
僕は気になってそっちのほうへついつい歩いて行ってしまった

グルルルル!!!

近くにいた魔物の鳴き声に
僕は気づかずに・・・

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