ラック

ふむ、なるほど

そういうことでしたか

申し訳ありません、つらいことを思い出させてしまったようですね

クロウ

いえ・・・

大丈夫です、正直誰かに言うことが出来てすっきりすることが出来ました

あの食事の後、僕はラックさんに今まであったことを話した

貴族の生まれであること

魔力はあったが属性はなかったこと、それが原因で家族から出来損ない、落ちこぼれと呼ばれたこと

妹の魔法の実験台にされたこと

・・・捨てられたこと

驚くほどにすらすらと言葉が出てきた

そしてそれを全てラックさんはしっかりと聞いていてくれた

誰かとこんなに長い時間はいつ振りだろう

ラック

なるほど確かに人間に属性がないのは珍しい

と言うより世界初でしょう

一通り話し終えた後のラックさんの言葉に僕は顔を下に向ける

・・・また追い出されるだろうか

そんな心配が頭の中をよぎる

ラック

ですがまぁ属性がないだけでそんなに気にすることはないでしょう

むしろあなたの魔力量のすごさに驚いていますよ

クロウ

え・・・?

思わぬ言葉に僕は下を向いていた顔を上げる

僕のことを拒絶しないでくれた?

受け入れてくれた?

そう考えると涙がまたあふれそうになる

ラック

おやおや、何か悪いことを言いましたか?

申し訳ありません、私が至らぬばかりに

僕が泣きそうになっているのがわかったのかラックさんは少しあわてて僕に謝ってくる

ちがう・・・そうじゃないんです

僕はただ・・・拒絶されずに受け入れてくれたことがうれしくて

クロウ

いえ・・・ただ・・・すごくうれしくって

僕のことを聞いても拒絶しないでくれて

本当にうれしくって

思いを伝える

ラックさんはそれを見て安堵したのかにっこりと笑い

ラック

それはよかった

しばらくここにいると良い

私も最近は研究が行き詰っておりましてね

誰かと話せるのがうれしいのですよ

そう、やさしく声をかけてくれた

どうやらしばらくはここで泊まって行けということだろう

クロウ

いいんですか?

ラック

ええ、もちろん

どちらにしても泊まれるところなんてこんな森の中ではありませんよ

クロウ

そんな・・・でも僕お金なんて持っていないですよ?

ラック

フフフ

お金なんて要りませんよ

そうですねえ・・・そんなに言うのでしたら私の魔法の研究に付き合っていただけませんか?

思わぬ提案

ラックさんの魔法の研究に手を貸す

僕としては恩返しも出来るし宿も確保できる

・・・それにラックさんもいる

これ以上の条件はないだろう

しかし、ラックさんの研究とはいったいなんだろうか?

クロウ

ラックさん、魔法の研究っていったい何の研究をしているんですか?

僕は聞いてみる

ラック

ん?私の研究ですか?

簡単なことですよ

無属性の魔法の研究です

無属性と聞いて僕は胸がドクン、とはねるのを感じた

そんな様子を察したのかラックさんは僕に対して問いかける

ラック

ああ・・・そうでした、あなたは無属性でしたね

・・・すみません

またしても謝られてしまう

僕はそんなことを気にせずに

クロウ

あの!

それってもしかして無属性でも魔法が使えるってことですか?

聞いた、聞いてしまった僕はこれの返答によってはまた落ち込むとわかっているのに聞いてしまう

だって仕方がないじゃないか、ずっと属性がなくて虐げられてきたのだから

チャンスがあるのなら少しでもそれにすがりたい

ラック

・・・そうですね、私としては研究の手伝いと言っても雑用を少ししてくれれば良い程度だったのですが

ええ、あなたの魔力量なら、恐らく可能でしょう

ただ私の研究しているのは攻撃や回復と言った魔法ではないですよ?

クロウ

それでも・・・それでもいいんです!

お願いします、僕にその魔法を教えてください!

攻撃や回復の魔法ではない?

関係ない、僕にはそもそも魔法がないのだから、使えるようになるだけでもとても大きな一歩になるはずだ

ラック

ふぅ・・・わかりました

でわ、これからしばらくのあいだ、よろしくお願いしますねクロウさん

いや、クロウとお呼びしましょうか

クロウ

・・・!はい!

よろしくお願いします

こうして僕は、魔法が使えない今までと別れを告げ

属性がないながらも魔法が使えるようになるためにこの鳥人、ラックさんと魔法の研究をはじめることになった

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