気を失ったはずの僕はまるで毛布のような柔らかい感触に意識を戻す

眠い・・・まだここで眠っていたい

というか僕はいったいどこに今いるんだろうか

さっきまで僕は森で一人で・・・

そして先ほどの出来事が脳裏に浮かぶ

殺した、初めて生き物をこの手で殺めてしまった

相手は魔物人に害をなすもの

僕は必死に生き残ろうとしてナイフを振りかざして、それで・・・

あのウルフの最後の表情を思い出す

・・・・・・苦しそうだった

そう、向こう側も必死に生き残ろうとしていたんだ

仕方がない仕方がなかった

それでもやはりどうしても考えてしまう

ウルフが僕に向かってかけてくる

よだれをたらしながら殺意を持った目をこちらに向けて

いや、向こうはもう死んでいるんだからそんなことはありえない

それでもウルフは僕に飛び掛ってくる

ああ・・・そういうことか

ウルフが地から足を離し飛び僕に飛び掛る瞬間に確かに僕は見た

僕のナイフがウルフの腹部に深々と突き刺さっているのを

クロウ

うわああああああああ!

悲鳴、僕のもので間違いない

悲鳴を上げると同時に僕は体を勢いよく起こす

額から雫がたれ落ちてくる、僕は呼吸が荒かったのがわかった

クロウ

ハァ・・・ハァ・・・こ、ここは?

荒い息を整えるとともに今の状況を落ち着いて考えてみる

ベッドだ、ベッドがある、やわらかい毛布に包まれて僕はここで寝ていた・・・らしい

ようやく思考が段々と追いついてきた

周りを見れば木製の壁
いや、木製と言うより木そのものと言った方がいいだろうか

ここは恐らくどこかのログハウスなのだろう

辺りには木を使った家具が並びテーブルからには料理がおいてあるのだろう、いい匂いが漂っている

ラック

おやおや、お目覚めですか?

ガバッ


僕は思わず声のした方へ身構える

・・・え?
どういうことだ

ラック

森で気を失っていたようでしたので私の家まで連れてこさせていただきました

ああ、これはあなたのナイフですよね?
先にお返ししておきます

クロウ

え・・・?え・・・?

どうしよう、鳥だ、鳥が二足歩行でとても優雅にこちら歩いてくる

いや、本当に

なぜかって?
ならば逆に聞くけど人間にくちばしはあるだろうか?
人間は顔中毛で覆われているだろうか

後者はまぁありえるけど前者はまずないであろう

断言できる

ラック

ああ、申し遅れました、私はラック
ラック・バーロット

見ての通り鳥人です

よろしければあなたのお名前をお聞かせ願えないでしょうか?

ラック・バーロットと名乗った鳥人は優雅に礼をする

自体が若干理解できていないような気がするが彼は僕を助けてくれたようだ


ならばこちらも礼を言わねば

クロウ

クロウ・・・
クロウ・レーデンです

えと、助けていただいてありがとうございました

質問なんですがここは・・・?

ラック

ここはあなたの先ほどまでいた森から大して距離のない場所ですよ
私はここを拠点にして魔法の研究をしている者で、あなたを見つけたのは実験の材料を探して出ていたときだったんですよ

なるほど・・・通りで薬のビンのようなものが多いと思った

木製の家具の、いや棚か

それの上にはところ狭しと薬のビンのようなものが置かれている

ラック

そんなことよりもあなた、お腹すいてませんか?

ちょうど昼時に目を覚ましてくれてよかった

よろしければ一緒に昼食をとりませんか?

クロウ

え・・・いいんですか?

思わぬ提案に僕は聞き返す

机の上には料理が確かにあるが僕なんかとともに食べてもいいのだろうか?

ラック

・・・?不思議なことを聞きますね?

良いに決まっているじゃないですか、それに

・・・いけない、確か今日は何も食べていなかったな

初対面の人にお腹の音を聞かせてしまい僕はあわてて

クロウ

あ・・・いや、これは、その・・・

しばらくちゃんと食べていなくて・・・

誤魔化そうとしたが、空腹と言う人間の欲求に素直になるしかなかった

僕はラックさんへの警戒をこの時点で完全に解いているようだ

ラック

フフフ・・・

ま、あなたのことは後でゆっくり聞かせてください

さあ、冷めないうちに食べましょう

テーブルのとセットで置いてある椅子にされるがままに座らされる

目の前にある料理に思わず目を見開く

・・・これはパイだろうか?甘い香りが鼻にやってくる

ラック

この森で取れた木の実のパイです

お口に合うかはわかりませんが、腕によりをかけて作ってみました

とても甘くておいしいですよ

喉をゴックンと音を出して鳴らして料理を見つめている僕を見てラックさんは僕に教えてくれる

僕がきちんと座ったのを確認してラックさんも目の前の席へと座る

そしてパイを切り分けて僕の目の前においてくれた

クロウ

わあ・・・!とてもおいしそう!

素直な感想、これ以外に見つからなかったんだから仕方がない



僕の言葉を聞いたラックさんはうれしそうに笑い

ラック

ハハハ

ありがとうございます

でわ、いただきましょうか

パイの横においてあるフォークを手に取り食べ始めた

僕もそれに習いフォークを一本手に取り

クロウ

いただきます!

の言葉とともに

焼き立てでまだ少し熱いそのパイを口へと運んだ

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