エリア

今日は中級魔法の練習に付き合わせてあげるわ!
感謝なさい!

ああ、今日もか
僕はそう考えながらよろよろと立ち上がる

目の前で立つ少女に向かって僕は

クロウ

ありがとう・・・ございます

一言、答えた

彼女は僕の愛すべきひとつ下の妹

エリア・レーゼン

高貴な衣装とこの場所はとても不釣合いに見える

金色の髪、整った顔つき、きれいな体

おそらく町の人たちで彼女を見て振り返らない人間はいないであろう

エリア

早く着なさいこのノロマ!

一言言い残すとこの場所から歩いていく

僕もこれについていく
牢屋の鍵は先ほど彼女が開けたのだろう

僕は出口へ向かう

階段を上り外へ出ると暖かい日差しに僕の汚れで少し黒くなった肌が照らされる


少し歩くと屋敷がある
そこの中庭でおそらく彼女は待っているのだろう

正直行くのはいやだが行かなかったらこの後何をされるかわかったものではない

重い足を運びながら屋敷の前へ着く

ここは僕の家


いや、僕の家だったといったほうが正しいだろうか

貴族  レーゼン邸だ

11歳のまでここで暮らしていた

12歳の誕生日
魔力測定の日に属性がないとわかったら、その後は早かった


それまで優しかった父の様子は豹変し、僕のことをゴミのように扱うようになった

母は僕のことを何とか庇ってくれていてくれたが
平民から貴族である父と結婚した母の発言力は弱く僕は先ほどの地下牢へ入れられた

それでも最低限の食材を食べさせてくれた母にはすごく感謝をしている

エリア

遅いわよ!

門の前まで行くとエリアにまた怒鳴りつけられる

ああ、ここで待っていたのか

クロウ

あ・・・すみません

一応謝っておこう

彼女も僕が属性無しわかるまでは優しかった
よく僕のことを慕って隣を歩いていたかな・・・

エリア

早く来なさい!私は暇じゃないのよ!

また怒らしてしまった
今度こそ中庭へ行ったのだろう

僕もまた歩き出す

幸い中庭には屋敷の内部に入らなくてよいためそのままいける

途中ですれ違う人も見かけた

ここの使用人だろう

でも僕は声をかけるようなことはしない
彼らは僕のことを無視してくるのがわかっている
それが父の命令か自分たちの意思かはわからないけど

中庭へと着いた

花壇には色とりどりの花が咲き乱れている

おそらく母だろう

母の趣味は園芸だからね
手入れが行き届いているように見える

エリア

ようやく来たわね

呆れられたような声を聞きまわりを見ると彼女はそこにいた

身の丈より少し低いぐらいの木の杖を手に持って

あの木の杖は魔法を使うための杖だろう

・・・前の杖と少し違うかな

エリア

今日は新しく父様にいただいた杖をためさせてもらうわ!

早速そこに立ちなさい!

言われた通りにそこへ立つ

何をされるかって?

ここまで着たらいやでもわかるだろう

エリア

焼き尽くせ!ファイアアロー!

詠唱が終わった瞬間彼女の頭上から炎の槍が出る

中級魔法ファイアアロー
高等部にて習うであろうはずの魔法を14歳の彼女が使えるのには感服だが僕は目の前の危険に対していやな汗をかいてしまう

ボン!

音にするとこうだろうか

僕の体はファイアアローの爆発によって吹き飛ばされる

痛い、とてつもなく熱いそんな感じが同時に襲ってくる

エリア

ふう、やっぱり父様にもらった杖はすごいわ!
とても魔力を伝えやすい!

・・・それにしても丈夫な体ねえ
身体強化を出来るわけないのに

よく死なないわね

撃った本人がそれを言うかという突っ込みはさておいて

事実僕は生きている
エリアの話を聞く限り僕は普通より魔法の耐性があるようだ

先ほどのファイアアローも身体強化をしなければ普通は死に至るかそれに近い怪我をするだろう

属性がない僕にはこれが唯一の強みであった
・・・いや、残念ながらこれにより今みたいにエリアの魔法の実験台にされている辺り弱点なのかもしれない

一同

ふむ、うまくなったなエリア

現在倒れている僕は声のしたほうに顔だけを向ける

そこには

ザルバ

私の選んだ杖はどうだ?

学校でうまくやれそうか?

僕のことを無視して愛する娘に優しげに声をかける
僕の父の姿があった

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