怜一郎さんの朝は遅い。
理由はわかっている。
あたしが寝付いてから仕事をするからだ。
あたしが眠るまであたしの横で自分も横になって、あたしが寝付いたあとそっと動き出す。
そのことに気づいたのは、つい最近のことだ。
それまで、確かに不思議に思うことはあった。
あたしと結婚する前はずっと会社で働きづめだった怜一郎さんが、結婚の準備のための休みと称して一ヶ月以上家にいるのだ。
しかも一日の大半を、あたしと一緒に過ごしてくれている。
買い物したりおしゃべりしたりといったつまらないことにつきあってくれているのだ。
それは、もう、おかしい。
だから、それを知ってからは無理に早く起こすのをやめていた。
今日もいつものようにひとりで食事を済ませ、食後のコーヒーを楽しむ。
…はずだった。