話によると、一色さんはなんとあたしに会うためだけにここを訪ねたらしい。
怜一郎さんに頼まれてスタッフと共に数十着ものウェディングドレスをデザインしたものの、それを着るのがどんな人なのかを知りたかったと言っていた。
それにこれから、披露宴用のドレスも作らなくてはいけない。
今度はあたしを見て、ちゃんとあたしに合う物を作りたいと言っていた。
前回のウェディングドレスで苦労した分、学んだようだ。
ディナーを楽しみながら、あたし達3人はいろんな話をした。
あたし的には、ふたりの幼少期のエピソードが一番おもしろかった。
…まあ、ほとんどが怜一郎さんが一色さんに振り回されたというものばかりだったけど。
それから、話していて気づいたことがある。
一色さんの話し方や振る舞い方は、怜一郎さんに似ている。
…だが、そうはいっても本当の怜一郎さんではない。
出逢ったころに見せていた、怜一郎さんの表の顔にそっくりだ。
そういえば前、裏表の使いわけが上手ね、と嫌味で言ってやったことがあった。
あの時怜一郎さんは、見本にしている人がいるから、と答えていたけど、もしかしから一色さんがその見本の人なのだろうか?
デザートのイチゴのタルトが運ばれてきた頃、怜一郎さんのスマートホンが鳴って、電話に出るため彼はいったん席を立った。