それから、彼の用意した薄いオレンジのワンピースに着替えた。
レースをリボンのついた、かわいらしいワンピースだ。
膝下まで丈があって、清楚な感じ。
綺麗なお姉さんに薄い化粧とヘアアレンジをしてもらい、あたしは久々のおしゃれに心が弾んだ。
お姉さんは、あたしの世話係だと紹介された、小岡優子(こおかゆうこ)さん。
20代半ばくらいの、きれいな人だった。
それから、彼の用意した薄いオレンジのワンピースに着替えた。
レースをリボンのついた、かわいらしいワンピースだ。
膝下まで丈があって、清楚な感じ。
綺麗なお姉さんに薄い化粧とヘアアレンジをしてもらい、あたしは久々のおしゃれに心が弾んだ。
お姉さんは、あたしの世話係だと紹介された、小岡優子(こおかゆうこ)さん。
20代半ばくらいの、きれいな人だった。
早く
と急かされ、外に出たあたしは息を呑んだ。
予想はしてたけど、本当に大きな邸――というか、大きな敷地だった。
玄関を出てすぐ、黒塗りのリムジンに乗るよう促され、あたしはそれに従った。
それから車は結構長いこと走るけど、門が見当たらない。
こんなに立派な邸だ。
門がないなんてあるだろうか?
いくつかの建物の横を通り過ぎ、…あたしは、ある可能性に気がついた。
…もしかして、ここ、まだ敷地内…?
あ?…そうだけど
勇気を振り絞って訊いた質問に、彼は当然だという風にそう答えてきた。
あたしは軽い眩暈を感じた。
本当にこんな人とやっていけるのかな…
やっと車が止まった。
たぶん、5分くらいは走ってたと思う。
辿りついたのは、お庭がきれいなお邸だった。
本邸よりは小さいけど、普通の一軒家の2倍はある。
彼曰く、病気になってからお祖父さまが望んで移られたらしい。
日当りのいい素敵なおうちで、なるほど病気がちの方の気晴らしにはとっておきのお家だと思った。
お祖父さま、失礼いたします
あたしの心配なんて無視して、彼はさっさと扉を開けてしまった。
遠慮もなくずかずかと部屋に入り込む彼の後を、あたしは慌てて追った。
怜一郎か
部屋の奥から、静かな声が聞こえる。
はい。…約束通り、俺の大切な人を連れてきました
“大切な人”。
嘘とは言えその言葉の甘さに恥ずかしくなって、あたしは顔を上げることができなかった。