パパも知らないぞ!
パパも知らないぞ!
父もダイニングテーブルに着き、母は皆の分の食事を用意してくれた。
は~いw
じゃあ、ご飯を食べましょう。
いただきます♡
いただきます。
あ、はい。
いただきます。
きます……。
……きます。
パパ、静香ちゃん。
頭がしっかり聞こえないよ。
ちゃんとごあいさつしてからご飯を食べないといけないんだからね。
犠牲になってくれた命に感謝して食べるから「いただきます」なんだよ。
お皿を見て、ちょっと犠牲になった鳥とか豚とかに思いを馳せてしまった……。
いただきます。
い……いただきます……。
ちょっと食欲が……。
生き物を食べることがなんたらもそうなんだけど、なんか父から妙な緊張感が漂って来てるんだけど……。
生きた心地がしない感じで、ご飯を食べる。
しばらく黙々と食事をした……。
お姉さまのご飯、
とっても美味しいです。
だいたい食べ終わり、その沈黙を破ったのは弁慶だった。
そう? そう?
慶子ちゃんに言ってもらえると、とっても嬉しいんだけどw
食べた気しないし……。
食べた物がどこに入ったかわからないってヤツ?
あー、慶子ちゃんとやら。
「とやら」?
どうしたんだ?
父がヘンだ。
はい。
なんでしょう。
おじさま。
「おじさま」?
そんな言語、泥棒アニメでしか聞いたことがないぞ。
キミは、静香のお友だちなのかい?
私は、そうなりたいと思っているんです。
だからコイツは誰だ!
友達になりたいのなら、「キサマ」とか言うわけがない。
仲良くなる気、ゼロだよね。
静香が「お友だちは嫌だ」と言っているのか?
静香、ダメだぞ。
ちゃんとお友だちと仲良くしないと。
え?
しまった。
父はあの母を選んだ人だ。
可愛い女の子には、めっちゃ騙される……。
弁慶にいいようにあしらわれるタイプだ……。
あいつ、なんだかんだ言って、策士なのよね。
力が強いっていうイメージ強いけど。
義経は華やかに天然ボケをかまし、弁慶がそれを日向に陰にフォローする感じだった。
その天然ボケだって、どこまでホントにボケてるのかわからないんだけど……。
いいえ。違います。
静香さんが兄とお付き合いすることになったので、私も仲良くしたいなって思っているんです。
キミのお兄さんというのは……。
そこにいるキミかね。
はい。そうです。
田中経次郎と言います。
田中だったのか?
一般的な名字……。
当時も源はメジャーな名字だった。
私は静香のパパだ。
え? それ?
それが自己紹介?
キミは静香を本当に幸せにできるのかね!
いきなり話、飛んだ!
わかりません。
なにぃ~!
ボクは、静香さんといられれば幸せになれます。
……。
でも、静香さんが幸せかどうかは、わかりません。
彼はそう言っているが、静香はどうなんだ?
お前はまだそんなことをぬかしてるのか!
……。
……。
私の幸せだ?!
私が不幸だって言えば、別れるのか?
お前は!!!
そうだろう? どうせそうなんだろう? 「あなたのため」とか言いながら、こっちの気持ちはおかまいなしで
結局自分の気持ちを優先にするんだよね!!!
……。
私は自分が不幸だって思っても、あんたのせいで不幸になっても、
絶対に絶対に別れないんだからね!
はい……。
わかりました……。
そういうことみたいなので、お義父さん。娘さんと結婚を前提にお付き合いさせていただきます。
わ~い♡
明日はお赤飯炊くね~w
ご近所に配ろうっと♡
お願いです、お母様。
それはやめてください……。
「お義父さん」だと?!
お前にそんな風に呼ばれる云われはない!!
そんなセリフ言う父親って、ホントにいるんだ……。
ちょっとパパ、嬉しそう?
あの母の旦那だもんな……。
まだ静香は高校生なんだぞ! そんなの許せるわけがないだろう!
そうだ、それ、ちょっと忘れてた……。
そうよ!
会って一週間で、どうして話がそう進むわけ?!
なんだと!
そうなのか?!
パパ。さっき説明したでしょ。
経次郎くんは、小学生の時から、ずっと静香ちゃんのことが好きだったの。
そんなに一途に想ってくれている人が、静香ちゃんのことを不幸にするはずがないでしょ?
そうなのか?
パパ。騙されちゃダメよ。こいつはずっと私のことをストーキングしてたんだからね。
え? なに?
ストーキング?
私の知らないうちに、ママと仲良くなってたのよ。ほぼ毎週ウチに来てたんだって。
何?!
パパの居ない間に、ママと仲良くなっていたのか?!
それは赦せん!!
静香ちゃん、あなた、別れたいの? 別れたくないの?
別れたいわけじゃないけど……。
じゃあ、どうしてそういうことを言うの?
展開が速すぎて、ついていけないんだけど。
け……、結婚とか、まだ考えられないし。
じゃあ、静香ちゃんは、経次郎くんと将来別れるつもりでお付き合いしてるってこと?
そ……、そんなはずないでしょ……。
じゃあ、「結婚を前提にお付き合い」でいいじゃない。
もうちょっと段階を踏んでからそういうことになるもんでしょ?
何古臭いこと言ってるのよ。こういうのは勢いで決めなきゃ。
勢いにも程があるの!
静香ちゃんがそういうこと言うなら……。
え?
なんか嫌な予感……。
ママが経次郎くん、愛人にしちゃうからね~♡
そう言って、軽やかに席を立ち、経次郎の肩に腕を回す。
はぁ?!
なにぃいいい!!!
えっ?
父の声の方が大きかった……。
そんなのパパが赦さないからな!!!
ママの愛人を静香の結婚相手になんてできるか!!!
…………。
違う、それ、絶対に違う……。
出て行け!!!俺の目が黒いうちは、ウチの敷居はまたがせない!!!
どうするんだよ……。
これ……。