カレンは僕から滴りの石を受け取ると、
それに向かって魔法力を送り始めた。
すると石はほんのりと輝き、水が湧きだす。
カレンは僕から滴りの石を受け取ると、
それに向かって魔法力を送り始めた。
すると石はほんのりと輝き、水が湧きだす。
やったぁ! 水が出たよっ!
良かった!
これで水の心配を
しなくて済むわねっ♪
はわわっ!
もったいないですぅ!
セーラさんは慌てて水袋の口を開け、
水を汲み始めた。
僕もコップを取り出して、零れる水を飲む。
うわぁっ、冷たくておいしいっ!
喉が渇いていたということもあってか、
水がすごくおいしく感じられた。
ついついがぶ飲みして、
お腹がタプンタプンになっちゃった……。
その後、水袋に水を汲んだセーラさんは
コップで水を飲み始めた。
喉が潤った僕は、
魔法力を送り込んでいて手の使えないカレンに
水を飲ませてあげる。
おいしいですねぇ!
カレン、どう? おいしい?
あぁ、最高!
もっと飲む?
うん、もっと……。
僕はまたコップに水を汲み、
カレンに飲ませてあげた。
こうして喉が潤った僕たちは
床に座ってちょっとだけ息をつく。
するとそんな時、
商人風のおじさんが声をかけてくる。
キ、キミたちっ!
はい?
少し前、滴りの石を
売るというような声が
聞こえたんだが……。
えぇ、まぁ。
どうしようかなぁって考えてます。
キミたちが持っているのは、
本物の滴りの石のようだね。
使うところを見させてもらったよ。
もし売るなら、
私に売ってもらえないだろうか?
えっ?
もちろん現金で渡そう。
買い取り価格も相談に乗るよ。
いくらくらいがいいかね?
いきなり値段の交渉をされても
困っちゃうなぁ……。
僕はカレンやセーラさんと顔を見合わせた。
でも2人も眉を曇らせている。
今すぐに乗れる船の運賃は
15万ルバーなんだよねぇ。
さすがにそれは高すぎるわよ。
…………。
確かに15万ルバーは苦しいなぁ。
でも困っているなら、
なんとか出してあげてもいいよ。
ホントですかっ!?
あぁ、これも何かの縁だしね。
困った時はお互い様だ。
はっはっは!
おじさんは頭を指でかきつつ、微笑んでいる。
世の中にはいい人っているもんなんだなぁ。
まさか15万ルバーで買い取ってくれなんて。
これで今すぐにでもサンドパークへ
移動することかできる。
僕はカレンの手を握り、飛び跳ねながら喜んだ。
カレン、いい人に出会ったね!
これも神様のお導きかも!
では15万ルバーで
交渉成立ということで――
待ってほしいのですぅ!
突然、セーラさんが僕たちの間に入って
会話を止めた。
――どうしたというのだろう?
眉を吊り上げて
恨めしそうに僕たちを見ている。
セーラさん?
私、もう少し滴りの石を
観察したいのですぅ。
だから今すぐは
渡したくありません~。
――っ? それならこの話は
なかったことにさせてもらうが、
それでもいいかね?
おじさんはムッとしつつ、
やや語気を荒げてセーラさんに問いかけた。
いい雰囲気で交渉が決まりかけたのに、
そこへ水を差されたんだから
おじさんが怒るのも無理はない。
でもセーラさんはそんなおじさんの態度を見て
ニコッと微笑んだ。
はい、このお話は
なかったことにしますぅ。
さようならぁ!
っ!?
トーヤくん、カレンちゃん。
さっさと行きましょ~!
ちょっ、セーラさんっ!?
引っ張らないでくださいよ~!
僕とカレンはセーラさんに手を引っ張られ、
力で強引にその場から移動させられた。
想像以上にその力は大きくて、全く逆らえない。
これならバトルアックスを軽々と扱えるのも
納得できるけど……。
そしてしばらくメインストリートを進み、
路地に入ったところで手を開放された。
どうしたんですか、急に!
……あの人を
信用しちゃダメですぅ。
何かを隠している目でしたぁ。
えっ?
私の推測ですけどぉ、
滴りの石は15万ルバー以上の
価値があるのではないかと
思いますぅ。
まさかっ、こんな石がっ!?
でも、水がすごく貴重な地域なら
あり得ない話じゃないかも。
商人ギルドへ行ってみましょう。
王都の商人ギルドの組合証で
この町のギルドでも
取引や情報交換が出来ますのでぇ。
私は組合員なんですぅ。
そっか、王都では
商売をしていたんですもんね!
ギルドならある程度、
信用のおける取引が
できるはすですぅ。
近くの商店でギルドの場所を
聞いてみましょう!
こうして商店を中心に聞き込みをした結果、
商人ギルドの場所が判明した。
そこは港の近くにある問屋街の一角。
薄汚れた建物の階段を下りていった先の
地下にあった。
情報によると表向きは酒場なんだけど、
実はその奥がギルドとなっているらしい。
中へ入ると、カウンターには
筋骨隆々の親父さんが立っている……。
次回へ続く!