ユリアさんが目を覚ましたあとも、
僕たちは施療院に留まって
容態を見守っていた。
ただ、幸いにも時間の経過とともに
体調は安定して、
カレンもラジーさんももう安心だと
太鼓判を押すほどになっていた。
――そして翌日、
僕たちはサンドパークへ向けて
プレプレ村を出発する。
街道との出入り口にはアポロとラジーさんが
見送りに来てくれていた。
ユリアさんが目を覚ましたあとも、
僕たちは施療院に留まって
容態を見守っていた。
ただ、幸いにも時間の経過とともに
体調は安定して、
カレンもラジーさんももう安心だと
太鼓判を押すほどになっていた。
――そして翌日、
僕たちはサンドパークへ向けて
プレプレ村を出発する。
街道との出入り口にはアポロとラジーさんが
見送りに来てくれていた。
お前らには本当に世話になった。
この恩は一生忘れないぜ。
ホントは一緒に旅をして
借りを返したいんだけどな……。
別に気にしなくていいわよ。
医師として当然のことを
しただけだから。
僕も薬草師として
患者さんを救いたかっただけ。
それにね――
僕はアポロの瞳を見つめた。
するとそれに気付いたアポロは
キョトンとした顔をする。
っ?
ユリアさんを助けたいっていう
アポロの強い想い、
すごく伝わってきたから。
それを無下にしたく
なかったんだ。
トーヤ……。
アポロは唇を噛みしめ、瞳を潤ませた。
そして服の袖で乱暴に目の辺りを擦ると、
真顔で僕を真っ直ぐに見つめてくる。
――次の瞬間、彼は深々と頭を下げる。
悪かった!
今さらだけど
初めて会った時に財布を
盗もうとしたことを謝るっ!
アポロ、もういいんだよ。
でもなんであんなことを?
旅の資金が底をついちまってな。
やむにやまれず……。
もうあんなことをしちゃダメだよ?
あぁ、約束するっ!
力強い返事と澄んだ瞳。
アポロの言葉に嘘はなさそうだ。
――でもそんな彼に
カレンは懐疑的な視線を向ける。
信用できるかしら?
男同士の約束だ!
破るわけがないだろっ!
トーヤは信じてくれるよな?
もちろんだよっ♪
お~! 心の友よ~っ!!
まったくもう。
いつの間に仲良くなったのよ……。
あららぁ、ヤキモチですかぁ?
ち、違いますよっ!
うふふふ……。
皆さんはこれから
サンドパークへ向かうんですよね?
はい、そうです。
あの町では私の師匠が
医師をしていまして、
手紙を書いておきました。
そう言ってラジーさんは便せんを
カレンに手渡した。
それを見せれば
きっと力になってくれるでしょう。
名前はシンディといいます。
ありがとうこざいます。
俺からも餞別がある。
今度はアポロがポケットから蒼い石を取り出し、
僕に差し出してくる。
僕はそれを受け取り、じーっと眺めた。
――吸い込まれるような透明感と美しさ。
それに不思議な力を感じる。
これは?
『滴りの石』だ。
サンドパークの近辺では
絶対に役に立つ道具さ。
どういう効果があるの?
魔法力と引き替えに
水を呼び出すことができる。
お前も『業火の石』を
使っていただろ?
あれと似たようなものさ。
だったら井戸水なんて飲まずに
それで水を出せばよかったのに。
……コイツは意外に
魔法力を消費するんだ。
俺は魔法を使った直後だったし、
ユリアもゴーレムを操って
魔法力を消費していたからな。
あ、そういうことか……。
俺はその石をポートゲートで売って
カネにしようと思っていたんだ。
でもそこへ辿り着く前に
おカネが尽きちゃったわけね。
……ま、そういうことだ。
苦笑いを浮かべるアポロ。
でも水が出るだけの石なんて売れるのかな?
確かにプレプレ村みたいに
井戸水が汚染されているなら
重宝するだろうけど。
それに水系魔法の中でも、
水を呼び出すだけなら初歩中の初歩。
少しでも魔法適正があれば
簡単にマスターできる。
価値があるようには思えないけどなぁ……。
ポートゲートってどこなの?
サンドパークへの
出入り口になっている町さ。
そこから船に乗っていくのが
一般的なルートになっている。
船? 地図で見た限りでは、
海や川はなかったような
気がするけど……。
はうぅ、船ですかぁ。
私、酔うんですよねぇ……。
あ、大丈夫ですよ。
酔い止めの薬を用意しますから。
わわぁ、助かりますぅ!
ま、船といっても
普通の船じゃないんだけどなっ♪
どう違うの?
それは見てのお楽しみだ。
アポロはニヤニヤと笑うだけで、
詳細は最後まで教えてくれなかった。
なんだかすごく気になるなぁ……。
こうして僕たちはアポロたちに別れを告げ、
プレプレ村を出発したのだった。
次回へ続く!