僕たちは王都を出てから最初の村となる、
プレプレ村へ到着した。

長居をするつもりは今のところないけど、
アポロとの対決で
飲み水がなくなっちゃったので
それの補給はしておかなければならない。


――と、思っていたら前方に
井戸が見えてきた。
 
 
 
 
 
 

 
 
 

トーヤ

あそこに井戸があるよ。

カレン

早速、水を汲みましょう。

 
僕たちは道の隅にある井戸へ近寄っていった。

でも釣瓶に手をかけようとした時、
その目の前に置いてある看板に目が留まる。
 
 

トーヤ

カレン、ここの看板に
『飲用禁止』って書いてあるよ。

カレン

ホントね……。

セーラ

何か問題でも
起きたんでしょうかぁ?

村人

あなたたち、旅人ね?
この村の井戸水は
飲まない方がいいわよ。

 
僕たちが話をしていると、
村人さんらしき人が声をかけてきた。

やっぱりこの水には何か問題があるみたい。
 
 

トーヤ

何かあるんですか?

村人

1か月くらい前から
井戸水を飲んだ者が
バタバタと倒れちゃってね。

村人

回復した人もまれにいるけど、
ほとんどは死んじゃって……。

トーヤ

えぇっ!?

 
僕は背筋が寒くなった。
もし看板に気付かずに水を飲んでいたら
大変なことになっていた。



――いや、僕が死ぬなら構わない。

もしカレンが目の前でそんなことになったら、
僕の心はどうなってしまうことか……。
 
 

セーラ

ではではぁ、飲み水は
どうしているのですぅ?

村人

近くの沢の湧き水を飲んでるの。
ただ、量に限りがあるから
村長が配分などの
管理をしているのよ。

村人

そういうこともあって、
村人以外は代金を払わないと、
分けてもらえないわ。

トーヤ

そんな……。

カレン

井戸水が飲めなくなった原因は
分かっているんですか?

村人

いいえ、何にも分からないわ。
王都の役人に報告をしたけど
音沙汰がないみたいよ。

 
村人さんは話を終えると、
近くの家の中へ入っていってしまった。

村がそんな大変なことになっているなんて、
全然知らなかった……。
 
 
 
でもそれほど深刻な事態なら、
王城内にいた僕たちにも噂くらいは
聞こえてきてもよさそうなんだけどなぁ。

少なくとも女王様なら、
この事態を知ったら何か対策を打つはず。



――まさか誰かが途中でこの話を
もみ消しているとか?

そ、そんなことはないよね……。
単なる手違いだよね?
 
 

セーラ

どうしましょうかぁ?

カレン

今回は私が水の魔法を使います。
それを汲んで飲み水にしましょう。

カレン

魔法力が無駄になるけど、
仕方ないですね……。

セーラ

でも魔法力は休めば
回復しますからぁ。

トーヤ

なんで井戸水が
飲めなくなっちゃったんだろうね?
それに症状も気になるよ。

カレン

調べてみる?

トーヤ

うん、放っておけないもん。
それに症状によっては僕の薬で
なんとかできるかもしれないし。

カレン

分かったわ。
まずは村の施療院に
行ってみましょう。

 
こうして僕たちは
村の施療院へ向かうことにした。

村のお医者さんなら
患者さんと接しているはずだし、
詳しい症状などを
知っているかもしれないからね。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 

 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
僕たちは施療院に到着し、建物の中に入った。

そこは普通の住居を改造した感じで、
入院ができるような設備は整っていない。
 
 

トーヤ

こんにちは。

ラジー

おや、旅人の方々でしょうか?
足でも痛めましたか?

カレン

いえ、そうではありません。
私は医師のカレンといいます。
彼は薬草師でして……。

トーヤ

薬草師のトーヤです。

 
僕はペコリと頭を下げた。

すると村のお医者さんらしき人は
優しく微笑んで会釈を返してくれる。
 
 

セーラ

私は2人と一緒に旅をしている
セーラですぅ!

カレン

私たちはサンドパークへ向かう
旅の途中なんです。
それで井戸水を汲もうとしたら
飲んではいけないと
村の人から聞きまして。

カレン

お手伝いできることがあればと
立ち寄った次第です。

ラジー

そうでしたか……。

トーヤ

詳しいお話を
聴かせていただけませんか?

ラジー

分かりました。
私は村の医師でラジーと申します。

ラジー

1か月ほど前のことです。
井戸水を飲んだ数名が
犠牲となりまして――。

 
ラジーさんは経緯を詳しく話してくれた。


それによると、
1か月前の朝に最初の患者さんが出て、
原因が分かるまでの数時間に
多くの村人が井戸水を飲んで
亡くなってしまったそうだ。

今も井戸水が原因ということ以外は
ほとんど分かっていないらしい。


村長さんは王都へ調査の依頼を出したけど、
未だに返事がないとのこと。
 
 

カレン

ラジーさんは井戸水を
お調べになりましたか?

ラジー

えぇ……。
おそらくは特定の毒素が井戸水に
混じっているのではないかと
思われます。

ラジー

ただ、いつどこで何が原因で
そうなったのかは分かりません。
しかも患者さんに対して
解毒魔法をかけても
あまり効かないのです。

 
 
 
 
 

 
 
 
不意にドアが勢いよく開いた。

全員の視線が一気にそちらへ向くと同時に、
そこにいた人物が大声で叫ぶ。
 
 

アポロ

おいっ! 医者はいるかっ!
急病人が出たんだっ!

トーヤ

あ……。

カレン

アポロっ!?

セーラ

また会いましたねぇ。

アポロ

――っ!?
お前らはっ!

 
施療院に飛び込んできたのはアポロだった。

でも、今はなんかただならぬ様子だ。
何があったんだろう……? 
 
 

 
 
 
次回へ続く!
 

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