王都でクレアさんと別れ、
僕とカレン、セーラさんでの旅が始まった。


まずは西にあるサンドパークへ。
距離は王都から1か月くらい歩いた先にある。
途中にはいくつかの村や町もあるので、
適度に休みつつ進んでいこう。
 
 

トーヤ

ねぇ、カレン。
次の村まで半日くらいなんだよね?

カレン

確かそのはずだけど。

トーヤ

今日はどうする?
村に立ち寄って泊まる?
それとも進んじゃう?

カレン

そうねぇ。
確かに距離は中途半端よねぇ。
セーラさんはどう思いますか?

セーラ

私はお2人にお任せしますよぉ。

カレン

それなら村で情報をザッと集めて、
有益なものがなさそうなら
先へ進みましょう。

トーヤ

そっか、魔竜山へ登る方法を
探さなきゃいけないもんね。
完全にスルーはできないか……。

カレン

そういうことっ!

 
 
――と、会話をしながら歩いていると、
街道の先でうずくまっている人の姿が
目に入ってきた。



体調でも悪いのかな?

僕たちは急いでその人に駆け寄る。
 
 
 
 
 

カレン

あの、大丈夫ですか?
どこか怪我でもしたんですか?
それとも体調が悪いとか?

アポロ

急にお腹が……。

 
 
魔術師のような格好をしたその人は、
手でお腹を押さえて苦しそうな顔をしていた。

でも額に汗は滲んでいないから、
そんなに重い症状ではなさそうだ。
普通に会話もできているし……。
 
 

カレン

大変! すぐに診察魔法で
診察をしますねっ!

アポロ

えぇっ!?

アポロ

あ、あなたはもしかして
お医者さんなんですか?

カレン

えぇ、そうよ。
それに一緒にいる彼は薬草師なの。
だから安心して。

アポロ

っ!?

 
 
魔術師さんは目を丸くしながら僕を見ている。

傍目には薬草師に見えないから、
驚いているんだろうなぁ。
 
 

アポロ

ま、魔法は体質に合わないので、
勘弁してください……。

カレン

診察魔法は体質なんて関係ないし、
影響も与えませんよ?

アポロ

あ……えっと……
精神的に魔法は嫌いで……。
それにきっと
ただの食あたりだと思うんです。

カレン

魔法は嫌いって……。
でもその格好、
魔術師なんじゃないですか?

アポロ

えっ?
――あ、痛たたたたっ!
また痛んできたぁっ!

 
 
魔術師さんは急に大きな声を出して苦しんだ。

なんかちょっとわざとらしい気もするけど、
苦しんでいる人を疑っちゃダメだよね……?
 
 

アポロ

もし薬草師さんがいるなら、
腹痛に効く薬をいただければ
それで構いませんので……。

カレン

いいんですか?
もし大きな病気だったら
大変ですよ?

アポロ

よ、よくあることなんです。
いつもは薬を
持参しているのですが、
切れているのを忘れていて……。

トーヤ

それはどんな薬ですか?
薬の組み合わせ次第では
症状を悪化させてしまう
可能性があるので教えてください。

アポロ

えっ!?
あ、何だったかなぁ……。
緑色の丸薬のような……。

カレン

そんな腹痛薬ってあったかしら?

 
 
首を傾げるカレン。
僕も色々と考えてみるけど、
該当する薬は思い当たらない。

ただ、特定の地域だけで処方されている
伝統的な薬なら世の中にたくさんある。
そういった類のものは僕もそんなに知らない。
 
 

トーヤ

僕も心当たりがないなぁ。
黒い丸薬なら知ってるけど。

アポロ

あっ、それっ! それですっ!
色を勘違いしてましたっ!
あははははっ!

カレン

っ?

トーヤ

それなら僕の持っている
腹痛薬を飲んでも大丈夫です。
セーラさん、お水をコップに入れて
この人に渡してあげてください。

セーラ

はいですぅ。

トーヤ

えっと、腹痛薬は……。

 
 
僕は背負っていた荷物を降ろし、
腹痛薬の入っている瓶を探す。


使う可能性が比較的高いから、
上の方に入れたはずなんだけど……。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 

アポロ

うぎゃっ!

 
 
不意に後ろから悲鳴が上がった。

視線を向けてみると、
眉を吊り上げたカレンが
魔術師さんの腕を掴んで捻り上げている。


――いったい、何があったの?
 
 

 
 
 
次回へ続く!
 

第26幕 腹痛に苦しむ男?

facebook twitter
pagetop