旧財閥の一つにして現代日本で第二位の規模を誇る複合企業体(コングロマリット)、神城(かみしろ)グループ。
飲食系から娯楽系を基盤に広範囲の分野を網羅するそのグループは資本主義が産んだ怪物と呼べる。
その全てを統括する一族が神城家であり、その当主は日本で二番目の力を持つ。そして、他の家とは異なる独自のしきたりにより、現在の当主はまだ学生であるにも関わらずこの僕だった。
金があれば権力がついてくる。
娯楽を支配すれば民衆がついてくる。
食い物がなければ人間は生きていけない。
とどのつまり、僕は持って生まれた運によって、本来日本で存在しないはずの王として生まれたのだ。
そしてそれは、公にこそなっていないものの、商売を行う人間の間では周知の事実であった。
僕の名も、僕の立場も。
人には向き不向きがある。
その言葉を真実とするのならば僕は……あらゆる意味で王に向いていたと言えよう。
いや、正確に言うのならば、つい数カ月前まで持っていなかった要素が一つあった。
それは……力を使う意志。
生まれてこの方、僕の手札にはジョーカーしかなかったが、そのジョーカーとて切らない限りは何の影響力もない札だ。
そして、僕が初めて自分の意志でやってみたいと想ったことが笹宮さんの補佐だったのである。
僕は笹宮さんとの出会いを運命だと確信し、自身の全力を持って笹宮さんの物語作りをサポートする事を使命と定義した。
そして、僕の今の今まで眠っていた力が今、その崇高な大義名分のもと解き放たれる。