家に帰った私は、大きなため息とともに低速ゴロゴロしながら、頭の中を整理する。
はぁ~……
どうしよう……ウリエル
家に帰った私は、大きなため息とともに低速ゴロゴロしながら、頭の中を整理する。
どうって何がだね?
秋に告白されたっ……
受ければ念願の彼氏ゲットではないか
でも……堀坂くんへの恋を頑張るって決めたとこなのに
くうだらない。人間はいつも後から悔いよる。目の前の幸せをすぐ掴んでいくべきなのだよ
でも秋は本当に良い人だから……私なんかと付き合ったら直に幻滅すると思うの
君は聞こえの良いように言っておるが、我から見ればめんどくさい人間だな
え……
あっちの男がダメだからこっち、でも傷つけたくないからやっぱりあっち。ウジウジと
ガーン……
自分が幸せになれるよう、宮川秋ともちゃんと向き合えばいいのではないか
そこなの……。正直、私は堀坂くんの代わりにって、やましい気持ちで秋に会った
それで目的が叶ったではないか
うん。それから確かに秋に惹かれてるのも事実……
でも堀坂くんへの気持ちも捨てきれない。こんな私のまま付き合うなんて、最低じゃないかな……
かといって告白断ったら秋と会えなくなるのも嫌……
実に我が儘なのだ
だって……やっとできた繋がりなんだもん
では、消すか
え……
今日のどちらかとの出来事をだよ
ピーマン事変か、ホームの告白か……?
そうなのだ。なかったことにすれば楽であるぞ
でも……
堀坂くんの片手でピーマン。
そして手が触れて……あの時の心臓、ヤバかったんだよね。
この嫌じゃないけど胸が痛い気持ちがあるから、秋の告白を受けられないし、黄昏ピーマンもやめられない。
けど……
秋は本当に優しい人で。
のど飴くれたっけ。
転けそうになった私を引き上げてくれた。
あれは恥ずかしかったな……。
きっとこの人と付き合った彼女は大事にしてもらえるんだろうなって思った。
そして突然の告白。
どうしよ……。
はぁー。
どうしよおおお
ベッドで寝ころびながら足をバタバタする私。
贅沢な悩みだな
ほんとそうだよ。
贅沢。
だいたい秋はなんで私なんか好きになったんだろう。
中一の頃に何があったんだっけ。
もっといっぱい話したかったな。
それに堀坂くんは彼女いるっぽいよね?
他の女子と会う約束なんてしちゃダメじゃん。
緊張してあまり話せなかったけど、きっと一緒にいたらもっと好きに……。
そして考えた末、私は結論を出した。
……両方
ん?
両方とも消してっ!
私が選んだのは、高一の頃の堀坂くんに惚れた想い出や昼休みの記憶も私の中から消してもらうこと、そして秋が私に告白した歴史をも、両方消してもらうことだった。
堀坂くんへの気持ち無しで秋と向き合ったら、自分はどう感じるのか、好きになれるのか、それが知りたかった。
ふむ。そこまで無かった事にする必要があるのか?
だって、今のままじゃ、気持ちが整理できないんだもん
まぁ、我は消すのが仕事だから、何でもいいのだがね
……お願いします
うむ。では消して進ぜよう
ありがとっ! ウリエル様!
私は両手を握り合わせ、祈りのポーズでウリエルに感謝する。
うむ
(なんだ、なんでも破壊していけば喜ばれるではないか、人間って簡単だな)
この決断が、後の私の人生を大きく変えていくことになるとは、この時はまだ知らなかった。