秋! 走って! 乗り遅れる!

 改札を通った瞬間、電車が発車するアナウンスが流れた。

お、おいっ! 危ないから一本遅らせようぜ!?

 秋の手をとり、駆け出す私。

だって、間に合いそうじゃん!

  階段を駆け下りながら秋に声を掛ける。

ちょ、振り向いてたら危ねーよ!?

きゃっ!!

 その時に私は、最後の一段で足を踏み外してしまった。

杏月ちゃん!!

 咄嗟に私のお腹に手を回し、支える秋。

うわあああ!?

 転倒しかけた私の背中は、気付いた時にはもたれ掛かるように秋の胸の中にあった。

あう……

ダメだよ

 電車の扉が閉まり、私達をホームに残したまま発車した。

心配させないで

……

 彼はそのまま、後ろから私を抱き締めた。

え……

ちょ、秋……痛いよ

わっ!

 彼は真っ赤になった私を離し、飛び退いた。

ああ、ゴメンっ! ついっ

こ、こんなことされちゃ誰でも勘違いするよっ! よくないと思う!

……ちがうんだっ!

違わなくないっ! 中学の時も女子からいっぱい告白されてたじゃん! こうゆうのは優しさの度を越えてるんじゃないかなっ!

 すると秋は、俯いたまま呟く。

……だけ

杏月ちゃんだけだから!

 誰もいなくなったホームで、彼の声だけが響く。

……でも、今は好きな人いないって……

オレは……!

オレは杏月ちゃんが……ずっと好きだったんだ

うそ……

忘れられなかった

今でも好きなんだ!

オレと付き合ってくれ!

 二度目の告白。
 秋にとっては初めての告白。

 その言葉は、ホームだけでなく私の頭の中で、ずっと響いていた……。

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