けど、秋みたいな優しい人には私なんかもったいないよね……

じゃあ、消すか

いやいや、別に黒歴史じゃないから!

消したい、壊したい、うずうずするのだ

中毒症状みたい……

 秋と再会した翌日のこと。

 私の通う高校に向かう道は、ゆるやかな坂が続く。
 枝を伸ばした桜並木が豪勢な春色を演出していた。

 四月の少し肌寒い空気に肩をすくめながら、破壊天使ウリエルと坂を上っていく。

あっ、ごめんなさい!

 ぶわっと頭を下げる私。
 ウリエルと話してよそ見をしていたせいで、人とぶつかってしまった。

いや、こっちこそ

 振り向いた彼は、堀坂誠人(ほりさかせいと)くんだった。
 学校でもファンクラブまであるのではと噂の、クール系男子。

あ、堀坂くん……

いえ、すみませんでしたっ

 そそくさと退散する私。

 告白の事実は消えてるだろうけれども、覚えてる私としては顔を合わせづらいの。

もうっ! ウリエルのせいでぶつかったじゃないっ!

ふむ……。では、これからは半透明で憑いていこう

よし

うはっ、もう幽霊のそれですねっ!

 ちなみにウリエルの姿は私以外には見えないので、傍から見ると私は独り言を言ってるようになっている。

……誰だっけ?

 堀坂誠人はその光景を遠目で見て、一緒にいた男友達に呟いた。

あれ? 誠人、放課後毎日のように会ってた子じゃないの?

いや、知らない

とりあえず、あれだけデカい独りごととか、面白そうな子だねー

……そうか? 怖いだろ

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