ちょっと時間あるかなっ?

あるよー! フタバでもいくか?

オレが西高通ってるって、よく覚えてくれてたね!

卒業式んとき言ってたじゃん

 卒業式でもぼっちだったけど、最後に声を掛けてくれた秋を覚えている。

 中学一年の頃は隣の席だったり結構仲良かったっけ。

 やんちゃで喧嘩の絶えない秋は、怪我ばっかりしてた。


 中学の頃の話で花が咲く。
 あいつは今は何してるだとか、あいつらは結局付き合っただとか。
 二年になってからの出来事はよく知らなかったけど、私ももっと学生生活をエンジョイしてればよかったと後悔ばかりが押し寄せる。

ふう……

 てか、お茶しに来ただけなのに、普通にパスタとか頼んでしまった私。

 友達とカフェなんて来た事ないから色々間違えた。

 お昼にお弁当もしっかり食べたからお腹いっぱいだけど、残したら失礼だし。


 恥ずかしいことをしてしまった……。

もしかして、お腹いっぱい?

 テーブルに肘をつき、私の顔を覗き込む秋。

あ、ううん、大丈夫。食べる

 こやつ、読心術の使い手か。
 はたまた私がサトラレか。

普通の人間だ

 いや、あんたに聞いてないけど。

体調悪いの?

 どうだろ、そういえば少し喉が痛むような。

 まあここんとこ堀坂くんへの告白続きで、緊張とかで体力削ってたから体調も崩すわ。

少し喉が痛いぐらいで、寝たら治ると思う

テイクオフできるかな?

テイクアウトね

 飛んでどうする。

残していいよ。オレ食べるから

 秋は私からフォークを奪い、パスタを口に入れる。

あ、ありがと。なんか、照れる……

いや、わりぃ勝手に

 こうゆう気遣いが出来るところ、素敵だなー。
 私も見習おう。

秋は好きな人とかいるの?

えっ……!?

今は……いないかな

 目を逸らし呟く秋。

そか……

 少し期待した自分がいた分、少し胸が痛む。
 あれから三年以上は経っているんだ。
 まだ私の事が好きな訳はないか。

で、杏月ちゃん、本当のところ、今日はなんで会いにきてくれたのかな?

ほんと、なんとなくなのっ!

あははっ! りょーかいっ!

じゃあさ、今度はオレから会いに行っていいかな?

 また私の顔を覗き込む秋。

えっ……

 秋が過去、私の事好きだったことを知ってる分、複雑な気持ちだ。
 また好きになってもらえるかもしれない。
 そしたら彼氏ゲット……か。

 でも、秋はきっと――いや、凄くモテそうな素敵な人。
 私なんかより可愛くて性格も良い女子と付き合ったほうが秋のためな気がする。

や、質問じゃねーな。宣言だ! 今度はオレから会いに行くから!

仕返しだっ!

 ビシッとフォークを私に向けて、無邪気な笑顔でそう言い放つ秋。

ちょっ、フォーク危ないから

だめ……?

……わかった

よしよし、良い子だ!

 そう言って秋はフォークを置き、私の頭をわしゃわしゃと撫でる。

むう……

 このセロトニン男め。

 宮川秋。
 彼の事をもっと知りたいと思った、とある放課後の出来事だった。

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