小屋から出てきた男性は誰なんだろう?
確かギーマ老師は1000歳以上のご高齢と
聞いていたんだけど、
この人はそこまでの年齢には見えない。
お弟子さんとかご子息とかなのかな?
小屋から出てきた男性は誰なんだろう?
確かギーマ老師は1000歳以上のご高齢と
聞いていたんだけど、
この人はそこまでの年齢には見えない。
お弟子さんとかご子息とかなのかな?
クレア!
テメェ、何をしにきやがった?
……そんなことよりも、
相変わらず変な格好ね。
放っとけ!
お前なんかにこの超絶レベルの高い
ファッションセンスが
理解できて堪るかよっ!
――っていうかさ、
『変な格好』はねぇだろ?
個性的とか前衛的とか
言い方ってもんがあるだろっ!
回りくどいのは嫌いなの。
時間の無駄でしょ?
どこまでも沈着冷静なクレアさん。
ただ、言っていることが
ストレートすぎるような気は
僕もするけどね……。
……ったく、お前は変わらねぇな。
小屋から出てきた人は肩を落とし、
深いため息をついた。
そのあと、視線を僕たちの方へ向けてくる。
んで、一緒にくっついてきた
こいつらは何者だ?
少し前に通信魔法で
連絡したでしょ?
もう忘れたとか、
ボケたんじゃないの?
――っっっ!
いい加減、俺も怒るぞっ?
ぶっ殺されたいかっ?
本気でやるのなら、
受けて立つけど?
年寄りの冷や水って言葉、
教えてあげましょうか?
…………。
やれやれ……。
っとに、気の強い女だぜ。
誰に似たんだか……。
…………。
小屋から出てきた人は、
まだ何かブツブツと愚痴をこぼしている。
ちなみにクレアさんの性格が
誰に似ているのか、
なんとなく想像がつくなぁ……。
やっぱり使い魔さんって、
ご主人様に似るものなのかな?
こいつらが弟子入り希望者なのか?
確か2人って聞いてたが?
ミューリエが直前に1人、
追加したのよ。
2人も3人も、変わらないでしょ?
ミューリエも勝手なヤツだ。
まぁ、アイツがやったことなら
仕方ないか……。
っ?
女王様がやったことだと知ったら、
やけに折れるのが早い気がする。
クレアさんの時と反応が全然違うなぁ。
かなり古くからの知り合い同士みたいだし、
何か特別な感情でも持っているのかな?
僕が色々と考えながら
小屋から出てきた人を観察していると、
不意に目が合ってしまった。
うあ……ちょっとだけ気まずい……。
お前、名前は?
あ、えっと、トーヤです。
よ、よろしくお――
下らん挨拶はいらねぇ!
ヒッ!
言葉を途中で遮られ、怒られてしまった。
あまりの大声と迫力に体がビクッと震え、
心臓が止まりそうになってしまう。
この人、ちょっと怖い……。
テメェらはっ?
カレンです。
セーラですぅ。
アエットトーヤ、カレン、
セーラだな。
あのっ!
僕の名前は『トーヤ』です。
っ!
だったらもっと自信を持って
ハッキリ言いやがれっ!
ウジウジすんなっ!
う……。
返事しろっ!
は、はいぃっ!
すでに何度も雷を落とされている。
まだ出会ったばかりなのに……。
うぅ、泣きたくなってきたよぉ。
俺はギーマだ。
あの、すみません。
ギーマ老師は1000歳を超える
ご高齢だと聞いていましたが?
あぁ、その通りだが?
ても見た目がお若いので……。
その言葉を聞くと、
ギーマ老師は口を開けたまま唖然としていた。
そして気だるそうにしながら首を傾げる。
お前ら本当に魔族か?
外見で年齢を判断するとか、
人間じゃあるまいし。
魔族なら魔法力で外見を
いくらでも変えられるだろうが。
知ってるだろ?
あ、そういうことですか……。
世間に知れている姿は
こっちなんでな。
それにジジイの格好だと、
このハイセンスな服も似合わん。
その変な格好のためだなんて、
ホントに魔法力の無駄遣いよね。
テメーは黙ってろ!
俺は無駄だなんて
思ってねーからっ!
ク、クレアさんも
ツッコミが厳しいなぁ。
――んで、薬草師は誰だ?
僕です……。
ほぉ、テメェか。
もう1人は医者だとか
聞いているが?
それは私です。
……じゃ、
追加になったってのはセーラか。
お前のジョブは? 学者か?
私は武器職人ですぅ。
それを聞いたギーマ老師は軽く仰け反った。
そうだよね、
武器職人が薬草師の修行に来るなんて
普通は思わないもん。
はぁっ!? 武器職人だとっ?
……もしかして転職か?
私はトーヤくんの持っている武器の
性能を確かめたくて
ついてきただけですぅ。
彼の持つ武器は
私が作ったものでしてぇ。
……ふーん、あっそ。
興味ないな。
それじゃ早速トーヤには
調薬してもらおうかな。
カレンはその薬を使って
俺の治療をしてみな。
セーラは適当に2人を手伝え。
何かの病気なんですか?
知らねぇよ。患者が
『自分はナントカ病です』なんて
言うかよ?
では、診察をさせてもらっても
いいですか?
あぁ、自由にやってみな。
カレンはギーマ老師の診察を始めた。
いつものように診察魔法を使って
体の状態を調べていく。
やっぱりご高齢だから、
あちこちに病気とか怪我とかがあるのかな?
腰とか膝とかそういう痛みに効く薬なら、
里のお年寄りたちに
よく作っていたから得意だ。
…………。
あれ?
診察を続けているカレンの表情は
なぜか曇っていた。
かなり重い病気でも見つけたのだろうか?
それから程なく彼女は
診察魔法を終えて大きく息をつく。
どうだった?
おかしいわ……。
ギーマさん、
どこにも異常がないの。
頭には明らかに
異常があるでしょ?
テメーは黙ってろって
言ってるだろうがっ!
何の病気なのかしら?
それとも怪我?
カレンは俯いて考え込んでしまった。
そして低く唸りながら
結論を出せないままでいる。
しばらくしてそれを見かねたのか、
ギーマ老師は僕の方を見て口を開いた。
トーヤ、お前は何か分かるか?
いえ、診察は
僕の専門外なので……。
…………。
ギーマ老師は鋭い目つきで僕を一瞥した。
氷のように冷たくて、蔑むような目。
こちらを睨んだのは一瞬だったけど、
その印象が強くて目の奥にずっと残っている。
な、なんだろう……すごく胸が苦しい……。
……なるほどな。
テメェらのレベルが分かったぜ。
トーヤもカレンも
出直してきやがれっ!
っ!?
その怒りに満ちた声を聞いた瞬間、
頭の中が真っ白になった。
え……あ……そん……な……。
次回へ続く!