その後、僕はカレンと一緒に王室へ行き、
女王様に自分の意思を伝えた。

また、カレンと一緒に行きたいということを
話したら、
笑顔で賛成してくれた。

ただ、色々と準備が必要だということで、
旅立ちは2週間後ということになった。





――そしてほかの薬草師への引き継ぎや
身の回りの整理などに追われているうち、
あっという間に2週間は過ぎたのだった。

王城の門の前には女王様やデリンさん、
レインさんが見送りに来てくれている。


タックさんは常闇の森から戻ってすぐに
平界へ戻ってしまったので、
この場にはいない。
なんだかんだで忙しい人だからなぁ。

なお、セーラさんは数日前から
自分のお店に戻ったまま。
お別れを言いたかったんだけどなぁ……。
 
 

ミューリエ

では、トーヤ。
これが紹介状だ。
ギーマに会ったらこれを渡せ。

トーヤ

分かりました。

 
僕は女王様から封筒を受け取った。

そこには王国の紋章がデザインされた封蝋と
女王様直筆のサインがある。
 
 

レイン

2人とも、
しっかりやんなさいよ?

トーヤ

はいっ!

カレン

お世話になりました。

デリン

トーヤ、
中途半端で帰ってきたら
その時は直々に殺してやる。

デリン

覚悟しておけっ!

トーヤ

えぇっ!?

デリン

……フッ、冗談だ。
だが、そのつもりで頑張ってこい。

トーヤ

デリンさん……。

トーヤ

お世話に……ぐすっ……
なりました……。

 
また勝手に涙が出てきちゃった……。

デリンさんは僕にとって
アレスくんと同じくらいに大恩人だ。

今の僕があるのはデリンさんのおかけだもん。



すごく……悲しい……寂しいよ……。
 
 

デリン

ふんっ、泣き虫め。
それも修行を終えるまでには
直しておけよ?

 
デリンさんは頬を緩めつつ僕の背中を
強く叩いた。
ちょっと息が苦しくなったけど、
おかげで気合いは入った。


そういえば、デリンさんはいつもこうやって
僕を元気づけていてくれたんだよなぁ……。



最後くらいは笑顔で返事をしなきゃ!
 
 

トーヤ

はいっ! デリンさんも
無理をしないでくださいね?

デリン

……分かっている。

カレン

ところで女王様、
ギーマ老師はどちらに
住んでいらっしゃるのですか?

カレン

まだ教えていただいていませんが?

ミューリエ

案内人を用意している。
もうすぐ来るはずなのだが。

 
その時、不意に目の前の空間が揺らいだ。

どうやら誰かが
転移魔法を使って移動してくるようだ。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 

クレア

…………。

ミューリエ

おぉ、来たようだな。
遅いぞ、クレア。

クレア

そうかしら?
約束していた時間
ピッタリのはずだけど?

 
現れたのはクレアさんだった。
見た限り、すっかり病気は完治したみたいだ。
 
 

ミューリエ

ギーマのところには
クレアが転移魔法で
連れていってくれる。

カレン

では、お願いしますっ!
クレアさん!!

クレア

了解よ。

クレア

さぁ、転移魔法を使うから、
トーヤも私のすぐ隣に――

待ってくださ~いっ!

 
僕がクレアさんに歩み寄ろうとした時、
どこからか声が聞こえてきた。

振り向いてみると、
門の方から誰かが走ってくる。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 

セーラ

トーヤくぅん、カレンちゃぁん!
待ってくださいよぉっ!

トーヤ

セーラさん?

 
声の主はセーラさんだった。
見送りに来てくれたんだと思ったんだけど、
何か様子がおかしい。

背中にはハンドアックスや大きな荷物袋。
どこかへ旅にでも行くかのような格好だ。
 
 

セーラ

私もご一緒させてくださいぃ!

トーヤ

えぇっ!?

セーラ

約束したじゃないですかぁ。
私にフォーチュンを使うところを
見せてほしいってぇ。

セーラ

トーヤくんがどこかへ行くなら、
私も行きますよぉ。

トーヤ

セーラさん……。

セーラ

よろしいですよねぇ、女王様ぁ?

ミューリエ

……ふっ、分かった。
好きにしろ。

トーヤ

いいんですかっ!?

ミューリエ

別に構わん。
ギーマとは分野こそ違えど
同じ職人。
気が合うかもしれんしな。

クレア

……じゃ、あなたも
こっちに来て。

セーラ

はいですぅ!

 
セーラさんが強引というか、
女王様が自由すぎるというか……。
い、いずれにしても、
セーラさんが一緒なら心強いけどね。



僕たち3人はクレアさんのそばに近寄った。

するとクレアさんは魔法力で
地面に魔方陣を描き、
転移魔法の詠唱を始める。
 
 

ミューリエ

元気でな!

 
女王様が笑顔で声をかけてくれたのと
ほぼ同時に世界は大きく歪んだ。

そして一瞬で景色は大きく変化する。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 

 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
そこはどこかの山奥らしかった。
周りは高い山に囲まれていて、
空気は薄い感じがする。

植物は背丈の低い草が中心で、木は少ない。
 
 

トーヤ

これは高山植物。
つまり標高が
かなり高い場所ってことか……。

クレア

あそこにある庵に
ギーマが住んでいるはずよ。

 
クレアさんが指差した先には
古めかしい木造の小屋が建っていた。

その手前には整備された庭と井戸が見える。
 
 

クレア

それじゃ、行きましょう。

 
そう言ってクレアさんは歩き出した。

僕たちも周りの様子を観察しながら、
あとについていく。


それから程なく僕たちは小屋に辿り着いた。
 
 

クレア

ギーマ、いるんでしょ?
さっさと出てこないと
爆発魔法で
小屋ごと吹き飛ばすわよ?

トーヤ

いぃっ!?

カレン

なっ?

セーラ

はわわぁっ!

 
む、無茶苦茶だなぁ、クレアさん。
いきなりそういうことを言うなんて……。

冗談なのかなと思ったんだけど、
手のひらには炎を浮かべているから
本気っぽい。
 
 

おいっ、とんでもないことを
さらっと言いやがって!
頭おかしいんじゃないのかっ!

クレア

頭のおかしさは、
あなたほどじゃないわ。

 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 

ギーマ

やれやれ……。
その声と横暴な性格、
クレアしかいないか……。

 
そう言いながら小屋から若い男性が出てきた。
服はヨレヨレで、赤いフードを被っている。
今まで寝ていたのだろうか?

その人は僕たちの方をチラリと見たあと、
大きなアクビをした。



――こ、この人がギーマ老師……なのかな?
 
 

 
 
 
次回へ続く!
 

第22幕 王城からの旅立ち

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