あぁ……なんだか温かい……。
春風のような心地よさだ。
少しずつ全身に力が戻ってくる。
あぁ……なんだか温かい……。
春風のような心地よさだ。
少しずつ全身に力が戻ってくる。
あ……。
トーヤっ!
目を覚ましたのねっ?
カレン?
僕の目の前にはカレンの顔があった。
今まで涙を流していたのか、頬は濡れている。
背中には地面の感触があり、
どうやら僕は
仰向けに寝かされているようだった。
ゆっくりと上半身を起こし、
カレンを見つめる。
僕、どうなったの?
バカ! 無茶しないで!
死にかけてたんだからねっ?
トーヤくんはカレンちゃんを庇って
瀕死の重傷を負ったんです。
でもその直後にですねぇ――
これが懐から出ているのが
見えたんですよぉ。
セーラさんはそう言って、
僕の前に何かをを差し出した。
それは王城を出る時に
レインさんから受け取った封筒だった。
その封筒を見て思い出したの。
レインさんが
『もしもの時には開けなさい』って
言っていたのをね。
すっかり忘れてた……。
で、中には何が入っていたの?
結界魔法の護符が入っていたのよ。
それを発動させたおかげで、
こうして助かったってわけ。
そのあとでカレンちゃんが
急いでトーヤくんに
回復魔法をかけたんですぅ。
よく見てみると、
確かに僕たちを中心とした半径数メートルの
半球状の範囲が、
黄色い光の衣で包まれていた。
さらに僕はデビルペッカーたちから
かなり激しい攻撃を受けたはずなのに、
体にはほとんど痛みがない。
そうだったんですか……。
だけど僕、
これじゃ回復担当失格だな……。
まだピンチに変わりないわ。
今もデビルペッカーは
結界の向こう側で、
あたしたちを狙ってるから。
カレンは眉を曇らせながら見上げた。
依然として上空には
デビルペッカーの群れがいる。
数が増えるのは止まったみたいだけど。
結界が発生したことで、
今は旋回しながら
こちらの様子をうかがっている。
――でも、いつまた攻撃を
再開させてくるか分からない。
状況が変わらなければ、
業を煮やして
総攻撃をしてくることだってあり得る。
多少の犠牲を覚悟の上で……。
デビルペッカーたちを
倒したわけじゃないんだもんね。
それにね、
トーヤに回復魔法を使ったから
あたしの魔法力は残りわずかなの。
使える魔法には限りがあるわ……。
…………。
……ゴメンね。
なんで謝るのよ?
トーヤが庇ってくれなかったら、
私がやられてたかも
しれないでしょ?
……アリガト。
嬉しかったから、
特別に95点をあげるっ♪
カレン……。
でもでもぉ、
結界魔法が効力を失ったら
私たちはおしまいですぅ。
そうですね、
こうして時間稼ぎが
できているうちに
危機を脱する方法を考えないと。
やっぱりトーヤくんが
兄貴を呼んでくるしか
ないですかねぇ?
タックさんかぁ……。
この場にいてくれたら心強いだろうなぁ。
知識は豊富だし、機転も利くし。
色々な作戦だって思いついてくれるはずだ。
冷静に事態を観察して、最善の策を――
あっ!
どうしたの、トーヤ?
急に大きな声を出して?
タックさんなら、
森で起きているこの異常に
気付くんじゃない?
エルフ族は森の異変に敏感だし、
トレント族の魔樹と一緒なら
むしろ気が付かない方が
おかしいよっ!
そっか、確かにっ!
だからヘタに動かず、
結界の中で助けを待つという
選択肢もあるよっ!
なるほどぉ、そうですねぇっ!
ただ、結界が破られる前に
助けに来てくれるかどうか……。
……そうだ、カレンの言う通りだ。
タックさんが今、森のどの辺にいるのか?
どんな行動をしているのか?
今の僕たちには状況が分からない。
結界がどれだけデビルペッカーの攻撃に
耐えられるのかも分からない。
カレンちゃん、
どうしましょうかぁ?
セーラさんの問いかけに、
カレンは腕組みをして考え込んだ。
それから十数秒ほど経ったあと、
目をカッと見開いてゆっくりと口を開く。
――ここで助けを待ちましょう。
タックさんが
来てくれることを信じて。
少しでも長く結界を守ることを
最優先に行動しましょう!
承知ですぅ!
うんっ!
スタッフ・スリングの遠隔攻撃と
バトルアックスの巻き起こす竜巻。
それらで結界に体当たりしてくる
デビルペッカーの数を
減らしましょう。
あたしは少ない魔法力でも発動する
攻撃魔法を使っていくわ。
お任せをっ!
じゃ、僕は石を拾い集めるよ。
結界から出ないように
気をつけてね?
うんっ!
こうして作戦が決まり、
僕は結界内に落ちている石を
集めることにした。
でもここは近くに岩場がないからなのか、
手頃な石がほとんど見当たらない。
あるのは木の枝や葉っぱばかりだ。
しかもたくさん植物が生えているから、
それらを退かさないと地面が見えない。
――あれ?
もしかして、これって……。
僕はその場に生えている草を
かき分けている時、
あることに気がついた。
さらに冷静になって周りをよく見てみると、
色々と使えそうなものが
たくさんあると分かる。
それらを頭の中で整理していくと……。
うん、いけそうだ!
これは起死回生の一手になるに違いないっ!
僕はそう確信し、
そのための行動をすることにした。
希望の光は僕たちの足下にあったんだ!
次回へ続く!