物凄い数のデビルペッカーに囲まれ、
絶体絶命の大ピンチ!

僕たちはどうすればいいんだろう……。
 
 

カレン

この場はあたしが食い止めるから、
トーヤはタックさんを探して
呼んできて。

トーヤ

えっ?

セーラ

私もカレンちゃんの
サポートをしますぅ!

カレン

ありがとうございます、
セーラさん。

トーヤ

そんなっ!
女の子を残していくなんてっ!
そんなことできないよっ!

カレン

適材適所ってやつよ。
トーヤはあたしたちと同等に
戦えるの?

トーヤ

そ、それは……。

 

確かに僕は攻撃するのが苦手だ。
カレンの言う通りにするのが
賢い選択かもしれない。

僕がカレンに視線を向けると、
彼女はフッと頬を緩めながら
穏やかに僕を見つめる。


ただ、僕にはその顔が
死をも覚悟しているような、
もはや自分が生き残ることを
諦めているかのように感じられた。



――くそっ、僕にもっと戦う力があればッ!

でも、ないものを求めても仕方がない。

だったら、
力がなくてもやれることをやるだけだ!
 
 

カレン

ほらっ、早く行きなさいっ!
もたもたしている暇なんて
ないんだからっ!

トーヤ

嫌だっ!
僕はカレンのそばを
離れたくないっ!
カレンを守るんだっ!

 
 
僕はカレンの前に立ち、両手を広げた。

カレンとセーラさんは目を見開いて
こちらを見ている。
 
 

カレン

トーヤ!?
なんのつもりよ、それっ?

トーヤ

僕がカレンの盾になる。
少しは役に立てるはずだよ。

カレン

バカなことを言わないでっ!
死ぬ気っ!?

 
 
声を荒らげて僕を睨み付けるカレン。

そんな彼女を僕は真っ直ぐに見つめ、
満面に笑みを浮かべる。
 
 

トーヤ

……死ぬときは一緒だよ。

カレン

っ!?

カレン

トーヤ……っ……!

 
 
カレンは声を震わせ、手で口元を押さえた。
瞳は涙で潤み、軽く鼻を啜っている。

……あはは、ちょっと泣かせちゃったかな?
 
 

トーヤ

セーラさん、
巻き込んでしまってゴメンなさい。

セーラ

……ふふ、いいんですよぉ。
事ここに至ったからには、
最期までお付き合いしますぅ。

 
 
セーラさんは穏やかに微笑み、
バトルアックスを構えて意識を上空へ向けた。

一方、カレンは魔法力で
空中に魔方陣を描いていく。
何かの魔法を使うようだ。
 
 

カレン

あたしたちだって、
簡単にはやられないんだからっ!
最期の瞬間まで足掻いてみせるっ!

セーラ

はいですぅっ!
希望は最期まで捨てませんっ!

トーヤ

ぼ、僕だって!

 
 
僕は素速く小石をいくつも拾って
ポケットへ入れた。
その1つをフォーチュンにセットし、
柄を強く握る。


――そうだ、これくらいで諦めるもんか!
 
 

クェエエエエエェーッ!

 
 
デビルペッカーたちが一斉に
襲いかかってくる。

その一匹が射程に入った瞬間、
僕はフォーチュンを振り下ろした。
 
 

トーヤ

行っけぇえええええぇっ!

 
 
小石は見事に命中し、まずは一匹倒した。
すかさず僕は次の攻撃の準備をする。

すると僕と入れ替わるように、
カレンが魔法を発動させる。
 
 

カレン

氷の針(アイスニードル)!!!

 
 
魔方陣から無数の氷の刃が飛び出し、
デビルペッカーたちを串刺しにしていった。

少しでも傷を負えば、
たちまちそこから体が凍り付いて絶命に至る。


――カレン、
こんなに強力な攻撃魔法が使えたんだね。
 
 

セーラ

私もとっておきの技を
見せちゃいますぅ。

 
 
セーラさんはバトルアックスの柄の
中央部分を持ち、
風車のようにグルグルと回転させ始めた。

その勢いは凄まじく、
空気を切り裂く音が辺りに響き渡る。
 
 

 
 
やがてそこへ近寄った個体は渦に吸い込まれ、
ことごとく切り裂かれていった。


――でもそんな僕たちの攻撃も
敵の全体には及ばない。

後ろから次々に迫るデビルペッカーから
激しい攻撃を受ける。
 
 

クェエエエエエェーッ!

トーヤ

ぐぁあああああぁっ!

カレン

きゃぁっ!

セーラ

んにゃぁっ!

 
 
全身に衝撃と強烈な痛みが走った。
それは今も続いている。


 
 



 
傷口は熱いのに……
身体全体が寒くなってくる……。


あ……目の前も……暗くなってきて……。

音もだんだん……かすれて……。




うぅ……カ……レン……。
 
 

トーヤ

――くっ!

カレン

っ! トーヤっ!?

 
 
僕は最後の力を振り絞り、
カレンを抱きしめた。


これなら僕が意識を……失っても……
たとえ……命が尽きても……
カレンを少しは……守れる……。



今も僕の背中には衝撃が伝わってきている。
きっとデビルペッカーが
体当たりをしてきているのだろう。


――不思議と痛みは感じない。

痛覚が麻痺しちゃったのかな?
 
 

カレン

トーヤ、
しっかりしなさいよっ!

トーヤ

…………。

カレン

冗談はやめてよっ!
……いや……嫌だからね……っ?
こんなの嫌だよぉ~ッ!
目を開けなさいよっ、バカッ!!

 
 
カレンが何か言っている……。
でもなぜだか、聞き取れない……。


あぁ……すごく眠たくなってきた……。









もう体に力が入らないや……。
 
 

 
 
 
次回へ続く……。
 

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