※キャラクターのアイコンをお借りしている為、
本来の設定してある容姿、瞳や髪の色の違いがある事をご了承ください。
古都助の設定上では、
☆ユキ→蒼い髪にブラウンの瞳。
☆ルイヴェル→銀髪に深緑の瞳。(眼鏡&白衣)
☆セレスフィーナ→金髪に深緑の瞳。(白衣)
上記のものが正しいものとなります。
また、これ以外のキャラも異なる点のあるアイコンをお借りしている為、違いがあります。
※キャラクターのアイコンをお借りしている為、
本来の設定してある容姿、瞳や髪の色の違いがある事をご了承ください。
古都助の設定上では、
☆ユキ→蒼い髪にブラウンの瞳。
☆ルイヴェル→銀髪に深緑の瞳。(眼鏡&白衣)
☆セレスフィーナ→金髪に深緑の瞳。(白衣)
上記のものが正しいものとなります。
また、これ以外のキャラも異なる点のあるアイコンをお借りしている為、違いがあります。
ルイおにいちゃ~ん!!
狼王族(ろうおうぞく)の王が住まう場所、ウォルヴァンシア王宮。
愛らしい少女の声が、次第にルイヴェルの仕事場である王宮医務室に近くなってくる。
彼は羽ペンの動きを止め、席を立った。
ルイおにいちゃ~ん!!
戻ったか……。だが、ユキ。毎回注意している事だが、建物の中を走るのは王兄姫として……。
ルイおにいちゃ~ん!! 抱っこ~!!
……。
この国の王兄殿下と、異世界の『地球』と呼ばれる地の女性との間に生まれた、幼い姫君、――ユキ。
王兄殿下の娘としての心構えを注意しようとしたはずなのに、今回も幼い少女の無邪気な抱擁に打ち勝てず、ルイヴェルはその小さな身体を自分の腕に抱き上げた。子供特有の甘い匂いと、心落ち着く温もり。
あぁ、また負けた……。この天然小悪魔め。
ルイおにいちゃん、ユキね~、幼稚園で素敵なプレゼントを作ったの~!
ほぉ……。見せてみろ。
ルイヴェルからそっと下ろして貰うと、幼い王兄姫殿下ことユキ・ウォルヴァンシアは、手に持っていた紙バッグをソファーに置き、その中からラッピングされたプレゼントを取り出した。
どちらも中身は見えないように花柄の小さな箱に入っているが、さて、どんなプレゼントを作ったのか。
幾つかある内のひとつを手に取り、ユキは覗き込んできたルイヴェルに向かって天使のような笑顔でそれを差し出した。
はい! ルイおにいちゃん、どうぞ!!
我がウォルヴァンシアの王兄姫殿下から贈り物を頂けるとは、このルイヴェル・フェリデロード、光栄の極み。有難く拝見させて頂きましょう。
などと、王兄姫殿下と臣下ごっこの体(てい)でわざとらしい礼の言葉を述べると、ルイヴェルは箱のラッピングを解いて、蓋を開けた。
すると、そこには……。
箱の中にたったひとつだけ入っていた、手作りの花。まるで隣に座っている幼子と同じように、可愛らしいプレゼントだ。
それを手に取り、ルイヴェルは幸せそうに微笑むと、キラキラとした目で感想を聞きたがっている王兄姫に満足顔を向けた。
お前にしては、上手く作れたものだな。褒美に頭を撫でてやろう。
わぁ~い! ルイおにいちゃんに褒められた~!!
さっきとは反対に、今度はルイヴェルが上から目線の褒め言葉を口にし、幼い少女の頭をよしよしと撫で始める。子猫のように甘えてくるユキの存在は、ルイヴェルにとって本当の妹のようだ。
普段は異世界で暮らしている為か、会える日も限られており、色々と不満も多いルイヴェルだが、こうやって元気な顔が見られると、面倒な全てが頭の中から吹き飛んでいく。
ルイヴェル、仕事の追加書類が……。あら、ユキ姫様お帰りなさいませ。お戻りになっていらっしゃったのですね。お元気でございましたか?
ユキがプレゼントのお花を作る過程を楽し気に語って聞かせていると、何枚かの書類を手に美しい白衣の女性が入ってきた。
まるで女神様のように麗しいその女性の名は、セレスフィーナ。二卵性の双子の弟であるルイヴェルと共に、このウォルヴァンシア王宮の医師を務めている。
彼女もまた、ユキを可愛がっている者の一人だ。
お帰り、セレス姉さん。書類は俺の方で処理しておこう。それよりも、見てくれ。ユキが自分の手で作った物だ。なかなか上手く出来ているだろう?
あら! とても可愛らしいお花ですわね!!
セレスお姉ちゃんのはね~、こっち!! ピンクのリボンをした箱の中にプレゼントがあるよ~!!
まぁ!! 有難うございます、ユキ姫様!!
小さな箱を受け取ったセレスフィーナもまた、双子の弟と同じように心から喜びの表情を見せる。
仕えている王の姪御という立場以上に、王宮医師の二人はユキを猫っ可愛がりしては、その成長を喜んでいるのだ。小さな少女が作った贈り物。
中身をわかっていても、やはりわくわくしてしまうセレスフィーナである。
まぁああああっ!! なんて綺麗な薔薇の花でしょう!! ルイヴェル、見てちょうだい。ユキ姫様が手ずから作ってくださった贈り物!
俺の物よりも凝った作りをしているな……。
ふふ、ルイヴェルったら、羨ましいの?
その程度の事で人を羨むほど小さくはない。
絶対悔しがってるわねぇ。
冷静沈着で物事をそつなくこなすルイヴェルだが、こういう時に少し子供っぽい面を見せるのもまた、彼が完全な存在ではないと証明しているかのように微笑ましい。
双子の姉と自分の花を見比べ、あきらかに気合が入っているのはセレスフィーナの薔薇の方だ。
しかし、幼子は優劣や差をつけたつもりはないらしく、無邪気な笑顔でこう言った。
あのね、あのね!! ユキ、全部一生懸命作ったの~!! ルイおにいちゃんやセレスお姉ちゃん達の事をいっぱい考えて、い~っぱい、愛情を込めて作ったの~!!
そうか……。その中で一番大きな愛は誰に対してだ? ん?
んとね~、皆だよ~!! 皆、み~んな、だ~い好きなの~!!
ほぉ……。全員同レベルか。
ルイヴェル……、大人げない顔をしないの。もう……、それでなくても、レイフィード陛下とユキ姫様を巡って子供みたいな小競り合いをしているっていうのに……。はぁ、困った子ね。
ユキの答えに満足出来ないのか、ルイヴェルがその目を不満そうに細め、眼鏡の中心を調整しながら小声でブツブツとそれを零している。
ちなみに、レイフィードとは、このウォルヴァンシア王国の現国王陛下であり、ユキの叔父だ。
国民や家族、国への愛に溢れた人物だが、ルイヴェルとはある意味で張り合っていると言えるだろう。
にっこりと微笑みながら傍に座っている小さな王兄姫殿下からの寵愛を巡る、子供じみた張り合いを。
これは、そんな王宮医師ルイヴェルと、その姉のセレスフィーナ、そして、幼い王兄姫ユキ達を中心に起こる、ほのぼとした日常を綴っていく物語である。