空を埋め尽くすほどのデビルペッカーの群れ。
こんなの初めて見る。
一気に襲いかかられたら、命だって……。
空を埋め尽くすほどのデビルペッカーの群れ。
こんなの初めて見る。
一気に襲いかかられたら、命だって……。
トーヤはあたしが守ってみせるっ!
カレン……。
カレンの瞳は決意に満ちていた。
強い意志の光を宿し、
デビルペッカーの群れを睨み付けている。
はぁああああぁーっ!
カレンは握りしめたレイピアに
気合いを込め始めた。
次第に刀身が光と闘気を帯びて輝き出す。
さらに彼女の長くて艶やかな髪が
風もないのに大きくなびく。
――これは一体っ!?
セーラさん、
あたしの取りこぼしは
お任せします。
え、えぇ……
それは構いませんけどぉ……
何をするつもりですかぁ?
戸惑いながら問いかけるセーラさん。
するとカレンは視線を上空に向けたまま、
口元を小さく緩める。
……えへへ、奥の手です。
奥の手?
クェエエエエエェーッ!
ついにデビルペッカーが攻撃を開始した。
次々と僕たちに向かって襲いかかってくる。
鋭いクチバシと爪が、
落下するスピードによって勢いを増して迫る。
逃げようにも
おそらく追いつかれてしまうだろうし、
隠れる場所だって近くには見当たらない。
あわわわぁっ!
――っ!
慌てる僕を尻目に、
カレンは迫り来るデビルペッカーを
見据えていた。
そして間近にまで迫った瞬間、
カッと大きく目を見開く。
闘気斬っ!
目にも留まらぬスピードで、
カレンはレイピアを振り上げた。
すると刀身の闘気が放たれ、
そこから細かな光が放射状に分かれて
飛び散っていく。
ギイィイイィッ!
光に触れたデビルペッカーたちは
体が切り刻まれ、
勢いを失って落下していった。
今の一撃だけでかなりの数が戦闘不能になる。
それでも光をかいくぐったヤツらがいて、
僕らのところに迫ってきている。
せいぃっ!
すかさずセーラさんが
残りのデビルペッカーを迎撃した。
ただ、元々の数が多かったせいか、
全てには対処仕切れない。
うくっ!
ひぎゃぁっ!
ぐぅっ!
僕たちは何匹かの攻撃を食らってしまった。
服の一部が筋状に切れ、
傷付いた肌から血が滲む。
でも数を減らせていたおかげで、
受けたダメージの総量はかなり限られている。
樹液ももう少しで必要な量が集まるっ!
それまでの辛抱だっ!
2人とも、この回復薬を使って!
僕はポケットの中から
即効性の回復薬を取り出し、
カレンとセーラさんに手渡した。
これは体力の回復はできないけど、
傷口を塞いだり痛みを和らげたりする効果は
すぐに出るアイテムだ。
助かりますぅ。
トーヤは使わないの?
僕は樹液を集める作業に
集中したいから。
ダメよ、止血くらいはしないと。
それならあたしが手当を――
僕のことは後回しでいいよ。
まだ倒していない
デビルペッカーがいるでしょ?
2人にはそっちの対処を
してもらいたいし。
でも……。
もう少しで終わるから大丈夫。
…………。
……分かった。
でも無理はしないでね?
辛かったら言うのよ?
うんっ。
……ホントは傷口がすごく痛むんだけどね。
だけど我慢できないほどじゃない。
今は目的を果たすのを優先させなきゃ。
クェエエエエエェーッ!
攻撃を加えてきたデビルペッカーのうち、
まだ体力の残っているヤツが
再び上空へ舞い上がった。
そして次の攻撃を加えようと――
……え?
なっ!?
はわぁっ!
僕たちは上空を見上げて愕然とした。
なんとそこにはさっきと同じくらいの数の
デビルペッカーが飛び回っていたのだ。
どうやら増援が加わったらしい。
しかもまだ数は増え続けている感じがする。
どうなってるのよっ!?
誰かが回復させたという
わけではないですよねぇ?
それはないと思いますよ。
地面には倒した個体が
横たわっていますから。
こうなったら攻撃魔法で
とことん倒してやるわっ!
カレン……。
トーヤ、樹液は集まってる?
う、うん。
ようやくだけどね。
これだけあれば大丈夫だと思う。
樹液は瓶を満たすほど集まった。
これで調薬に必要な材料は揃ったはず。
――ただ、状況は決して良くない。
だってこのまま無事に
ここを離れられそうにはないから。
これはかなりマズイかもしれない……。
次回へ続く!