僕たちは地獄茸と悪魔カエデの樹液を
探すことになった。


――まずどちらから採取しようかな?
 
 

トーヤ

カレン、どうしようか?

カレン

そうねぇ、
比較的安全に手に入りそうな
地獄茸から探しましょうか。

トーヤ

分かった。

セーラ

承知ですぅ!

 
カレンの提案に同意した僕たちは、
森の中を歩き回って地獄茸を探すことにした。

少し歩いていくと、
早速、前方には朽ちた倒木が見えてくる。
 
 

トーヤ

2人とも止まって。
この倒木を調べてみるから。

カレン

トーヤ、手伝うわ。

セーラ

私はどんなものか分からないので、
周りを警戒していますねぇ。

トーヤ

お願いしますっ。

 
僕とカレンは倒木に近寄り、
注意深く調べることにした。

地獄茸は倒木の下側や影になっている部分に
生えていることが多いので、
膝をついて覗きこんでみる。
 
 

トーヤ

えーっと、
ここに生えているかな?

トーヤ

…………。

トーヤ

……ないなぁ。

 
やっぱりそう簡単には見つからない。
地獄茸の生育には
ベストな倒木だったんだけど。

今年は暑い日が続いていたから、
多くが子実体にまで成長していないのかも。
 
 

トーヤ

カレン、見つかった?

カレン

ダメね。ハズレみたい。
トーヤの方は?

トーヤ

こっちにもないよ。
……次へ行こう。

 
僕たちは移動を再開した。

靴の裏に感じる地面の感触はフワフワで、
土の状態はいい。
こういう森の倒木に地獄茸はよく生える。

条件は決して悪くないから、
根気よく探せば必ず見つけられるはずだ。






それから程なく、
僕はまた良さそうな倒木を発見した。

今回もカレンと一緒に調べていくけど、
これにも地獄茸は見当たらない。
 
 

トーヤ

こっちはダメみたい。
カレンの方は?

カレン

ちょっと遅かったみたいね。
動物に食べられた跡が残ってる。

トーヤ

そっかぁ。それは残念……。

 
そうなんだよね……。

地獄茸がなかなか見つからないのは、
動物に食べられちゃうことが多いというのも
理由の1つなのだ。
特にカエンネズミが好んで食べる。

ここが食べられちゃっているということは、
ほかの場所もやられちゃっているかも。
残っていてくれるといいなぁ。





その後も僕たちは森の倒木を調べていった。

そして2時間くらい歩き回ったところで、
ようやく地獄茸の群生を発見したのだった。
 
 

カレン

やっと見つかったわね。

トーヤ

うん、良かったよ。

セーラ

これが地獄茸ですかぁ。

 
セーラさんは生えている地獄茸に顔を寄せ、
まじまじと観察した。

地獄茸はカサの部分が炎のように赤い。
しかも触れてみるとほんのりと温かく、
まるで地獄の炎のようだから『地獄茸』と
呼ばれるようになったそうだ。

僕はその倒木に生えていた地獄茸を
全て採取して布袋へ入れた。
結構な量があって、ちょっと重い。
 
 

トーヤ

これだけあれば充分だよね?

カレン

えぇ、大丈夫でしょう。

セーラ

残るは悪魔カエデの樹液ですねぇ。

カレン

うーん、問題はそれよねぇ。

トーヤ

デビルペッカーでしょ?
すばしっこいし、
クチバシと爪の攻撃が
厄介だもんね。

カレン

でも魔樹と戦うよりはマシよ。
あっちは体力があるし、
特殊攻撃も使ってくるから。

トーヤ

タックさんがいてくれて
助かったね。

カレン

えぇ、そうね。
あっちはお任せしてるんだから
デビルペッカーくらいは
あたしたちだけで対処しなきゃ。

セーラ

ではではぁ、
どうしましょうかぁ?

カレン

セーラさんはあたしと一緒に
デビルペッカーを
追い払ってください。
トーヤは樹液を採取してくれる?

セーラ

承知ですぅ。

トーヤ

分かった。

 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 

 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
こうして役割を決めた僕たちは、
悪魔カエデの樹木が立っている場所を探した。

――そして30分後、無事にそれを発見する。


樹高は10メートルほどで、
幹を見上げてみると高い位置に穴がある。

あれがデビルペッカーの巣だ。
 
 

カレン

トーヤ、
あなたのスタッフ・スリングで
巣を狙い撃ちにして。

カレン

デビルペッカーが出てきたら
あたしとセーラさんが迎え撃つわ。

トーヤ

うんっ。

 
僕は背中に背負っていた
フォーチュンを手に取った。
そして近くに落ちていた小石を拾って
それをセットする。


――今回も頼むね、フォーチュン。

僕は柄を両手で握りしめ、
狙いを定めてそれを振り下ろす!
 
 
 
 
 
 
 
 

 
小石は巣のすぐ横にヒットした。

森に大きな衝撃音が響き、
途端にデビルペッカーが2匹飛び出してくる。
 
 

クェエエエエエェッ!

 
彼らは僕らの姿に気付くと、
怒り狂いながらまっしぐらに向かってきた。
 
 

カレン

はぁっ!

 
カレンはデビルペッカーを
充分に引きつけてからレイピアを
振り下ろした。
間髪を入れず、さらに2撃目を繰り出す。

それによってそのデビルペッカーは
瀕死のダメージを食らい、地面に落ちた。



もう1匹はセーラさんが対応。
カレンと同様に引きつけてから、
電光石火の一撃。
 
 

セーラ

せぃっ!

 
下から上へ振り上げられたバトルアックスは
デビルペッカーを一刀両断した。

すごい! 
重い武器なのに軌道が全く見えなかった。
セーラさんって
どれだけ腕力があるんだろう?
 
 

カレン

トーヤ、急いで樹液を採取して!
仲間が集まってくる前に!

トーヤ

うんっ!

 
僕は悪魔カエデに駆け寄り、
持っていたナイフで幹に傷を付けた。

そこから染み出してくる樹液を
瓶に集めていく。


デビルペッカーの叫び声を聞いて、
森の中にいる彼らの仲間が
今もこちらへ向かってきているはずだ。

集団で襲いかかられると厄介だから
一刻も早くこの場を離れたい。
気持ちは焦るけど、
樹液は少しずつしか染み出してこない。
 
 

クェエエエエエェーッ!

 
森中に物凄い叫び声が響いた。

見上げてみると、
いつの間にか上空はデビルペッカーの群れが
覆い尽くしている。
 
 

カレン

な、なんなのよ、あの数はっ!?
見たこともないわ……。

セーラ

はわわぁ、
ちょっと多すぎませんかぁ?

トーヤ

僕もあんな数の群れ、
初めて見たよ……。

 
大抵の群れはせいぜい十数匹程度。
でも空には軽く数十匹はいる。
こんなの完全に想定外だ。


ど、どうすればいいんだろう……?
 
 

 
 
 
次回へ続く!
 

第12幕 材料探しにひと苦労

facebook twitter
pagetop