既に授業中の教室。
教師の声を遮るかのように
ドアが開く。
既に授業中の教室。
教師の声を遮るかのように
ドアが開く。
ん?
……すみません、お腹痛くて保健室に行ってました。
杉浦、もう大丈夫なのか?
はい、なんとか……。
無理するんじゃないぞ。
はい……。
false || false
少女は自分の席に戻る傍ら、
少年の席の横を通る。
そして、
すっ
えっ?
少年とは一切目を合わせず、
二つ折りにした一枚の手紙を
少年の机の上に置き
そして、そのまま通り過ぎていった。
………
少年は手紙を開き
内容に目を通すと
少女の席に目をやった。
………
少女は何事もないかのように
授業をうけている。
どういう……つもりなんだ…?
少年は訝しげに少女を見続けた。
授業も終わろうかと言う頃、少女は手を挙げ
先生、すみません、
やっぱり保健室に行きます。
わかった、無理するな。
少女は教室を後にした。
少年は手紙の事を聞けなくなってしまった。
うぅ……
少女は次第に意識を取り戻し始めた。
どれだけ長い間気を失っていたのだろうか。
何もない暗闇の中
少女は時間の感覚がなくなっていた。
今はいつなの?
起きな……。
……明日菜。
そんなに時間経ってないから安心しな。
まだ1日経ってないよ。
何しに来たの!?
またからかうつもり!?
アタシだけなら良いけど
だいちを巻き込まないで!!
だいちねぇ……。
ゾクッ
せっかくだから、
いいものを見せてやるよ。
何をするつもり……?
自分の目で見ればいいでしょ!
じゃあね!
ちょっと待ちなさいよ!
少女は目の前が明るくぼんやりと
してくるのを感じた。
ここは……
学校の階段の踊場…?
………
眼下には難しい顔で
階段を登ってくる
少年の姿。
だいち……!
……放課後17:00に鏡のある踊り場……。
来たよ、佳子。
少年はさっきまでの難しい顔を緩め
少女に笑顔を向ける。
少年の優しさが垣間見える。
だいちぃ……
突然、少女の入れ物は
ボロボロと涙を流し始めた。
どうしたんだ、佳子!!
ご……ごめんなさい……
試すようなことして……
え……?
え?
なんで?
なんで明日菜がそんなこと言うの?
わたし……
ずっと……
ずっと不安だったの……。
幸せすぎて……。
明日菜の言ってることは間違ってない……。
そうなの、だいち。
私、幸せすぎて……
逆に不安で……
それに、大地もはっきり気持ちを言ってくれなかったじゃない……。
……ゴメン……。
だから、お願い!
今、私と永遠を誓って!!!
少女の入れ物の願いを聞いた少年は
ひと息だけついた後、
あぁ、もちろんだとも!
と満面の笑みで答えた。
……嬉しい!
だいちぃぃ!!
嬉しい!!!
ツヴェルタの言ったことは嘘じゃなかった。
自分の別人格がやったのは癪だけど
本当に大地の気持ちがわかった、
少女がそう思った時であった。
ねぇ、『鏡の誓い』の伝説、知ってる?
いや、知らないよ。
どんな伝説?
この踊り場の鏡の前で
おそろいの指輪をはめて
永遠を誓うとその願いが叶うんだって。
へぇ〜……。
お揃いの……指輪……?
ねぇ、私の手を見て、だいち。
うん、その指輪は今朝から気づいてたけど、どうしたの?
昨日はしてなかったし……。
今日この日のために用意したんだよ!
少女の入れ物は
ちょっとムスッとしたような顔を
少年に見せて気を惹く。
ああ、ゴメンゴメン……。
え?
今日のために用意した指輪が
鏡の指輪だって……?
少女は次第に何かおかしな事が
始まっている気がした。
そして……ジャーン!!!
これが、だいちのだよ!!!
え……その指輪は……
なんでもう一つあるの……?
え?
え?
え?
ショータイムの始まりね。
お願い、やめて……
手を出して、
だ・い・ち。
うん。
やめてぇ!!!!
少年は少女の入れ物に左手を差し出した。
少女の入れ物は右手で少年の手のひらを
優しく、しかししっかりと支えて
右手に持つ指輪を近づけた。
やめてやめてやめて
やめてぇぇぇぇ!!!!
少女は悲痛な叫びを上げ続けた。
つづく