警備隊の詰め所で聞けたのは、レオトからもたらされた情報に、詳しい目撃場所が追加されただけの話だった。町の見回りも強化され、正体不明の魔物の捜索も行われたのだが……、結果は異常なし。
目撃者は当時酒を飲んでいたわけでもなく、その証言が酔っぱらいの見間違いという風にはとられなかったが、警備隊の見解は至極簡単なものだった。
この世界には、無害な魔物もいて、そういう類の者達が極稀に町中へと迷い込んで来る事がある。
だから、数日かけて見回りを行っても異常なしという事は、その例に当てはまるのだろう、と。
しかし、そう説明されても、撫子の胸の奥で微かに騒ぐ予感が告げている。