舞い散る桜の下で
舞い散る桜の下で
満開だね。
桜は満開を少し過ぎたころ。
桜色の世界で、ちらちらちらちら、花びらが舞っていた。
わ~いw わ~いw
いらっしゃ~い。
待ってたよ~、
おふたりさ~ん。
……。
!
お三人さん、
ご来場~。
居酒屋か!
そのままふたり……、だけじゃなかったけど、おまけのようにいる弁慶と桜の精霊たちと歩いた。
きゃっぽーいw
ひらひら、ひらひらw
ひらりんりん~w
満開になっていたからか、
こないだよりも、
数が多い。
はらはら、ひらひらw
らんら、らんら~w
綺麗だね。
桜……。
そうね……。
確かに、桜は綺麗で……。
夢みたいだな。
静香とこうして、桜、観れるなんて。
でしょっ、でしょっ
ボクたち
夢みたいに綺麗でしょっ
綺麗は綺麗なんだけど……。
←
これもいるし。
さあ、存分に、
我らを愛でるがよい~w
がよい~。
桜は、これでもかと舞い散っていた。
きゃいっ、きゃいっ
うわっ
ヤツの周りに桜が溢れる。
どうだw
美しかろうw
ぞんぶんに
楽しまれよ~w
なんのっ
ふふふっ
花びらが、クルクル回って。
思ってた以上に
自己主張が激しいな……。
ふふふっ、ふふふ。
でも、
ホントに綺麗……。
えへんっ
えへんっ!
やっと
笑ってくれた。
え?
ふふっ
あ……
戻った……。
気にするでない。
照れておるだけじゃw
けじゃっ
そっか。
今、
精霊に返事した?
見えるの、私だけじゃないんだ……。
心が澄んでいる者には
我らが見える。
心、澄んでるのか?
あいつ……。
……。
なんか、胡散臭そうなんだけど……。
そうでなくても見えるよ。
これ、
それを言うでない。
ダメなの?
ありがたみの問題じゃ。
そんなもん
気にしてんじゃないわよ。
ぴゃっ!
ひらひらと、桜の花びらが精霊ごと飛んでった……。
あ~れ~。
ま~w
慶子、ちょっと、
あっちに行っておいで。
そう言って、ヤツは周りにいた花びらをかき集め、弁慶の手のひらに乗せる。
……。
わ~いw
ひゃっほ~w
たくさんの桜の精霊が、弁慶のいたるところに現れた。
ゴスロリに
似合いすぎる……。
ひゃっほっw
みんなといれば、
淋しくないだろ?
……。
とうなずいて、
私とおしゃべりしてよっか。
と、弁慶は桜の精霊たちに言う。
きゃい
きゃい
誰ですか?
あれ……。
えへへっ
と、弁慶が遠ざかる。
変わりすぎだろ!
殿をお守りできるは
恐悦至極にございます。
わりと
イケメンだったのに……。
どうでもいいんだけど、いいのか?
イケメンが、ゴスロリになって……。
ごっつい俳優が演じてること多いけど、
弁慶、イケメンだったのに……。
弁慶が遠ざかると、精霊たちもいなくなった……。
ひとりくらい、
残っててもよかったかも……。
呼んだ?
……って、
現れられても。
いないと淋しいけど、いると面倒?
ぴょっ!
静香?
弁慶、
別人みたいね……。
うん……。
普段は、かわいいよ。
……。
あ……、でも、
ボクが好きなのは
静香だから。
……。
え?
あ……。
やば……、
かわいすぎ……。
ボクは昔から
好きな女の子は静香だけだよ。
女の子……。
引っかかるんですけど……。
好きな子は……。
言い直したよ……。
いや、それだとまだ
「年下では」って
逃げ道があるぞ……。
静香
大好きだよ。
ああ、まあ、これならいいのかな?
いや、騙されるな。まだ、他に
逃げ道があるんじゃないか?
それはもう
よかろうて……。
返事、
しなくていいの?
返事?
静香?
何よ!
静香は、
ボクのこと嫌い?
いつ私があんたのこと嫌いだって言ったのよ!
あれ?
これでいいのか?
顔、怖い……。
え?
うん。
嫌いじゃ……ない。
返事って、そのこと?
ってか
好き……。
よかった。
あれでいいの?
うん。
付き合っても
いい?
しょ……、しょうがない
……わね。
え?
ちょっと、何よ、それ、どういうこと?
てか、
なんでもっと早く
それ言ってくれないわけ?
私は妻だったんだからね。
なんで今さら言うのよ。
なんで、こんなこと言ってるんだろうって、自分が一番そう思ってるのよ……。
ん……。
前世関係なく、
出会いたかったんだよね。
だって、もう
義経と静御前じゃないから。
だから、
お付き合いから。
あ……。
そっか……。
ここから、
はじめればいいんだ。
ぴっ
よかったよかった~。
なんかこう、
偶然会って、恋に落ちるみたいな?
…………。
なんだそれは……。
そういうの
やってみたくない?
いや、そういうもんなの?
前世の記憶って……。
じゃあ、義経だと思って
聡士と付き合ってた私って……。
でも、出会いなんて、
どうでもいいし。
そう言って、ヤツは私の手を握った。
!!
あ、かわいい……。
そして、彼は桜並木を歩き出した。
私と一緒に……。
ぴっ
ぴっ
ぴっ
ぴっ
ぴっ
ぴっ
ぴっ
ぴっ
ぴっ
ぴっ
ぴっ
ぴっ
ぴっ
なんで三々七拍子?
あ、応援してくれてるのか?
そっか……。
……。
弁慶が戻ってきた。
ってか、なんで弁慶は
まだべったりしてんの?
時代が違うんだから、一緒じゃなくてもいいじゃない。
えっと……、
慶子は……。
と、ヤツが何かを言いかけていると、
どぉ、どぉ?
と、弁慶について行っていた桜の精霊たちが、あっと言う間に戻ってきてしゃべりだした。
めでたく
付き合うことに。
ほぉ~w
よかった、よかったw
我らも長き時を
見守っていた甲斐があったというものw
まさか……。
そのまさかじゃ。
800年前から
おぬしらを見守っておったのだ。
だ~w
ソメイヨシノは
江戸時代からでしょ……。
この遊歩道に咲いていたのは、ソメイヨシノだった。
ぴょっ!
その頃は
山桜にだな。
おったのだっ!
ホントかよ……。
殿、わたくしは
同意しかねます。
急に弁慶が、弁慶になった。
さっきの
ゴスロリ、どこ行った?
……。
経次郎は困ったように弁慶を見る。
慶子、性格、
どっちかに固定しよっか……。
なれば、
しばしこちらで。
そっちなわけ?
ぴぃ……。
前世でようやくこのおなごと
縁が切れましたのですぞ。
現世でそれをまた結ぶ
必要はございませぬ。
反対される二人、
きゃっ。
うるせーよ……。
だって、
約束してたから。
……。
「また会える」
って。
吉野の悪夢、ふたたび……。
ですが……、
ちょっと待ちなさい。
ん?
……。
……。
あんた、
前世でそれ言った時、
いつ会うつもりでいた?
いつ……?
私はあの時代で
すぐに会えるって
解釈してたんだけど。
ん~。
ボク、当時から
予知能力みたいなのがあってさ。
確かに殿は
神がかっておいででした。
何の話、
はじめたのよ!
合戦の時もなんだけど、
「行けそう!」って思うと、
行けちゃったんだよね。
そうでしたか。
さすがは殿にございます。
常人離れしていらしたはずです。
カンだけで
平家倒したってこと?
前(前世)からおかしいとは思ってた……。
こんなに
のほほんとしたヤツが
「強い」って思えないんだけど……。
吉野山で、
思ったんだ。
きっと、彼女とは
また会える。
来世で必ず……。
はあああああああ?!
その通りに
なったし。
じゃあ、私の、
私が会わなければ
彼は生きていられる。
は、何だったのよ!!
ぴ?
ぴ?
ぴぃ~w
桜の精霊たちが、急に顔色を変えて逃げ出した。
そんな不確かなもんに頼ってんじゃないわよ!!
ぴっ
あれ?
そもそも、来世があるかどうかなんてわからないじゃない。
生まれ変わった今だって、次に死んだ時、また生まれ変われるかどうか、わからない。
「記憶がある」
ただ、それだけ。
本当に前世が静御前だったのか、あまりよくわからない。
それに
会える可能性
低いでしょ?
ハンパなく低いぞっ!
でも、
会えたよ。
ボクのカンの方が
正しかった。
こいつは……。
変わってない。
こういうトコ。
ノリだけで生きてる感じ。
キミには
幸せになってもらいたいんだ。
前世でボクは
キミを不幸にしてしまったから。
……。
ホントは、平和な時代に生まれて、
幸せになったキミを、こっそり見守っていられたらって、思ってた。
ぴっ
桜の精霊が、ヤツの肩に現れた。
ふふっ
楽しそうに、ヤツは笑った。
でも、聡士と付き合うって知って……
嫌だなって思っちゃったんだ。
静香のこと
好きだったんだって、
気づいた。
気づくのが
遅いわよ!
気づいたから
付き合って。
軽いっ!
やっぱり軽い、軽すぎよ!!
し、しかたがなく
……なんだから。
そこまで言われたら
しかたがないから
付き合ってあげるって
だけなんだからね。
キミはどう思っていても良いよ。
ボクが一緒にいたいだけだから。
あ……。
やっぱり彼だと思った。
同じ言葉、同じ口調……。
前世と同じ意味で言ってたら
ただじゃおかないんだからね。
あ~ハイ
大丈夫です。
キミもボクのこと
好きってことだよね。
ばっかじゃない?!
それでいいけど、言わないでよ……。
殿、わたくしは
反対でございます。
殿ならば
どんなおなごだろうと
より取り見取りではござらぬか。
そんなことないよ。
ボク、全然モテないし。
殿はおモテになります。
慶子は面白いことを言うね。
殿!
なんか
信じられないかも……。
静香……。
彼が私の手を握り直す。
あ……。
この先何度生まれ変わっても、記憶がなくなっても……、
彼のことを、
好きでいるのかもしれない。
ぴっ
ぴっ
ぴっ