あなたのお名前何ですか?
その2
あなたのお名前何ですか?
その2
どうして、
今まで会いに来てくれなかったの?
……。
忘れてた方がいいと思ったんだ。
いい思い出ばかりじゃないから。
彼は笑ったけど、どこか悲しそうだった。
怒られると
思ったし。
別に
怒ってないわよ。
そう?
怒ってるのかと思った。
生まれつき
こういう顔なの。
笑った方が
かわいいと思うよ。
かわいくなくて
悪かったわね。
そんなこと言ってないよ。
静香はとってもかわいいよ。
そんなことないから。
触れないでおこう……。
キミがボクのこと
思い出したのはいつ?
……聡士に会ってから。
勘違いをして……。
でも、聡士にはどこか義経を思い出すような何かがあった。
そう。
別に、聡士が好きだったんじゃなくって、あんただって思ったから付き合ってたってだけだから。
うん。
……嬉しそう。
でも、付き合ってたっていうのは、事実だよね。
……。
…………。
表情は一緒なのに、怖え………………。
私も悪いと思ったわよ。
でも、あんたにそんなこと言われたくないわよ!
まあ、いいけど。
ちょっとは気にしててくれたみたいだし……。
あ……、あんたは、
いつ思い出したの?
……私のこと。
小5でこっちに引っ越してきて、
キミを見た時。
小5……?
学校に行くようになった、
次の日くらいかな?
家を出て歩いていると、キミが前を歩いていた。
……。
あ、かわいい子……。
……。
ん?
……静?
あのしかめた眉、
優美な手足の動き。
世の中を斜に構えて見て、
思っていたことは決して口には出さず、
でも、旦那のことは
常にののしりさげすみ、
挙句の果てに
好きだし。
と言い放つ
脅威のつんデレ。
つんデレ界の
究極の最終兵器
つんデレ界の
最上位の女神様。
なんだ?
それは!!
間違いない。
彼女はボクの別れた妻、
静御前だ。
突っ込みどころが満載過ぎて、
もはや何も言えない……。
晴天の霹靂って感じだったな~。
それから、キミのことを調べたよ。
やっぱりストーカー?
常識の範囲内でだよ。
きつかったからね。
自分の過去と向き合うのって……。
…………。
だから、そんなにしてないよ、
ストーカー。
そんなに……?
この前は、
付きまとってたでしょ?
あの変質者は、こいつなんじゃないか?
義経の時と同じ感じだったし。
キミが振られそうだって思ったから、ちょっと心配で……。
なんで振られそうだって
思ったわけ?
聡士とたまに話してたから。
はぁ?!
好きな子できちゃったんだけど、どうしよう。
今カノと別れてから
お付き合いしなさい。
そうか。そうしよう。
……。
間違ってない、
間違ってないけど……。
それで、倉庫前からつけてた。
……。
何度か声をかけようとしたんだけど、無理だった。
小学校の頃も無理だったんだよね。
通学路でも……。
あの……。
……。
学校でも……。
あの……。
……。
街中でも……。
あの~。
……。
あの恐怖がよみがえったよ。
知らなかった……。
川に飛び込むんじゃないかって心配したけど、桜の下で舞ってたから。
!
私の忘れ去りたい過去を……。
綺麗だったよ。やっぱり静なんだなって思った。
……。
ま、いっか。
声をかけたら逃げられたけど。
やっぱり
あの変質者はこいつか……。
前世と同じことしやがった……。
嫌われてるんだなって思って、わからないように様子を見ようって思ったんだよ。
……。
どうしてこいつは……。
嫌ってるわけないでしょ……。
それで、なんか柚葉ちゃんと一緒に遊歩道行くみたいだったから、聡士を連れてついていったんだよ。
柚葉ちゃん?!
なんで、聡士の彼女をそんなに親しげに呼ぶわけ?
聡士はつかみ合いの喧嘩が始まったらどうしようって心配してたみたいだけど、
柚葉ちゃんの言葉に感動したのといたたまれなくなったのとで出て行ってた。
なんで、その後、
連絡くれなかったの?
だって、聡士に振られて泣いてただろ
はああああ?!
振られて落ち込んでいるところで声をかけるなんて、弱みに付け込んでるみたいで嫌だったんだ。
聡士は
そんなもん気にせずに行け……。
って言ってたけど。
男同士でそんな相談してるんじゃない!
やっぱり変わってない、こいつ……。
嬉しくないだろ?
そんな告白。
あんたに告白されたら、どんな状況でも嬉しいわよ!
あほんだら!!
あんたはどうして
いつもいつもそうなのよ!
私の気持ちを勝手におかしな風に
ねつ造するんじゃない!
え?
私は聡士に振られて
泣いてたんじゃなくって……!
あんたに会えて嬉しかったからよ!
ダメだ。
言うのがばかばかしくなってきた……。
てか、言えるか。
あほんだら……。
あ……。
彼は、顔を上げて、この道の先の遊歩道の方を見ていた。
綺麗だね、桜
……。
行こっか。
あんたが行こうって言ったから
来たんでしょ?
うん。
ヤツは嬉しそうに私の隣を歩いていた。