慢性化したストーカー?

東高に行くことは決めたが、まだ登校したばかり。
この後、授業を受けて、放課後まで待たなければならない。

静香

はぁ……。

魂が抜けていくようだわ……。
行ってもいるとは限らないし……。

東高の学生じゃないかもしれない。
それどころか、高校生かも怪しい……。

そういう気分じゃないけど、授業は受けないといけない。

静香

もしかして、
先はまだまだ長いのかもしれない……。

でも、八百年の時が経ってるんだもの。
今更あと何年追加されようが……。

静香

嫌だな、
年単位…………。

静香

はぁ……。

聡士

あれ? 静香?
経次郎とうまくいってないの?

能天気に聡士が話しかけてきた。

静香

あんたはうまくいってそうね……。

多少、恨みの念がこもってたけど、幸せいっぱいの聡士には通じない。

聡士

そうなんだよ、
柚葉、かわいくて。
思わずぎゅうってしたくなるんだよね。

そこまで聞いてねえ。

静香

ぎゅうって牛かよ。

ため息が出た。

静香

……。

静香

ん?

静香

「きょうじろう」って、誰?

聡士

誰って……。

なんで知らないんだって顔をされた。


思い当たることは一つしかない。

静香

あのストーカー、
経次郎って言うの?

聡士

ストーカー……?
まあ、似たようなもんかもしれないけど……。

なんだよ、その似たようなもんって……。

聡士

柚葉もそんなこと言ってたし。

女の話はもういい……。

静香

あいつのこと
知ってるの?

聡士

1年の時、
同じクラスだったし。

同じクラス?

静香

ウチの高校なの?

聡士

そうだよ。

マジで?

静香

会ったことないんだけど。

聡士

小5でこっちに越してきて、
それから静香と同じ学校だって言ってたような?

静香

はい?

何それ?!

静香

東高じゃないわけ?

聡士

制服のことか?
ウチは何着てもいいんだし。

今更何を言っているんだ、という顔をされてしまった。

静香

何組?

聡士

えっと、確かA組だったかな?

静香

……ありがとう。

私はA組に向かった。

聡士

あ……。

一階下のA組に行くために、階段を目指した。

静香

どういうこと?

にわかには信じられなかった。

聡士の勘違いかもしれない。
でも、そもそもヤツの存在を教えてくれたのは聡士だ……。

静香

あ……。

階段の踊り場にある窓から、たまたま目に入った裏門に彼がいた。

ポケットからスマホを取り出して立ち止まっている。

静香

校門入って使ったら
違反になるから……。

ウチの校則は割とゆるいが、校内での携帯・スマホの使用は禁止だ。
持っている分には構わないが、電源は切っておかなければならない。

だから、門のところで使ったり、電源を切っている学生がわりといる。

静香

ホントにうちの高校の
学生なの……?

私は急いで階段を降りた。

彼は裏門のところで、スマホを耳に当てて話している。
ラインとかは多いけど、話しているのは少ない。

経次郎

バレた? 何が?

経次郎

…………。

経次郎

ナニ言ってんのか
わかんないんだけど……。

経次郎

もう校門入るから切るぞ。

経次郎

すぐにそっち
行くから。

経次郎

……。

経次郎

はぁ?

そう言って、彼は顔を上げてこっちを見た。
ばっちりと目が合った。

こっちを見たまま、でも、手元は素早く通話を終了してポケットにスマホを入れていた。

静香

早い……。

しかも無駄がない。

経次郎

おはよう。

何ごともなかったかのように、彼はそう言った。

まるで、毎日会って話している人のように。

静香

おは……、よう……。

自己紹介もまだなんだけどね。

それと朝の挨拶は別問題か?

pagetop