旅の準備を終え、
僕とカレンは王城の門の前に到着した。
そして目の前には
頬を膨らませたタックさんと
ケタケタ笑っているレインさんの姿がある。
タックさんは賢者デタックルといって、
300年前に活躍した伝説の勇者アレク様、
その子孫である勇者アレスくんの
どちらにも同行して魔王と戦ったすごい人だ。
種族はエルフ族で、
今は故郷へ戻ってのんびり暮らしているはず
なんだけど……。
旅の準備を終え、
僕とカレンは王城の門の前に到着した。
そして目の前には
頬を膨らませたタックさんと
ケタケタ笑っているレインさんの姿がある。
タックさんは賢者デタックルといって、
300年前に活躍した伝説の勇者アレク様、
その子孫である勇者アレスくんの
どちらにも同行して魔王と戦ったすごい人だ。
種族はエルフ族で、
今は故郷へ戻ってのんびり暮らしているはず
なんだけど……。
……なんでオイラが
協力するって話になってるんだよ?
ダメなの?
まさか仲間の危機に
協力しないとか、
そんな薄情者じゃないわよね?
そういうことじゃねぇっ!
だったら怒ってる意味が
分からないんだけど?
まずはオイラに相談しろよ!
勝手に話を進めるなっ!
もしオイラの都合が悪かったら
どうするつもりだっ!
どーせ暇なんでしょ?
グダグダ言ってないで、
少しは世界の役に立ちなさいよ。
お~ま~え~は~ッ!!!
怒りをあらわにするタックさんを尻目に、
レインさんは涼しい顔をしていた。
完全にレインさんのペースで話が進んでいる。
この2人ってすごく仲がいいって
聞いていたんだけど、
そんな感じがしないなぁ……。
というわけで、
あんたたちには賢者デタックル様が
同行してくれるわ。
ちょっと頼りないところも
あるけど、
それなりに使えるヤツだから
なんとかなるでしょ。
デタックル様とか言って
持ち上げておきながら、
舌の根も乾かないうちに
ぞんざいに扱いやがって!
そんな酷い態度なら、
オイラ帰るぞっ!
まぁまぁ。
頼りにしてるわよ、タック。
あんたしか頼れる相手が
いないんだからさ。
…………。
ったく……。
結局、最終的にタックさんが折れた。
――というよりは、
抵抗するのを諦めたという感じ。
レインさんも強引というか、
僕がタックさんの立場なら困っちゃうなぁ。
でもなぜか憎めないのは、
あの明るくてサッパリとした性格だからかも。
あの、
デタックル様はどうして魔界へ?
ちょっとした用があってな。
あとは魔界の様子も
見ておきたかったし~♪
やっぱり暇なんじゃない。
だったら文句言わずに
協力しなさいよ。
うるせ~! あっちいけ!
シッシッ!
あはは、はいはいー。
カレン、トーヤ。
薬の方は頼んだからね。
はい、お任せください。
あっ、そうそう。
トーヤにはこれを渡しておくわ。
そう言ってレインさんは帽子を脱ぎ、
その中から封筒を取り出した。
そういえば、あの帽子はモノを収納できる
魔法道具でもあるって聞いたことがあるなぁ。
これは何ですか?
ラブレターっ♪
っ!
えぇっ!?
あっはは、ウソウソ!
期待させてゴメンねぇ。
は、反応に困る冗談は
やめてください……。
ゴメン、ゴメン。
――もしもの時は、
その封筒を開けなさい。
きっと道しるべになると思う。
は、はい……。
じゃ、しばらくのお別れね……。
また元気な姿で会いましょう!
レインさんは僕の肩をポンと軽く叩くと、
走って王城へ戻っていった。
……あれ? なんだろう?
ちょっとだけレインさんの瞳が
寂しそうだったような……。
気のせいなのかな?
考えても仕方ないので、
僕は受け取った封筒を懐の中にしまい、
タックさんとカレンの方へ向き直った。
それにしても、
ちょっと見ないうちに
トーヤも立派になったじゃね~か♪
出会った頃と比べたら、
たくましく感じるぞ。
そ、そうですか?
てへへ……。
……もう、デタックル様。
あまりトーヤを
調子に乗らせないでください。
そうだ、今からオイラのことを
『デタックル』と呼ぶのは禁止だ。
何者なのか周りにバレちまう。
旅先では誰に狙われるか
分からないからな。
今後は『タック』と呼んでくれ。
分かりました、
デタ……タックさん。
うんうん、それでいいっ♪
微笑みながら満足げに頷くタックさん。
でも僕はアレスくんを通じて
タックさんと以前から交流があるから、
『タックさん』って呼んじゃってるけどね。
で、オイラたちはどこへ行くんだ?
北東にある常闇の森です。
そこなら材料が
だいたい揃うと思います。
薬に必要な材料は人魂草とホタル草、
魔樹の実、地獄茸、悪魔カエデの樹液、
破邪華の根ですね。
ん? いくつかは
手に入れるのが面倒だな。
モンスター由来のものが
含まれてるじゃないか。
さすが賢者様。
ご存じなのですね?
まぁな~♪
知識だけはある。
でもオイラだけで戦うのは
骨が折れるな。
カレンは戦えるのか?
ちょっとくらいなら。
攻撃魔法も物理攻撃も
いけます。
トーヤはどうだ?
少しは戦う力を身につけたか?
えっ!?
僕はタックさんに問いかけられ、
ドキッとした。
以前から体を鍛えたり瞑想をしたり、
少しずつ努力はしている。
でも相変わらず結果は出なくて、
力も魔法力も上がってきていない。
これは下民である僕の
生まれ持った体質なのかも……。
あ……いえ……。
ごめんなさい……。
トーヤ……。
はははっ! まぁ、いいさ。
だったら
回復要員になってもらうだけだ。
トーヤ、どんなヤツにでも
得意不得意はある。
アレスだってそうだったんだ。
剣も魔法も全然ダメだった。
それでもアイツは
自分にできることを
最大限に発揮して戦った。
そしてみんなと力を合わせて
魔王ノーサスを倒した。
オイラはそれでいいんだと思う。
えっ?
つまり1人で戦う必要は
ないってことさ。
もし力が足りないなら
仲間と補完し合えばいい。
タックさん……。
トーヤ、お前は薬草や薬に詳しい。
その力で仲間を助けろ。
それならできるよな?
は、はいっ!
お任せくださいっ!
回復薬なら
たくさん持ってきましたし、
足りなくなったら作りますっ!
任せたからなっ!
ふふっ♪
こうして僕たちは王城を出発したのだった。
まずは街の中を抜けて、
街道への出入り口を目指そう!
次回へ続く!