それにしても病呪ってなんだろう?
初めて聞く言葉だけど……。
それにしても病呪ってなんだろう?
初めて聞く言葉だけど……。
カレン、病呪って何?
様々な症状を引き起こさせる
呪いの魔法。
回復させるには解呪の魔法と
それに対応した薬を
併用しないといけない。
えぇっ?
病呪は禁呪に指定されてる。
使うための代償も大きいわ。
それなりに魔法の実力と
知識が必要よ。
つまり魔族の中でも
それなりのヤツが犯人ってわけ。
僕は緊張して、
思わず唾をゴクリと飲み込んだ。
だって禁呪が使えるのは上民以上。
貴族や政府の重役に就いている人が
ほとんどだ。
表向きは女王様に従っていても、
やはりそれに対して快く思わない人たちが
いるってことなんだね……。
幸い、治療法は分かっています。
こちらはあたしにお任せください。
捜査はレインさんにお任せします。
えぇ、分かったわ。
もし何か必要なものとか
協力が必要な時は、
遠慮なく言ってね。
では、早速ですが、
信頼できて戦闘に長けた人を
紹介していただけますか?
薬の材料を集めに
行かなければなりません。
危険な場所もありますので。
ねぇ、カレン。
デリンさんはダメなの?
あの人なら僕、気心が知れてるし。
バカね!
それこそが
狙いかもしれないでしょ。
クレアさんが戦えないのに、
デリンさんまで城を離れたら
もしもの時に困るわよ。
う……。
その通りだ。僕は何も言い返せない。
そっか、手薄になった城を襲われたら
王国軍とレインさんだけじゃ
対処しきれない可能性もあるもんね。
アレスくんの意思を受け継いで、
女王様も最近は戦いをしないように
意識しているみたいだし。
さすがカレンね。
あたしも同じことを考えていたわ。
……でも、これは不幸中の幸いね。
ちょうどいい人材が
城に来てるのよ。
そいつに協力してもらいましょう。
誰のことです?
ふふーん、それは内緒っ♪
なぜかレインさんは楽しげだ。
こういう態度を取るのは、
何か悪戯っぽいことを企んでいる時だ。
大丈夫なのかなぁ……。
ミューリエには、
あたしから事態についての話を
しておくわ。
では、行動を開始しましょう。
僕たちはクレアさんの眠る部屋を出ると、
作業室へと戻った。
作業室へ戻った僕たちは、
材料採取へ出かける準備を始める。
最低でも数日はかかるだろうから、
それなりの格好をして、
色々な道具も持っていかなければならない。
一番大事なのは、
材料が劣化しないように保存する容器。
薬効成分が失われたら意味がないから。
――あれ?
そういえば、どんな薬を調合するのだろう?
ねぇ、カレン。
病呪に必要な薬の作り方なんて
僕は知らないんだけど?
大丈夫。
専用の薬ってわけじゃないから。
アンタ、
高等治癒魔法薬を作れるでしょ?
高等治癒魔法薬は大抵の状態異常を回復させ、
体力と魔法力も回復させる薬だ。
特に毒に対しての効果が高くて、
弱っている人にも負担があまりかからない。
ただ、用量を少しでも間違えると
ショックを起こして命にかかわるから
多用はできないという難点もある。
あ、うん……。
調合成功率は70%くらいだけど。
それでもすごいわよ。
並の薬草師では、
成功率が10%程度なんだから。
調薬技術に関しては、
もう少し自信を持ってもいいと思うわ。
そうなの?
知らなかった。
そんなに作るのが難しい薬だったのか。
僕は当たり前のように作っていたから、
むしろ成功率がみんなより低いのかと
思ってたよ……。
今回の治療ではそれが必要なの。
あとはあたしの解呪魔法と併せれば
クレアさんは必ず回復するわ。
確かに高等治癒魔法薬を作るなら
材料を採取しに行かないと
いけないね。
薬草園では栽培できないものとか
貴重な材料が多いから。
えぇ、しかもいくつかの自生地は
そこそこ強力なモンスターが多くて
危険だし。
この薬は材料を揃えるのが大変なので、
流通量は少ない。
採取に行ってモンスターにやられたという
話もよく聞く。
しかも今は安くて安全に作れる
代替薬もあるから、
高等治癒魔法薬でなければならないという
症状以外では
使われることが少なくなっている。
僕にもっと戦う力があれば、
カレンを
守ってあげられるのになぁ。
えぇっ!?
ゴメンね……。
バババ、バカっ!
くだらないことを言ってないで
さっさと旅に出る準備を
済ませなさいっ!
カレンはなぜか怒って
部屋を出て行ってしまった。
僕、何か機嫌を損ねるようなこと
言ったかなぁ……。
次回へ続く!