既視感(デジャブ)

あれ?

※既視感(きしかん):実際は一度も体験したことがないのに、すでにどこかで体験したことのように感じる。

桜の精霊

わ~いw

桜の精霊

わ~いw

桜の精霊

るんるん♪

桜の精霊

らんらん♪

体が勝手に動いていた。

静が小さかった頃の夜桜の時もこんな感じだった。
まだ舞いを習い始めで、それなのに体が勝手に動き出した。

その時の感じを思い出して踊ると、皆に褒められた。
静の舞いの原点は桜だったのかもしれない。

それなのに、ヤツのせいで桜が嫌いになっていたことがもったいなかった。

オバケ、オバケ、
オバケが出たー!

あの時のトラウマは、生まれ変わっても解消できなかった。

でも、原因がわかったのだ。
きっと、もう、大丈夫……。

静香

♪~

桜の精霊

たらら~ん♪

桜の精霊

ちらら~ん♪

だって、こんなに綺麗なんだから……。

桜の精霊

るんたった♪

桜の精霊

っと♪

桜の精霊

ぽ~ん♪

クルリとまわってフィニッシュ。

桜の精霊

やんや、やんや

桜の精霊

ぱちぱち、ぱちぱち

静香

ふぅ……。

小さく息を吐いた。

踊ったからか、心が軽くなっていた。

桜の精霊

いよっ!
日本一w

静香

ダンスクラブにでも入ろうかな?
それとも日本舞踊かな?

桜の精霊

ぴょっ?

そんなことを思いながら、樹の下に座った。

静香

やっぱ、静香として新しい自分になるのなら、ダンスよね!

桜の精霊

踊る~w

静香

ふふふ。
なんか楽しくなってきたわ。

桜の精霊

わいわ~いw

逢魔が時とでも言うのか、夕闇に近づく時間、人はいないと思っていた。

桜の精霊

らんらららん♪

桜の精霊

らん♪

桜の景色を独り占めしたような気分で、手足をバタバタさせていると、

あの……。

と、後ろから男の声がした。

静香

え?!

桜の精霊

ぴゃっ!

思わず固まる……。

静香

見られた?
もしかして今の見られてたわけ?

血の気が引いた……。

恥ずかしい……。

まず、そう思った。

きちっと習ったようなものではなく、自分で好き勝手踊ってただけだ。

小学生が踊ってたのではない。
女子高生が踊ってたのだ。

一刻も早くこの場から逃げ出したい……。
それで、この男とは二度と顔を合わせたくない。

でも、ふと思った。

静香

ってか
変質者じゃね?

こんなところで一人で踊ってる女子高生に声をかけるなんて……、

変質者以外の何者でもないわよね?!

そっと周囲を見ると、魔に逢う時間と呼ばれるのに相応しい雰囲気……。
なぜか、他に人の気配がしなかった。


静香

犬の散歩とか、
マラソンする人とかいないわけ?

ぞっとした……。

静香

今、私がここにいることを
誰も知らない……。

桜なんてひとりで観に来ると思われていないから、もし、ここで何かあったら、すぐには気付いてもらえないかもしれない……。

柚葉

静香先輩、フラれて自棄
起こしてるかもしれません。

そんなことを、あの女は言いそうだ。

静香

今、ヤバい目に会ったら、
探してもらえないかも……。

命の危険を感じた。

静香

きゃー!

桜の精霊

みゃ~

桜の精霊

みゅ~

桜の精霊

みょ~

一目散にその場を後にした……。

あ……。

静香

はぁ、はぁ、はぁ

静香

ここまで来れば……。

ひと気のない川沿いの遊歩道から住宅地まで戻ってきた。

ここには買い物帰りのおばさんとかお年寄りとかが歩いていた。
それを見て、幾分かほっとした。

静香

怖かった。
生きた心地がしなかったわ。

恐怖から体はまだ震えていた。

静香

また桜が苦手になっちゃうわ。
せっかくトラウマの解消になるって思ったのに……。

静香

あれ?

思わず声が出た。
自分の声にびっくりした……。

静香

似てなくね?

初めてヤツにあった時と……。

静香

まさか……、ね。

だって、ヤツは聡士なはず……。

さっきの声は、聡士じゃなかった。
そういえば、優しい感じの声だった……。

既視感?

ずっと昔に聞いたことがあるような……
そんな声だった……。

静香

そんなこと……。

あるはずがない。
そう思った。

でも、ゴミ捨て場にラケットが落ちているのが目に入った。

静香

何、思っているわけ?

※ゴミ捨て場にあるものを拾ってはいけません。一度ゴミ捨て場に置かれたものは市町村の物になります。悪質な場合は窃盗罪に問われることがあります。

静香

聡士が義経の生まれ変わりじゃないなんてこと、あるはずがないわよ……。

気が付くとラケットを拾って、川べりの遊歩道に戻っていた。

※ゴミ捨て場にあるものは、拾ってはいけません。

静香

でも、「そうだ」って
確認もしてない……。

あ……。

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