幽霊よりも甘味が食べたい

第12話
「保健室の子供の声(3)」



















佑美奈

だからー、報酬はドーナツ2個。
下調べ手伝ったからもう1個。
これは正当な請求だよ

ピヨ助

下調べで1個追加は認めてやる。ていうかもう依頼料と一緒に出してやったからな。
だが報酬はいつも通り1個だ。
これ以上はまからん

佑美奈

どうせ1回で2個ずつ出すんだからいいじゃない。ケチケチしないでよ

ピヨ助

ふふん。2個目は次の依頼料分になるに決まってるだろ?


 食堂では交渉に決着がつかず、保健室に向かいながらもそんな話をしていた。

 下調べを手伝ったということで、追加で1個はもらえたものの、報酬の数は増やすことができなかった。
 なんとか1個でも多く食べたいんだけどなぁ。








 

おかあさん、どこー?







ピヨ助

だいたい、増やす理由がないだろ。
前回は危険手当ってことで増やしたんだぞ

佑美奈

それはそうだけど、さっきの下調べ。追加1個じゃ足りないなって思って

 

……おかあさーん


ピヨ助

1個で充分だろ? 写真のこと聞けって指示したのも俺だしな

佑美奈

そもそも最初から打ち合わせしておけば、あんなに困らなかったよ!

ピヨ助

そこはあれだ、お前のアドリブ能力を試したんだよ

佑美奈

やっぱりわざとなんだ!
絶対1個多くもらうからね!

 

お、おかあさん、
どこ……かなー……



ピヨ助

それとこれとは話が別だろ。
ていうかほんと、お前甘い物の話ばっかりだな。甘い物のことしか考えてないから、甘い物の話しか出てこないんだろ

佑美奈

うっ……それは、認めざるを得ないけど。
ミカちゃんにも言われたことあるし。
でもそれこそ話が別だよ!

 

…………









 


お、か、あ、さああぁぁぁん!










佑美奈

えっ……?!

ピヨ助

むっ……


 放課後の、夕暮れ時の保健室前。

 突然そんな大声が聞こえて、わたしたちはビックリする。

佑美奈

い、今のって、もしかして……?

ピヨ助

ああ。保健室から聞こえたな

佑美奈

なんか、噂されてる怪談とちょっとイメージ違うね。なんか元気そう

ピヨ助

寂しそうな声ではなかったな

 

っ……!!
そ、そこに誰かいるのー?
いるなら一緒にお母さんを探して欲しいなー



佑美奈

あんまり困ってなさそうな感じの声だよね

ピヨ助

ふぅむ。もしかしてまた改変されてしまったのか?

 

っ!!
うっ……うう、おかあ……さん



佑美奈

あ、ちょっと悲しそうになった

ピヨ助

ふむ。泣いてるかも知れないな。
……どっちにしろ開けなきゃ話が進まん

佑美奈

そうだね。じゃあ、開けるよー


 ガラガラと、保健室のドアを開ける。
 するとそこには……。










 

…………








 半泣きでこっちを睨む男の子が、保健室の真ん中に立っていた。




佑美奈

えっと……こんにちは? こんばんはかな

 

…………


 男の子は無言のまま、すっと手を伸ばしてくる。

 反射的に手を取ろうとしてしまったけど、わたしは慌てて手を後ろに回す。
 あぶないあぶない。

佑美奈

君、お名前は?

 

……たける

佑美奈

たけるくんだね。
あ、わたしは佑美奈。よろしくね










たける

……はぁ。調子狂うなぁほんと。
お姉ちゃんたちみたいなのは初めてだよ。

だいたいなんなの? その後ろのでっかいヒヨコ

佑美奈

え? あぁ、これはヒヨコの姿をした人の幽霊で、名前はピヨ助くん

たける

幽霊? へぇ……初めて見た。

人なのにヒヨコって、変なの




ピヨ助

なんだ、思ったより生意気そうなクソガキだな

たける

……ま、あんな反応されちゃあね


 たけるくんはプイッとそっぽを向く。

 あんな反応?
 わたしたち、なんか悪いことしたかな?









たける

お姉ちゃんたち、怪談の内容知ってるんでしょ?

佑美奈

え? まぁ、うん。そうだけど


 手を取らなかったことからわかったんだろう。誤魔化してもしょうがないので、素直に認める。

たける

またかー。最近そんなのばっかりだよ。
誰も手を取ってくれないんだ。
冷やかしで会いに来るヤツばっかり

佑美奈

そ、そうなんだ……


 怪談話に最初から回避方法がついてるから、当たり前なんだけど……。

 なんかこの子、ちょっと心が荒んじゃってるよ。


たける

お姉ちゃんたちもそうなんでしょ?
幽霊に会えてよかったね。ばいばーい




佑美奈

ま、待って待って、わたしたちはそうじゃなくて

ピヨ助

落ち着けクソガキ。俺たちは怪談の調査に来たんだよ。
わかるか? 調査

たける

調査……? 調べてどうするのさ

ピヨ助

怪談を調べ、真相を見つけ出す。
怪談の本当の意味と、幽霊が本当に言いたいことを調べるのが、俺の目的だ

たける

ふーん……。
でも幽霊なんでしょ? あんたも

ピヨ助

幽霊だろうと人間だろうと同じことだ




佑美奈

あのね、たけるくん。
ピヨ助くんは生前から怪談を調べていて、死んでも調べ続けるほどの執念を持ってるんだよ

たける

そっか、ちょっとおかしい人だったんだね

ピヨ助

なんだとクソガキ

佑美奈

まぁまぁピヨ助くん。
子供相手に大人げないよ

たける

そーだそーだ。
……ヒヨコなのに大人げないだって。
ぷっ、くくく、あははははは




佑美奈

あ、やっと笑った


 たけるくんはピヨ助くんを指さして笑い出した。

 ピヨ助くんは不本意そうだが、今度はちゃんと大人の器を見せつけたいのか、黙っていた。








ピヨ助

……でだな。たけるだったか。
自分の怪談の内容が、ここ数年で大きく変わったことに気が付いているか?


 ピヨ助くんは気を取り直して、本題に入る。

たける

ぼくの怪談が?
うーん……どうなのかな。よく覚えてないよ

佑美奈

覚えてないの? たけるくんの意志で、怪談の内容を変えたんだよね?

たける

……よくわからない。
噂されるうちに変わっちゃったんじゃない?
そういうもんなんでしょ?



 たけるくんの言う通り、幽霊の意志とは関係なく噂が伝わる過程で内容が変わってしまうことがあると、前にピヨ助くんが教えてくれた。

 でも今回は、たけるくんがこの怪談を乗っ取ったはずなんだけど……。


ピヨ助

……それにしては、内容が大きく変わり過ぎているんだよ。俺が調べた、5年前からな。

……いや、正確には6年前か

佑美奈

え……?



 6年前? それはつまり……ピヨ助くんが調べたのは、死んだ3年生の時ではなくて、2年生の時だったってこと?


ピヨ助

ちょっとの変化なら、時間と共に起きるだろう。
……だか大きな変化には、何かしらの理由がついているものなのだ

たける

ふーん。じゃあぼくの怪談も、なにか理由があって変わったっていうの?

ピヨ助

そうだ。本当に覚えてないのか?

たける

うーん……そう言われてもなぁ。
よくわからない。
ぼくはやっぱり、みんなが話す噂のせいだと思うんだけどな






 なんだか、ちょっと雲行きが怪しくなってきた。
 わたしはそっとピヨ助くんに話しかける。


佑美奈

ね、ピヨ助くん。本当に怪談ジャックなの?
ぜんぜん自覚なさそうだよ?

ピヨ助

ああ……。
だが、そういうものなのかもしれない

佑美奈

……どういうこと?

ピヨ助

とにかく、先生の子供だってのは間違いないはずだ

佑美奈

それはそうなんだろうけど












たける

ねーねー。じゃあさ、そこまで言うなら説明してよ。
大きく変わった理由ってなんなの?

ピヨ助

もちろんそのつもりだ。

まず……お前の探しているという、お母さんについてだが

佑美奈

あ……ちょっと待って






佑美奈

ねぇ、たけるくん。
お母さんって、どんな人?


 わたしはつい、ピヨ助くんを遮ってそう聞いていた。

ピヨ助

おい、佑美奈……

佑美奈

ごめん、ちょっと聞いておきたくて


 本当は、なにかわかったっぽいピヨ助くんに任せておけばいいんだと思う。

 でも、この子が本当に早川先生の子供だっていうのなら、少し話をしておきたいと思ったのだ。

たける

お母さん? ……いつも、働いてたよ。
ぼく、1人で留守番すること多かった

佑美奈

そうなんだ。お母さんは優しかった?

たける

うん……。夜にならないと帰ってこないけど、いつもお菓子買ってきてくれた。
お父さんはもっと遅かったけど、寝る前まで遊んでくれたよ

佑美奈

いいお父さんとお母さんだね

ピヨ助

……幸せそうな家族じゃないか

たける

しあわせ……。
うん、そうだったと思う。でも



 たけるくんはそこで、俯いてしまう。



たける

ぼくは自分がもう幽霊だってわかってるよ。死んじゃったってことだよね。

……お父さんとお母さん、どうなっちゃったかな

佑美奈

……それは









ピヨ助

ふん。普通に生活してるに決まってるだろ

佑美奈

ちょっと、ピヨ助くん

ピヨ助

なんだよ、おかしなことは言ってないだろ。
今まで通り普通に働いて、普通に暮らしている。毎日を普通に過ごしてるはずだ。

……それとも、泣いて暮らしていて欲しいか? 後を追って自殺して欲しいか?







たける

……ううん。普通に暮らしていてほしい。元気でいてほしいよ。
……泣いてくれてないのは、ちょっとさびしいけど

佑美奈

ふたりとも……


 ……そうだ。たけるくんの境遇は、そのままピヨ助くんにも当てはまるんだ。
 自分が死んで、そのせいで両親が普通の生活を送れなくなってしまっていたら……とてもやりきれない。


佑美奈

ピヨ助くんも……両親のこと、気になってたりするのかな











たける

おかあ……さん……

佑美奈

たけるくんのお母さんは、甘い物好きだった?

ピヨ助

お前はまた……

佑美奈

いいでしょ、別に


 早川先生は喫茶店『星空』のパンケーキをよく食べに行くって言ってたし。

たける

うーん、わからない

佑美奈

そっか……。たけるくんは? ケーキとか好き?


 その質問に、しかしたけるくんはとんでもない答えを返した。







たける

ううん。ケーキって女の食べ物でしょ?
ぼくは男だから食べないよ














佑美奈

えぇぇ?!
そんな……もったいない

ピヨ助

なんとも偏った考えだな。
男だって甘い物くらい食うだろ

たける

えー? 食べないよ!
かっこわるいし

佑美奈

違う、それは違うよたけるくん!

いい? 甘い物っていうのはね、ケーキっていうのはね、誰が食べても幸せな気持ちになれる、素晴らしいものなんだよ? そこに男女の差はない。平等なしあわせがそこにあるんだよ。
わかる?




たける

え、えーっと……わからない

ピヨ助

俺もよくわからんぞ

佑美奈

なんでわからないの?
ああもう、今ここに、ケーキがあれば! その素晴らしさを教えることができるのに。









佑美奈

甘い物を食べてる時っていうのはね、こう……自分の中で、甘みと共にしあわせがふわっと広がっていくんだよ。あの感覚が、しあわせってことなんだよ。
だからね、たけるくんももし甘い物を食べる機会があれば、是非この感覚をしっかり味わってほしい!







 わたしは拳を握り、熱く語った。
 これできっと、少しは伝わったはず。




たける

お姉ちゃんこわいよ……

ピヨ助

食べる機会なんてあるわけないだろ……幽霊なんだぞ







佑美奈

えぇー……


 おかしいな……なんで伝わらないんだろう。
 この甘い物にかける想いが。













ピヨ助

で……だ。もう単刀直入に聞くぞ。

……早川久子という名前に聞き覚えはあるか?

佑美奈

あ……


 わたしがショックを受けている間に、ピヨ助くんはついにその名を出してしまう。

 するとたけるくんは……。

たける

はやかわ……ひさこ……


 たけるくんが、名前を繰り返す。

 驚いているのか、思い出せそうなのか、それともまったくわからないのか。

 その表情からは読み取れなかった。

ピヨ助

俺たちの考えでは、それがお前の母親の名前だ

たける

ぼくの、お母さん?
……その人は、どこにいるの?

佑美奈

ここだよ。たけるくん。昼の間、ずっとここにいる……保健室の先生だよ

たける

え……?


 たけるくんはきょろきょろと辺りを見渡す。

ピヨ助

……さっき、怪談の内容が大きく変わるには理由があると言っただろ。
お前の怪談の内容が変わったのは、3年前に養護教諭、保健室の先生が替わったからだ

たける

先生が、替わったの?

ピヨ助

ああ。そしてな、お前は元々はその先生の息子の幽霊だったんだ

たける

え……ええ?
ちがうよ、ぼくはもっと昔から、ここで怪談を

ピヨ助

乗っ取ったんだよ。
元々あった怪談話を、お前がジャックした

たける

乗っ取った? さ、さすがにそんなことしたら覚えてるよ。そんなわけないよ



 たけるくんの反応にわたしは少し不安になったけど、ピヨ助くんはふるふると首を振る。



ピヨ助

きっと相性がよかったんだろうな。
お前は無自覚に怪談を乗っ取った。

しかし新しい怪談話ではなく、昔からある怪談話の幽霊と入れ替わったせいで、その怪談に合うように記憶が変えられてしまったんだ

佑美奈

あ……そういう、ことなんだ


 怪談話の内容に引っ張られると、生前のことが思い出せなくなったりするみたいだし、ピヨ助くんの言う通り、乗っ取ったこと自体忘れているのかも。
 自分が、昔からいる幽霊だと思い込んでいる可能性があるんだ。






たける

ぼくの……おかあさんが、ここの先生……







 たけるくんはわたしたちに背中を向けて、先生の机をぼうっと眺める。

 まるでそこに先生の後ろ姿があるかのように。





たける

そうなのかな……。
なんだか、そんな気がしてきたよ

ピヨ助

思い出せたわけではないのか?

たける

うん。ぼくってさ、ここに誰かがいたら現れることができないんだ。

でも、ここの先生が一人の時に、ずっと写真を眺めているのは知ってる

佑美奈

先生が……

たける

だから、明日その先生に声をかけてみるよ

佑美奈

え……でも、どうやって? 先生がいたら現れることができないんだよね?

たける

簡単だよ。その先生が保健室を出てすぐに現れれば……

ピヨ助

そうか、先生が保健室を離れる前に声をかければ、開けてくれるかもしれないな

たける

そういうこと。そうすれば、本当かどうかわかると思う。
明日、試してみるよ

佑美奈

あ……うん!
それがいいよ、たけるくん!


 そうすれば早川先生も、たけるくん、子供の幽霊に会うことができる。

 わたしはなんだか嬉しくなってきた。
 お母さんを探すたけるくんが、先生と再会できるのが嬉しい。









ピヨ助

ふむ。じゃあ今日のところはここまでだな

佑美奈

……そっか。うん、そうだね


 なんかあっさりした終わり方だけど、わたしたちができることはもうない。
 あとは明日の結果を確認すれば、ピヨ助くんの怪談調査は完了のはずだ。







たける

ね、お姉ちゃん。いろいろありがとうね。

……お母さんとお父さんがどうしてるのかって、あんまり考えたことなかったから

佑美奈

たけるくん……




 ……あれ?
 でも、お母さんを探していたんじゃ……。


たける

……だから、ありがとう。
ゆみなお姉ちゃん

佑美奈

ううん、どういたしまして!
たけるくん



 ……ま、いっか。
 真相はもうわかったようなもんなんだから。
 細かいことは気にしない。



 たけるくんは笑顔で、わたしに手を伸ばしてくる。
 わたしは名前で呼ばれたのが嬉しくて、笑顔でたけるくんの手を握った。

 するとたけるくんは……









 ジト目になった。



たける

お姉ちゃん……。
はぁ、しょうがないなぁ



 そしてパッと手を離す。

 わたしはなにがなんだか、わからない。



佑美奈

え? な、なに? わたしなにかした?




ピヨ助

お前なぁ……油断しやがって。
ひやっとしただろ。

なにこいつの手を取ってんだよ

佑美奈

手?















佑美奈

………………あああぁ! そうだ!
子供の幽霊の手を取っちゃだめだったんだ!




 や、やらかした……!

 ピヨ助くんの言う通りだ。
 もう終わったと、油断してた。

 でも……。


佑美奈

あ、でもたけるくんが手を離してくれたから、セーフだよね?


 怪談では、手を離してくれなかった場合は死後の世界に連れて行かれるとあったけど、手を離してくれたら大丈夫だったはずだ。


たける

まーね。
本当はアウトだけど、特別だよ?

佑美奈

ほっ……
ありがとう、たけるくん


 本当はアウト?

 基準がよくわからないけど……助かったんだし、よしとしよう。







ピヨ助

まったく。

よし、それじゃあ帰るぞ。
……クソガキ、いやたける。
明日ちゃんと試せよ。お前のお母さん

たける

うん。わかってるよ。
……じゃあね。ばいばい




 わたしたちはたけるくんに手を振って、保健室を後にした。


















ピヨ助

ふう、今回は下調べのおかげで楽勝だったな。

最後を除いて

佑美奈

う……しつこいなぁ。
ちょっと、安心しちゃったっていうか……その

ピヨ助

ふん。

……あんまり油断するなよ。
危険は排除するが、それでも怪談は恐ろしいものなんだからな





佑美奈

……うん。あの、ピヨ助くん。

……ごめんね

ピヨ助

む……わかればいいんだ、わかれば。

……ま、ほら、行こうぜ。暗くなるぞ






佑美奈

あー、もうほとんど日が暮れてる。
ケーキ屋さん行きたかったな

ピヨ助

そんな場合かよ。早く帰れ。
テストあるんだろ?

佑美奈

うわ……なんてこと思い出させるの……


 嫌なことを思い出し、わたしはとぼとぼと歩き出して……。













 

あ~あ……













佑美奈

ん? ピヨ助くん、なにか言った?

ピヨ助

テスト。学期末試験。

佑美奈、現実から目を逸らすな

佑美奈

ち、ちがうよ!
それじゃなくて……ああもう、いいよ










佑美奈

はぁ、帰ったら少し勉強しなきゃなぁ。
ピヨ助くんが代わりに試験受けてくれたらいいのに

ピヨ助

アホ言うなよ。そんなんできるわけないだろ

佑美奈

わかってるよ。言ってみただけだよ



 でも、入れ替わり……か。

 そういえば、たけるくんが怪談をジャックして、元々の幽霊と入れ替わったのなら……その元の幽霊はどこに行ってしまったんだろう?
 成仏したのかな?



佑美奈

たぶん、そうだよね。

……それよりも




 さっき聞こえた声。
 あれって、確か怪談を回避した場合の……。


 わたしは少しだけ、引っかかりを感じつつ。

 
 学校を出て、その足で『アウラ・ケーキ』に寄ってケーキを買ってから家に帰った。

 ……勉強には甘い物が必要、だよね?






















 しかし翌日。

 早川先生が幽霊を見ることも、声を聞くこともなかった。



…続く

第12話「保健室の子供の声(3)」

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